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電鉄系の新電力、東急パワーサプライが顧客2万件を取り込む その戦略とは?

電力小売の全面自由化を控えて、地域電力会社や新電力会社による顧客争奪戦が激しくなっています。そうした中で電鉄系の新電力会社として、東急パワーサプライの獲得顧客の急増が注目を集めています。2月24日現在、同社が取り込んだ顧客は2万件を突破しました。今年1月に電力小売の事前申し込みがスタートして以来わずか1ヵ月あまりでこれだけの顧客を取り込んだ同社の戦略とは、一体どんなものか、それを探っていきます。

 

東急電鉄が昨年10月に設立

東急パワーサプライは、昨年10月1日に、電力小売業を目的に、東急電鉄の100%子会社として設立された、いわゆる新電力会社です。新電力会社は、既存の大手地域電力会社とは別に、新たに電力ビジネスに参入した電力会社で、従来の特定規模電気事業者(50kW以上の高圧需要家向けの小売販売事業者)に加え、昨年8月から事前登録が始まった小売電気事業者などを指します。特定規模電気事業者は、50kW未満の低圧需要家いわゆる一般家庭やコンビニ、商店などには電気を販売できませんが、登録小売電気事業者は、すべての需要家に販売することができます。

登録電気事業者は、経済産業省に登録を申請し、審査を経た事業者が登録を認められます。2月23日現在、登録電気事業者は199社にのぼっています。業種別内訳としては、大手電力会社系の新電力会社や、ガス会社系、石油会社系の新電力会社が比較的多くなっています。このほか、商社系や金融・不動産系、通信会社系の新電力会社の参入も目立っています。そうした中で、電鉄系の新電力会社は、これまでのところ、東急パワーサプライ1社にとどまっています。

東急電鉄は実は、戦前から、鉄道運営や地域開発、地域への電力供給の事業を行っていました。1918年に設立された田園都市株式会社や玉川電気鉄道がそのベースとなっています。田園都市株式会社は、1944年の配電統制令により関東配電に事業の一部が引き継がれ、東京電燈を経て、現在の東京電力となっています。

そうした経緯から、東急電鉄として、2000年から実施された電力の部分自由化の過程で、電力事業に参入したのです。部分自由化の過程では、特定規模電気事業者として、東急グループの商業施設などに電力の供給を行ってきました。それらの事業を踏まえ、4月からの小売全面自由化をにらんで、東急パワーサプライを設立し、本格的に電力事業に進出することになったものです。

 

ケーブルテレビとの業務提携で顧客を広げる

東急パワーサプライは、提携先の発電所から、電力を調達し、契約した顧客に販売します。
顧客獲得の最大の戦略のひとつは、地域に密着したケーブルテレビ会社との業務提携です。
東急パワーサプライは、昨年11月から今年2月までのわずか4ヵ月間で6社のケーブルテレビ会社と相次いで提携しました。昨年11月に提携した「イッツ・コミュニケーションズ」は東急線沿線の地域に密着した放送・通信インフラ事業会社で、約82万世帯が加入しています。また、「南東京ケーブルテレビ」(ケーブルテレビ品川)には、品川区の顧客を中心に約16万世帯が加入しています。「横浜ケーブルテレビジョン」は相鉄線沿線の顧客約5万世帯が加入しています。このほか、北関東地域をサービスエリアとする「ケーブルテレビ」、東伊豆及び湯河原をエリアとする「伊豆急ケーブルネットワーク」、埼玉県西部及び東京都西多摩地域をエリアとする「入間ケーブルテレビ」などが東急パワーサプライと提携しています。

戦略のもうひとつの柱は、東急グループで使える「TOKYU CARD」や東急線PASMO定期券などと電気のセット販売によって、電気料金を割り引くサービスのほか、ケーブルテレビ会社の加入者にも電気料金の割引サービスを提供する方策です。それにより、それぞれの地域のケーブルテレビ加入者も東急グループと同様のメリットを受けることができます。東急パワーサプライは、今年1月から契約申し込みの事前受付を始めましたが、1月末で1万件、そして2月下旬で2万件と、わずか1ヵ月足らずで2倍に増えたことになります。

 

まとめ

新電力会社の顧客獲得の手法にはさまざまサービスが見られますが、東急パワーサプライのケーブルテレビとの提携作戦は、ケーブルテレビという、地域住民とのつながりを生かした、ユニークな戦略といえます。電気は、一般消費者にとって、暮らしに不可欠のエネルギーだけに、消費者とのつながりを生かしたサービスの提供が、顧客獲得の武器になると思われます。