低圧電力需要家とのネガワット取引が活発に?

電力小売の全面自由化を控え、さまざま電力ビジネスが登場しています。そのひとつがネガワット取引です。ネガワット取引とは一体どんなビジネスなのか、具体的にどんな事業者が取引を行っているのかを見ていきます。

 

新電力の電力確保の手段として登場

ネガワット取引が登場したのは、2000年から始まった電力の部分自由化の途上です。電力の部分自由化は、自由化の対象である電力需要家の範囲を段階的に広げてきたことによるものです。当初は、大規模工場などの特別高圧需要家、デパート、オフィスなどの特別高圧業務用の需要家などが自由化の対象とされました。その後、中規模工場やスーパー、中小ビル、さらには、小規模工場などが段階的に自由化の対象に含まれました。そうした部分自由化の過程で参入してきた電力事業者は、契約電力50kW以上の高圧需要家に電力を供給する事業者ということから、特定規模電気事業者、いわゆる新電力と呼ばれます。地域の大手電力会社以外の、電力ビジネスへの新規参入者ということから、そうした名前で呼ばれます。

新電力は、石油、ガスなどのエネルギー関連事業者をはじめ、商社、製造業、さらには情報・通信業などのさまざまな業種分野からの企業が参入しています。これらの新電力は2015年12月25日現在、802社に達しています。
これらの新電力は、自前で発電設備を保有している事業者もいますが、多くは発電設備を持たず、他の電力会社や発電設備のある企業、さらには、卸電力取引市場などから電力を調達して販売する企業が多いのです。そのため、新電力にとっては、電力需要の急増する時期には、電力の調達が大きな課題となります。電力を調達できなければ、需要家に電力を供給することができません。

新電力にとって、電力ビジネスの最大の課題が、安定した電力の調達なのです。安定して電力をどうやって調達するか、その解決策のひとつとしてネガワット取引が登場したと言って過言ではありません。

 

節電分を取引するアグリゲーター

ワットと言うのは、電力あるいは発電というポジティブな意味を持っていますが、ネガワットは、その反対すなわち電力の削減と言う意味です。つまり、節電の意味です。節電は、電力の節約ですが、電力会社にとっては、その分発電しなくてもよいわけで、発電量と同等の意味を持つことになります。そのため、それぞれの需要家から節電分を集めれば、相当の発電量を確保したことになります。新電力は、電力需要家に節電をお願いし、それを集めることによって、一定の発電量を確保できることになります。ネガワット取引は、このように、需要家に節電を要請し、それを買い取り、その分を電力会社に売却するビジネスなのです。需要家と電力会社の間に介在して、節電分を取引する事業者をアグリゲーターと呼んでいます。アグリゲーターは、集荷人という意味で、節電分を集める事業者といえます。新電力はこのようにアグリゲーターの役割をしますが、新電力でなくても、アグリゲーターとしてのサービス事業を専門に行う事業者も多く登場しています。

現在のところ、ネガワット取引は、契約電力が50kW以上の大口電力需要家との間で行われていますが、今年4月からは電力小売の全面自由化によって、50kW未満の低圧電力需要家も自由化対象となります。一般家庭をはじめ、コンビニ、商店、小規模オフィスなどが自由化範囲となるため、こうした低圧電力需要家との間でもネガワット取引が活発になることが予想されます。

 

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