地産地消型新電力会社の参入相次ぐ

事前登録11社のうち5社がバイオマス事業者

「地元資源による電気を地元で使ってもらう」。そうした狙いのもと、地産地消型の新電力の参入がこのところ相次いでいます。特に目立つのがバイオマス資源による電気です。経産省が去る3月7日、電力小売りの全面自由化を控えて新たに11社の小売り電気事業者を事前登録しましたが、そのうち、5社までがバイオマス発電の小売り事業者です。ひところ太陽光発電事業者が多かったのに比べると様変わりです。なぜ、バイオマス発電の事業者が増えているのか、今回の事前登録事業者のうちの2社のケースをご紹介しながら、その要因を探っていきます。

今回、事前登録を認められたバイオマス発電の小売り事業者は、佐伯森林資源(大分県佐伯市)、日田グリーン電力(大分県日田市)、津軽あっぷるパワー(青森県平川市)、花巻銀河パワー(岩手県花巻市)、宮崎パワーライン(宮崎日南市)の5社です。いずれも森林資源に恵まれた地域に立地する事業者です。5社のうち、「津軽あっぷるパワー」と「花巻銀河パワー」は、廃棄物処理・リサイクル企業の「タケエイ」が設立した新電力会社です。

「タケエイ」は東証1部上場企業で、東日本大震災後の電力需給ひっ迫を契機に、再生可能エネルギー事業に積極的に取り組んでいます。再生可能エネルギーの中では、とくに、木質バイオマス発電事業に力を入れており、これまでに、「津軽バイオマスエナジー」(青森県平川市)、「花巻バイオマスエナジー」の2社を設立し、それぞれ売電に向けた準備を急いでいます。

 

森林以外に都市部でも未利用資源が発生

同社がバイオマス発電に積極的に取り組んでいるのは、森林資源だけでなく、都市部を含めた地域でも、造園や産業廃棄物、街路樹、剪定枝などの未利用バイオマス資源の大量発生が見込まれるためです。そうした資源の有効活用と、発電電力の販売拡充の一環として、新たに津軽あっぷるパワーと花巻銀河パワーの小売り事業の事前登録を行ったわけです。

4月からの電力小売りの全面自由化以降は、事前登録された小売り電気事業者は、従来の50kW以上の大口需要家だけでなく、地元の一般家庭や商店などの小規模ユーザーにも電力を販売できることになります。

津軽あっぷるパワーの場合、文字通り、津軽地方のリンゴの剪定枝などを木材チップとして利用し、発電された電気を販売します。発電事業者は津軽バイオマスエナジーですが、その他の発電事業者からも電気の供給を受け、販売することになります。一方、花巻銀河パワーは、発電事業者の「花巻バイオマスエナジー社」のほか、他の発電事業者からも供給を受け、電気の販売を行います。

 

買取制度で有利な価格設定の可能性

再生可能エネルギーのうち、バイオマスエネルギーに注目が集まっているのは、未利用資源が広く存在し、発電設備を低コストで比較的簡単に作れるという理由のほか、再エネ固定価格買取制度による買取価格が、太陽光発電などに比べて今後有利に設定される可能性が高まっているためです。

再エネ固定価格買取制度は、太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマスの5種類の発電電気を電力会社が長期固定価格で買い取る制度です。買取費用は、電気料金に上乗せされる再エネ賦課金の形で、国民全体が負担することになります。同制度は、太陽光発電に偏重した経緯から、買取価格については、太陽光発電を引き下げる一方、バイオマスや地熱などに関しては、価格を据え置く方針です。そのため、バイオマス発電事業者としては、長期にわたって比較的高い価格で買い取ってもらえることから、事業推進上、メリットのある形となります。

電力会社としても、再エネの中で地熱やバイオマス電力は、出力が安定しており、電気の需給バランスを維持しやすいという利点があります。

 

まとめ

バイオマス電力のような、いわゆる地産地消型電力は、電力小売りの全面自由化のもとでは、ユーザーからのニーズの高い電気といえます。ただ、地産地消電力という場合、資源産出地域や電力供給地域の範囲などについては課題も残ります。低価格の輸入木材チップを地元チップと混合して発電した場合、果たして地元資源と呼べるかなどの点です。経産省として検討が必要と思われます。

 

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