「営業許可を取ったけど、売り上げを伸ばすためにちょっとサービスを変更しようかな。」
「お店が営業許可の範囲と違うようになっちゃうけどこれって大丈夫?」
さてここからは、開業後に新たな手続きが必要になる場面について説明していきます。
氏名(法人の場合は社名)、住所、店名に変更があった場合
飲食店営業許可、深夜酒類販売飲食店営業の届出(以下、深夜営業の届出)、風営法上の許可ともに、事業者の名前や住所等の届出事項に変更があった場合、変更後10日以内(14日、20日以内が期限のものもあります。)に営業許可を受けた保健所や警察署へ届出を行って下さい。また廃業の場合も10日以内の届出が必要です。
許可期限後の継続営業
飲食店営業許可には5年から8年程の許可期限があります。引き続き営業をされる場合には必ず期限前一か月以内に更新の手続きを行いましょう。ちなみに、深夜営業の届出や風営法の許可には期限はありません。
インターネット販売等を行う場合
例えば、「お店で提供している商品で人気のものが出てきたので、店内で提供する以外の方法でも販売をしたい。」といった場合です。
*テイクアウトやインターネット販売する場合
この場合は何を販売するかによって変わります。喫茶店が自家製のケーキなどをテイクアウトOKにする場合は「菓子製造業」の許可が要ります。
しかし、居酒屋さんが焼き鳥のテイクアウトを行う場合、もともとの飲食店営業の許可があればOKです。何がOKで何が追加の許可が必要なのかの境目はかなり微妙ですし、実は地域差もあります。管轄の保健所に電話すると教えてくれますので、迷った場合にはまず確認を取りましょう。
*調理、保存に関して
店舗とは別の場所で大量に作る場合や、保存を行う場合、別途営業許可を取らなければ行けないのか?というご質問を受けることがあります。
基本的には、調理をする場所ごとに許可を受ける必要があります。
つまり、保存のみを行う場所には許可は必要ない、ということになります。お店で大量に調理し、保管場所を別途確保する、という場合には、新たな許可は必要ない、ということです。
逆に、お店とは別の場所で大量に仕込んで、お店にもってくる、という場合には、調理場所に営業許可が必要になりますので注意して下さい。
移動販売を行う場合
自動車等を使った移動販売を行いたい、という場合です。
これは何を販売するかによって制限が変わってきます。お菓子などであれば、簡単な調理盛り付けはOKですが、肉、魚、乳製品は、調理加工が出来ません。 また自動車にも、面積や明るさ、給水タンクの容量、電源の確保などの規定があり、県をまたぐ場合には両方の県での許可が必要になるなど、厳しい制限が課せられています。
お祭り等、イベント出店の為、野外で調理したい場合
これは「臨時営業の許可」というものが必要になります。
事前に販売を行う場所について申請し、営業許可を受けることになります。また、野外での調理は衛生面での審査基準を満たすことが困難な場合もあり、一般的な店舗で許可を取得することに比べるとハードルは高いことが多いです。
許可を受ければ、もちろん許可証が交付されますので、お祭りの屋台などで許可証を掲げていないお店は許可を受けずに営業している可能性が高いですね。
もちろん違法営業です。
時々、許可を受けていない屋台のたこ焼き屋さんが逮捕されてしまった、というニュースを見かけます。臨時営業を行う場合にも、しっかりと許可を取りましょう。
事業の承継による変更
相続や、事業の譲渡による変更の場合です。
*個人事業の場合
お父さんが行っていた個人事業を息子さんが引き継ぐ、という場合には、事業主体が変わりますので、許可を取りなおす必要があります。
*法人の場合
お父さんが代表取締役をしていた会社の事業を息子さんが引き継ぐ、という場合は、会社の役員が変わるだけで、事業主体に変更はありませんから、許可を取りなおす必要はありません。役員の変更登記で済みます。法人で営業をしていた方が事業の承継手続きは簡単だと言えます。
事業承継が大きな問題となるのは、風営法上の許可がいる事業をしていた場合です(スナック、キャバクラ等)。
事業を継ぐ息子さんが許可を取りなおそうとしたら、以前は許可が下りた地域だったのに、近くに保護施設(病院、図書館など)が出来てしまい、新しく許可を取ることが不可能な地域になってしまっていた・・ということがあり得ます。
こうなると営業形態を変えざるを得ませんので、経営に大きな打撃を与えて場合がある訳です。事業の承継があることを考え、お店の営業形態によっては早い段階で法人化しておくことを検討した方が良い場合もあります。
営業形態を変更する場合
営業を開始してみたら、新たなニーズがあることが判明した為、売り上げを伸ばすために、営業形態を変更したい、という場合です。
例えば、
① 夜12時以降も営業したいので、深夜酒類販売飲食店営業の届出をする
② バーの形態だったが、お客さんを接待出来るようにしたい
③ スナックで営業していたが、12時以降も営業したい
④ アミューズメント性を高める為にダーツやゲーム機を設置したい
といった場合です。順に解説していきます。
① の場合
深夜の営業を開始する10日前までに所轄の警察署へ「深夜酒類販売飲食店営業の届出」を行います。この場合は特に営業を中止する必要はありません。届出が受理されてから10日後から深夜の営業が可能になります。
② の場合
こちらは風営法の1号営業の許可を取る必要があります。許可の申請から許可までの標準処理期間は55日です。その為約二か月間はお店を閉めて、許可が下りるのを待つことになります。これに関しては、「お店を閉めなくても、許可が下りるまで接待をしない形態で営業すればいいんじゃないの?」という問い合わせを受けることがあります。理論上は可能ですし、所轄警察署の担当者によっては営業しても構わないと言う場合もありますが、接待が出来る様な店内の設備などを全て整えてから申請する訳ですから、「このお店は接待を行っている。」とみなされやすいですし、酔ったお客さんの要望に応えて従業員がついつい接待を行ってしまう可能性も高いです。それが発覚し、不許可になったり罰せられるリスクを考えると、一時閉店して許可を待つべきでしょう。
③ の場合
許可を取って夜12時までスナック営業をしていたが、深夜に営業するメリットが大きい、という場合です。風営法の許可では営業は夜12時まで(地域によっては深夜1時まで)ですので、深夜営業をする場合には、接待を行わない飲食店の形態にしなければなりません。
一般的にはバーと呼ばれる営業形態ですね。接待か、深夜営業か、両立は出来ませんので、どちらかを選ばないといけません。
④ の場合
デジタルダーツや、ゲーム機、スロットマシン等設置する場合には、基本的にはゲームセンターの許可を取らなければなりません。しかし、ゲーム機器が客席に占める面積が10%以下であれば、例外的に許可が要らなくなります。お店の客室面積を考慮し、その範囲内でゲーム機を設置すれば、大きな労力をかけることなく、集客や客単価のアップにつながりますね。尚、ビリヤード台はゲーム機にあたらない、シミュレーションゴルフはゲーム機にあたる、等の細かいルールもあります。迷った場合には、所轄の警察署に相談しましょう。
以上、営業開始後に必要になる許認可や手続きについてでした。