各地の生協が相次ぎ電力小売り事業に進出

各地の生協(生活協同組合)が、電力の全面自由化を契機に、このところ、相次いで電力小売り事業に進出しています。生協は組合員総数が全国で約2830万人にのぼる巨大組織であり、宅配や店舗小売り事業、介護・福祉事業などを通じて消費者と密接なつながりを持っています。そうした消費者との接点を活かし、暮らしに不可欠の電気販売に乗り出そうというわけです。組合員の多くは、エコライフ指向といわれ、電気の小売り事業でも、再エネ電力の比重の高い電気販売を目指しています。今年4月の全面自由化と同時に電気の小売り事業に乗り出した大阪いずみ市民生協、6月から事業を開始したコープさっぽろ、首都圏で先行的に事業をスタートさせた生活クラブ連合会、今年秋から試験的に事業を始めるパルシステム連合会の動きを追いながら、生協の電気小売り事業の戦略を探っていきます。

 

4月から小売り事業を始めた大阪いずみ市民生協

4月から電気の小売り事業を始めた大阪いずみ市民生協は、関西地域を地盤とする組織で、今回の電力事業では、大阪府下東大阪以南の25市町村を電力供給地域としています。大手電力会社の関西電力のサービスエリアです。

同市民生協は、生協のほか、コープ大阪サービスセンター、コンシェルジュ、ハートコープいずみ、いずみエコロジーファームの3つの子会社(いずれも株式会社)で構成されています。コープ大阪サービスセンターは団体保険や生命保険、損害保険、葬祭サービスなどの事業を実施しています。ただ、これらの事業については、2016年度から生協のほうに業務移管される予定です。

コンシェルジュは、いずみ市民生協の大型店舗を中心とした運営や、個人別配送、物流センターの運営・管理、生協施設の保守点検業務を行っています。ハートコープいずみは、障害者の自立支援と雇用促進を目的としたリサイクル品の加工販売や施設内の清掃業務などの事業を担っています。また、いずみエコロジーファームは、食品リサイクルの一環としての、野菜作りやたい肥製造などを実施しています。

大阪いずみ市民生協の事業規模は、こうした各種の事業を合わせ、2015年度には825億円に上っています。前年度比7%の伸びです。組合員数は、49万8000人となっています。各事業、組合員数ともに、近年、着実な伸びを見せています。組合員加入率は、エリア内世帯の37.8%と、地域における世帯の約3軒に1件が組合員という計算です。

同市民生協の中期計画によると、宅配、店舗、福祉事業の3つを大きな柱として、2020年度には総事業規模1000億円、組合員加入率50%を達成する目標を打ち出しています。

電気の小売り事業は、同生協として、宅配、店舗、福祉に次ぐ第4の事業として位置づけています。同生協では、小売り電気を「コープでんき」の愛称をつけ、電気は、エナセーブ株式会社から調達します。エナセーブの電源構成は、FIT(固定価格買取制度)を利用した太陽光発電やバイオマス発電の比率が高く、CO2の排出割合も、大手電力会社の半分以下となっています。また、同生協自身も太陽光発電設備を所有しており、発電電気は、エナセーブを通じて組合員にも供給します。

「コープでんき」の料金プランは、平均的な電気使用量の家庭向けの「ベーシックプラン」と、比較的使用量の多い家庭向けの「バリュープラン」の2種類があります。ベーシックプランは月間440kWh未満の家庭にお得なプランで、関西電力の一般家庭向けプラン(従量電灯A)より平均4~5%割安です。440kWh以上の使用量の家庭では5%以上、最大で12%割安となっています。

 

コープさっぽろは組合員数154万世帯を数える

コープさっぽろは、6月から組合員への電気の小売り事業を始めました。コープさっぽろは、北海道地方を対象エリアとして事業を展開し、組合員数は2015年度末現在で154万世帯を数えています。これは、北海道全体の世帯数約270万世帯の57%に相当します。事業は、店舗事業や宅配事業、共済事業を中心に、2015年度で合計2583億円にのぼっています。

