介護福祉士を養成する専門学校や大学などに入学する「外国人留学生」の数が増加しています。公益社団法人「日本介護福祉士養成施設協会」の調査によると、近年は入学総数の6分の 1を留学生が占めるなど、高い比率を示しています。北海道・東川町にある旭川福祉専門学校は、自治体と連携した留学生の受け入れに力を入れています。外国人介護研修会での報告から、同校の留学生受け入れの仕組みや育成の在り方をお伝えします。
旭川福祉専門学校の留学生受け入れ状況
旭川福祉専門学校は、上川管内・東川町にある介護福祉士養成施設です。介護福祉学科のほかに、保育士などを養成する「こども学科」、医薬品販売のスペシャリストを目指す「医薬福祉学科」など4学科を開講。道北地区の人材育成に貢献しています。
2015年にベトナムから2人の留学生を受け入れたことを皮切りに、コンスタントに介護実習生を受け入れており、2019年の入学者数は26人と過去最多になりました。道内全体の留学生入学者数は66人であることから同校の突出が目立つ一方で、日本人の入学者数は23人にとどまるなど、地元高校生に対するアプローチが課題となっています。
これまで同校では、ベトナム、インドネシア、台湾、韓国、タイ、ネパール、中国、フィリピン、カンボジア、モンゴルなど、さまざまな国の留学生が介護を学びました。卒業後は国内の介護事業所に就職するほか、母国に介護施設を設立することを目的に留学した男性がいるなど、いずれも高い志を持って来日していることが伺えます。
多くの留学生を受け入れることができた3つの要因
①信頼できる送り出し機関からの受け入れ
旭川福祉専門学校のある東川町は、基幹産業である農業など自治体レベルで留学生の受け入れを推進しており、6か国とエージェント契約を結んでいる。これまで培われた信頼関係により「日本で介護を勉強したい」という人たちのニーズを把握できたことが、多くの実習生を招き入れることができた要因の一つと考えられる。
②日本語学科からの受け入れ
旭川福祉専門学校は日本語学科を開講(1年6か月コース及び2年コース)しており、そこで学んだ留学生が介護学科に入学する流れが確立している。すでに日本語や日本の文化を学んでいることから、十分な理解のもとに受け入れができている。
③北海道介護福祉士就学資金の活用
北海道介護福祉士就学資金(介護人材確保のために創設された制度で、2年間で168万円の奨学金が北海道から受けられるうえに、道内の事業所に3~5年間勤務すると返済が免除される)を留学生にも活用することで経済的負担を軽減できる。
地域における外国人介護人材確保強化のための制度
留学生の受け入れは自治体や事業所の協力も大きく寄与しています。旭川福祉専門学校では留学生の経済的負担の軽減として次の二つの制度も活用しています。
①福祉施設就学資金制度
就労予定先となる法人などが最大175万円を貸し付ける制度。およそ30施設で80名分の修学資金枠があり、卒業後その法人に3~5年勤務すると返済義務が免除される。2018年10月現在、全道62法人が加盟しており、多くの施設修学資金実施施設では施設見学、面接試験の際にかかる交通費・宿泊費を施設が補助している。
②外国人介護福祉人材育成奨学金制度
外国人に自治体や高齢者施設が奨学金を給付、介護福祉士の資格を取得後の就労に繋げるために、東川町が中心となって設立された「外国人介護福祉人材育成支援協議会」によって実施される独自の制度。道北を中心に正会員として3町・9施設・学校、賛助会員として11市町、12施設が加盟している。
学費の8割を国が特別交付金として自治体に交付する制度でまかない、2割を奨学金の形で受け入れ希望施設と自治体が生活費と合わせて2年間で500万円程度(アルバイトをせずに生活できるレベルとして想定)を負担。資格取得には日本語能力N2が必要で、専門学校などで2年以上学ぶ必要があるが、卒業後3~5年奨学金を負担した施設で働くことで返済が免除される。
養成施設・事業所・自治体三位一体の取り組みが必要
東川町には同校のほかに町立の日本語学校があり、合計320人ほどの留学生が町内で暮らしています。町が留学生専用の寮(定員360)を用意するなど、町民として生活できる体制を整えています。コンスタントに実習生を受け入れるためには、介護福祉士養成施設・事業所・自治体三位一体の取り組みが必要です。報告を行った同校の黒田副校長は「介護福祉先進国の責務として事業所と協力のもと、質の高い日本の介護を正しくアジアに伝えていきたい」と結びました。
取材協力・監修:学校法人北工学園 旭川福祉専門学校
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