2016年4月、電力小売事業が完全に自由化されます。自由化される市場の規模は7.5兆円と巨大です。
今回の自由化される対象となるのは、8240万件の需要家であり、内訳は一般家庭が7678万世帯、商店・事業所が742万箇所となっています。
政府はPPS(新電力)の市場シェアを現在の5%から20%~30%に引き上げることを目標に掲げているため、新規参入事業者でも既存の電力会社と競争が可能な経過措置を検討しています。
市場規模が大きいため、相当数の企業が参入してくるでしょう。
現時点でも、総合商社・東京ガス・大阪ガス・出光グリーンパワー・ミサワホーム・ワタミ・電鉄系企業・ソフトバンク・楽天などが参入する意向のようです。
知名度の高い大手企業の参入も多く、来年4月からはこの話題が新聞やマスコミで取り上げられる機会が増えそうです。
スーパーマーケットやドラッグストア企業にとっては、“自分たちのビジネスの機会がないのか”という点が気がかりなところだと思います。
標準的なスーパーマーケットの商圏世帯数が7000世帯と考えると、新電力のシェアが20%と考えても、年間で2億円程度の売上拡大のチャンスがあると考えられます。
例)1世帯当たり年間電気料金15万円×1400世帯=2億1000万円
スーパーマーケットやドラッグストアは、最も消費者の来店頻度が高い業態であり、“身近な存在であることから電気販売の契約を取りやすい業態だろう”と予測する専門家もあるようです。
そのため、PPS事業者によっては、スーパーマーケットとタッグを組み、自由化される電力市場を開拓しようと考えている企業もあります。
どれくらいの粗利益が見込めるのかという点ですが、自社で発電事業を行わない場合は、販売手数料方式となり、1%~2%程度のようです。
一方で、資源エネルギー庁が実施した電力小売自由化に関する国民意識調査では、5%の値下げで約半数が既存電力会社から乗り換えると答えています。
スーパーマーケットやドラッグストアにとっては、この販売手数料の1%~2%に加え、消費者が動くといわれる5%を加えた6%~7%の範囲内でいかに利益を出していくかという点を考える必要がありそうです。
個人的には5%全て消費者に還元して値引きするのではなく、契約締結時や毎月の電気支払明細を店舗に持参してもらうと、インセンティブにポイントや値引きクーポンをプレゼントするといった活用方法が賢い選択ではないかと思います。
小売事業者になる際には、料金の回収リスクにも注意が必要です。粗利益率が極端に低くなることが予測されますから、基本的に事故率ゼロでいきたいところです。特に電気料金の決済で最も多く使われている口座振替の回収リスクは販売者が負うことになりますので、事業着手前によく検討する必要があります。
公共料金の決済サービスを行っているCVSの動向にも注目ですが、今のところ最大手のセブンイレブンは静観状態です。コンビニ決済で公共料金を支払っている層は全体の2割程度ですが、ここを押さえているCVSの動向はスーパーマーケットやドラッグストアにとって脅威にも参考事例にもなり得るため、注視していく必要がありそうです。