「意外と多い」創業して間もない社長で年収5000万円超
会社経営をしていると必然的に経営者との交流が増えます。
お互いの給料のことを話すことはほとんどありませんが、ちょっとした会話の中で偶然知ってしまうことがあります。その中でも創業してさほど時間が経過していない企業で、かつ社員数が100名に満たない中小企業の経営者でも年収5000万円超の方が結構いらっしゃいました。
感覚的には20人に1人くらいでしょうか。中には個人事業主で年収1億円、年収6000万円という方もおられ、驚いたことがあります。
不動産業界に多い高収入社長
高収入な経営者を思い起こしてみますと、比較的小規模な企業でかつ高収入な社長は圧倒的に不動産業界に多いことがわかりました。
人材派遣会社や飲食業、携帯電話代理店などの経営者でも5000万円以上の年収を得ている社長はいますが、不動産業が多い傾向がはっきり見て取れました。先の年収1億円、年収6000万円の社長も二人とも投資不動産の売買業を運営しておられます。
不動産業は儲けが出やすいのか?だったら社員の平均給与水準はどうなのか?
ということで、上場企業の社員の平均年収を調べてみました。
【社員の平均年収が1000万円超の上場不動産会社】
順位 | 不動産会社名 | 市場 | 平均年収(千円) |
---|---|---|---|
16 | ヒューリック(株) | 東証1部 | 12,680 |
21 | (株)ランドビジネス | 東証1部 | 11,840 |
31 | 三菱地所(株) | 東証1部 | 11,070 |
33 | 三井不動産(株) | 東証1部 | 11,010 |
42 | 東急不動産ホールディングス(株) | 東証1部 | 10,410 |
49 | 日本商業開発(株) | 名証1部 | 10,170 |
社員の平均年収が1000万円を上回る上場企業は53社ありましたが、その中で6社が不動産業界の企業でした。この数はマスコミの9社、総合商社の7社に次ぐ多さです。
高収入の実現=利益が出やすい業界特性
高収入が実現できているということは、すなわち業界自体が高収益な構造であると考えられます。この高収益な業界に共通する点は契約単価が大きいということに尽きます。
不動産業界でも契約単価の高いジャンルで言えばビルや一棟物のマンションの売買に始まり、契約単価が小さいものであればワンルームマンションの仲介まで幅広くあります。
少々乱暴な言い方ですが、巨額な利益を計上している企業は大型不動産を扱うジャンルに多く、薄利で苦戦している企業は区分所有マンションの賃貸仲介に多い傾向があります。
賃貸業界でも、仲介手数料が高額になるオフィスや商業テナントに特化している不動産会社は高収益を実現しているケースが多くあります。
不動産業界以外にも当てはまる“儲けの大きさ”=“契約単価の法則”
企業の儲けの大きさが社員の平均年収に結びついていると考えれば、他にも契約単価が大きく、極端に高収入な業界があります。上場企業の中で最も高収入な企業1位は一体どこでしょうか?
トヨタ自動車?ソニー?大手証券会社?総合商社?学生の就職活動の人気企業をあげる人が多いと思いますが、答えは意外な業界の会社です。
高収入上場企業1位はM&Aキャピタルパートナーズ(株)。業界はMA仲介業。 社員の平均年収は年収2,000万円に届こうかという1,947万円で、2位の(株)フジメディアホールディングスの1,506万円を大きく引き離してダントツの1位です。
ちなみにM&A仲介業の上場企業では日本M&Aセンター(1,412万円)も第7位にランクインしています。 M&A仲介業は企業自体の売買を仲介することで仲介手数料を得るビジネスモデルですが、不動産よりもさらに高額な契約になるケースが多くあります。中には数千億円という契約も存在します。
商品単価が低くてもLTVに注目すれば“高契約単価と同じ効果”を得られる
商品単価が低い業界でも、まとめ売りなど契約単価を上げる方法はありますが、最も効果的なものはLTV(ライフタイムバリュー)の最大化という考え方に基づいた商品戦略、マーケティング戦略ではないでしょうか。
顧客のスイッチングコストを高くすることで、LTVを大きくしているビジネスモデルは結構存在します。
顧客に経済的“損失”をチラつかせることで、LTVを最大化している事例
・不動産業界にある契約期間内の解約ペナルティ(敷金の返還率低下、没収)
・コピー機や携帯電話の中途解約ペナルティ
・生命保険の解約返戻率(短期間で解約すると率が悪い)
・リース契約の中途解約時のペナルティ
・金融機関の固定金利融資の途中返済のペナルティ
などが該当します。
顧客に経済的“特典”を与えることで、LTVを最大化している事例
・スーパーマーケットやドラッグストアのFSP型の販促
・化粧品や健康食品の定期購入の割引
・クレジットカードなど会員カードの各種特典
・会計士や弁護士の顧問契約締結期間中の無償サービス
・保険代理店契約などにみられる人材出向サービス
など、“新規開拓コストが高い”あるい“解約率・退会率が高い”そのような業界ではLTVを最大化するための施策を実施することで飛躍的に収益を高められる可能性があります。
特にLTVの観点が弱い業界では、上記のような観点を持ち込み、ビジネスモデル上の差別化が実現できればM&A仲介業界や不動産業界以上の高収益を実現することができます。
LTVの最大化で高収益を実現するカーブスジャパン
30分フィットネスで一躍有名企業となったカーブスジャパン。
現在は全国1000店舗を超え、業界トップの座を不動のものとしています。カーブスの収益性の高さは度々話題になりますが、収益力のポイントは“仕入・在庫がない商売であること”と“初期投資が低いこと”で説明されることが多いです。この2点については同感ですが、もう一つ重要な成功ポイントがあります。
それは、「獲得した会員のLTVを最大化するための退会防止の仕組みがあること」です。
カーブスへ通い続けることへのモチベーションを維持すること、またそれを会員に浸透させるためのスキルをトレーナーに習得させる人材育成プログラムには力が入っています。
他の低投資型のフィットネスがカーブスほどの実績を残せない点は、ここのレベルの差にあります。通常、フィットネス業界の退会率は月3%~5%です。仮に5%の退会率が続けば年間60%もの会員が減少する計算になります。この退会率を低く抑えることで、新規集客コストも低く抑えられ、安定した収益を達成できているのです。
LTVの最大化(顧客との関係性の維持・発展)は一見、地味な施策のようですが、その分コストをかけずに実現できる施策も多いため、事業の収益性を大きく左右する経営テーマといえるのではないでしょうか。
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