差別化が難しく、競争が激しいデイサービスや住宅型有料老人ホームにとっては、ケアマネージャーへの営業活動を成功させるかどうかが施設の成功の成否を分けるといっても過言ではありません。
競争が激しいということは、デイサービスや住宅型有料は民間企業の参入が多く、ケアマネージャーや利用者に選択肢が豊富にあり、その多くの選択肢から選ばれる必要があるということに他なりません。
介護業界では集客が容易である代表的な存在である特別養護老人ホームなどは国の政策もあり、参入障壁が高く、手厚い保険給付から利用者の負担が少なく価格競争力が協力であるという二重の構造で集客活動が不要なほどの位置に存在しています。
特別養護老人ホームを経営することで、ケアマネージャーから重宝がられ、特養以外の施設の集客にもプラスがあることは、介護業界内ではよく知られている事実ですが、特別養護老人ホームを設立するためには、社会福祉法人を設立し、行政との交渉をうまく成立させる必要があるなど、中長期にわたりかなりのコストとコネクションが必要であり、ほとんどの介護事業者が簡単には取り組めないテーマであることは否めません。
ただ、この特養の集客力が強いという事実にケアマネ営業を成功させるヒントがあります。もう少し言えば、利用者のニーズが強烈に存在する特養という施設を持つ企業グループは集客にさほど苦労がないという事象に違い状態を作ればよいということになります。特養の強力な集客力はその価格競争力にあります。一つの方向性としては、住宅型有料老人ホームやサービス付高齢者住宅の家賃や管理費を極限まで切り下げ、特養に近い集客力を持たせ、介護度の高い利用者のみを入居させるというやり方があります。介護度の高い利用者で満室にするほどの集客力を持たせられるかがポイントになります。
介護度が高くなれば、必然的に介護保険を利用したサービス売上は高くなり、家賃や管理費を抑えた以上の売上高を確保することができます。現状では介護保険の自己負担金額は1割のケースが多いですから、ご利用者からは喜ばれることは間違いありません。
デイサービスの場合はどうでしょうか。デイサービスの場合であれば、一昔前に世間をにぎわしたお泊り型デイサービスがこの事例に該当します。フランチャイズ方式を採用して短期間で成長を遂げた茶話本舗は一泊の宿泊料金を800円という破格値で、特養の待機者の取り込みに成功しました。近年でも特養の入居者は増加の一途をたどっており、コンプライアンスと品質を達成できる運営が約束できるのであれば、有効な集客手段であることに変わりはありません。
いずれにせよ、利用者が困っていることで、競合施設が対応できていないテーマを達成することが集客力強化に一番の近道です。できれば戦術レベルで達成するのではなく、経営戦略を入念に検討して実現されるのが理想ではありますが、利用者が解決に困っていること⇒ケアマネージャーが困っていることという図式は変化をすることがありません。
デイサービスの短時間利用者への対応などはお泊りデイよりは取り組みのしやすいテーマです。夜勤者を採用するよりも送迎の体制を整えることの方がずっと難易度が低いですから。
こういった他施設がやらない“ケアマネ・ご利用者の困りごと”に対応する施設が競争力を高めます。当たり前の話ですが、誰もが解決の難易度が高くて取り組まないテーマほど解決すれば爆発的競争力を生みます。
現場は“できない”と反論しても、粘り強くリードをして競争力を高めることが経営者や施設長の責務です。安定した経営でスタッフの生活を守るためには、現場を押し切ってトップ判断することも必要です。1年、2年赤字が続く施設では、リーダーの英断が必要とされているのです。