「こども」と地域交流 介護施設が駄菓子屋&こども食堂にトライ!

「地域との交流」「地域参加」など、介護施設と地域の連携の重要性が求められていますが、具体的に何をすべきか、何が効果的か等を説明できる人は少ないことでしょう。「こども」をキーコンセプトに、地域交流を図る二つの事業所を紹介します。

 

「駄菓子屋ままちの家」開店ストーリー

北海道・千歳市の「小規模多機能ホームえみな ままちの家」は、閑静な住宅街の中にある一戸建て風の施設です。糸田幹大さん(株式会社えみな取締役)は、2007年の開設当初から地域住民との交流や地域活動への参加を積極的に行いたいと考えていたものの、何をすればよいか糸口をつかめずにいました。ある日、高齢者関連施設が駄菓子屋を開店していることを知り、地域と施設を結ぶツールにすることを思い立ちました。

 

駄菓子屋はコミュニケーションの場

昭和40年代の街には駄菓子屋が数多くありました。高齢の方が経営していることが多く、おじいちゃん、おばあちゃんと話をしたり、子どもたちがたくさん集まる「コミュニケーションの場」と言った存在でした。また、手持ちのお金で何がどのくらい買えるか計算が必要なことから、「もう一つの学校」としても機能していました。「ままちの家」の前には児童公園があり、いつも子どもたちの元気な声が聞こえてきます。「ままちの家で駄菓子屋を開いて、地域の子どもたちと交流する機会を持ちたい」。糸田さんはさっそく開店の準備を開始します。

 

利用者様は看板娘

北海道が温暖な気候を迎える5月、「駄菓子屋 ままちの家」がオープンしました。町内の回覧板などで告知し、のぼりを立ててアピールします。ウッドデッキの開放的なスペースに店員として利用者を配置。お金の計算などを職員がサポートします。駄菓子は市内の卸や大型量販店から仕入れ、10円から50円程度の品を中心に販売します。「もう一つの学校」の要素を活かすため、購入する際はお客さん自身が計算して申告するシステムが取られています。

「利用者様に声掛けして、店員になってくださるようお願いしています。認知症等ですぐに忘れてしまう方もいらっしゃいますが、子どもたちと交流できたことで、ひと時でも楽しい時間を過ごしていただければと思っています」と、糸田さんは言います。目下の課題は集客と冬期間の開催場所。月2回のペースで開店していますが、回数を増やすと子どもたちに負担をかけてしまい、回数を減らすと賞味期限切れなどの在庫管理が難しいそうです。冬期間は施設内での開店を予定しているものの、「扉を開けて入ってきてくれるだろうか...」と、悩ましい課題を抱えています。課題が解決できれば、既存の施設や新設する施設でも実施したいと考えています。

 

 

デイサービスの空き時間を利用して「こども食堂」を開催

札幌市厚別区もみじ台地区にある「デイサービス クラールもみじ台」では、生活相談員二人が中心となり、利用者が帰宅した後のフロアを使って「こども食堂」を開催しています。”仕掛け人”の一人、山田麻以さんに話を伺いました。

 

何気ない会話からこども食堂がスタート

子ども食堂は、山田さんと同僚の須藤さんの何気ない会話からスタートしました。「全国的に子ども食堂が行われているけど、ここでも地域に貢献出来ることがあったらいいね」、「デイサービスの利用者様が帰った後のフロアを有効に活用できないかな」など、二人で話し合ったことがきっかけでした。上司に相談したところ許可を得ることに成功。2017年9月に「もみじ台こども食堂 つぼみ」がオープンしました。

 

併設サ高住の協力を得て食事を提供

こども食堂は、毎月第三木曜日の16時30分から18時に開催。法人の援助により併設のサービス付き高齢者住宅の料理を分けてもらう形で食事を提供しています。高齢者の食事は薄味やカロリーが低いものが多いと思われがちですが、サービス付き高齢者住宅に居住される方は元気な方が多く、さまざまなものを召し上がります。こども食堂は栄養士の協力を得てメニューを考案し、ハンバーグや豚丼など、子どもが喜ぶメニューが多いと言います。

 

参加者増の前に立ちはだかる少子高齢化

参加費は子ども(高校生まで)一人100円、つきそいの親は一人300円とリーズナブル。毎回10人ほどが利用し、リピートする率も高いと言います。「出来るだけ多くの方に利用していただきたい」と思う一方で、地域が抱える課題にもぶち当たりました。もみじ台地区は少子高齢化が進み中間層が減っていることから、子どもの数が少なく参加者の増加に繋がらないと言います。「商業地域で開催しているこども食堂には多くの人が集まっているらしいが、この地区は公園で遊んでいる子どもすら見かけることが少ない」と、参加者増が思ったよりも難しいことを実感しているようです。

 

地域で子どもの未来を支えたい

「介護施設が提供している安心感から、一人で食べに来ることを許可してくれる親御さんがいらっしゃったり、友達を誘って来てくれる子もいるので、出来るだけ多くの人に利用していただき、こども食堂を長く続けていきたい」と、山田さんは今後の意気込みを語ってくれました。

 

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取材協力

株式会社えみな

医療法人 重仁会

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