コープさっぽろの電気小売り事業は、グループ内の二つの会社を通じて実施されています。一つは(株)トドック電力であり、もう一つは(株)エネコープです。エネコープは、コープさっぽろの100%子会社であり、トドック電力はエネコープの100%子会社です。トドック電力は、再エネを使用したFIT電気60%を中心とした電源メニューで供給し、エネコープは、火力発電所からの電気をメインとして供給する、いわば、電源の種類によって使い分ける方法をとっています。

二つの会社から供給される電気は、いずれも、北海道電力の電力量料金と比べて割安になっています。例えば、トドック電力の場合、北海道電力の従量電灯Bメニューと比べて、20~60Aの基本料金単価は同額ですが、電力量料金単価は、0.5~1.0%割安となっています。灯油販売とのセット割引メニューでは、電力量料金単価は2.5~3.0%お得に設定されています。

エネコープの場合、北海道電力の従量電灯Bと比べると、基本料金は同額ですが、電力量料金単価は1.0~8.0%、灯油とのセット割引では3.0~10.0%それぞれ割安となっています。

 

生活クラブ連合会は6月から1500世帯に電気を供給

首都圏で電力小売り事業の先行実施を始めた生活クラブ連合会は、6月から、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で1500世帯を対象に電気の供給をスタートさせました。
同連合会は、北は北海道から南は兵庫県までの21都道府県で活動する33生協の事業連合組織です。組合員数は約34万人で、関連・関係会社は6社あります。

電力小売りの先行実施を始めたのは、生活クラブ連合会グループ会社の(株)生活クラブエナジーです。生活クラブでは、2013年に「脱原発」「エネルギー自給」「CO2削減」をめざして総合エネルギー政策を策定し、それに基づいて2014年10月に(株)生活クラブエナジーを立ち上げました。当初は生活クラブ生協事務所や関連会社などへの高圧契約の事務所に供給を行っていましたが、電力の全面自由化を機に、組合員向けにも供給することになりました。当面、供給対象は首都圏の組合員ですが、今年秋からは、他地域の組合員にも供給を広げていく方針です。電源構成としては、風力発電や太陽光発電、バイオマス発電など生活クラブの発電設備を中心に、再エネ比率が30~60%となるよう、電源を設計していきたい考えです。

 

パルシステム連合会は今秋から実験供給

今年秋から一部地域より電気の実験供給の開始を予定しているのは、パルシステム連合会です。パル(友達)とシステムを組み合わせた造語で、連合会は、首都圏を中心とした1都8県の10生協から構成されるグループです。加入組合員数は約90万世帯です。同連合会が設立した(株)パルシステム電力を事業主体として、電気の小売り事業を展開する予定です。水力発電やバイオマス発電、太陽光発電などを所有する産地と連携し、電力供給の準備を進めています。

 

まとめ

各地の生協は、食料品を中心とした宅配や店舗販売のほか、福祉・介護、共済事業など様々な事業を展開しています。それらの生協はそれぞれ独自に事業展開していますが、地域生協は、日本生活協同組合連合会(日本生協連)に加入しています。日本生協連はいわば生協の総元締めともいえます。組合員総数が膨大であるだけでなく、地域生協の総事業高は約3兆4000億円に上るといわれます。そうした事業を通じて生協は全国の消費者と密接なつながりを構築しています。今回の電気の小売り事業への進出は、食料品と同様、電気が暮らしに不可欠のエネルギーであることから、生協事業の大きな柱に育てたいという戦略があるといえます。とりわけ、生協の組合員は、環境にやさしい食料、物資、エネルギーの選択指向が強いといわれます。電気の小売り事業もそうした環境に配慮した、いわゆる再エネ比率の高い電気の供給に力を入れることになりそうです。

 

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