小売業経営者の悩みの一つがロス対策です。
スーパーマーケットやドラッグストア・家電量販店・書籍小売業・コンビニエンスストアなど、いずれの小売業においても、ロス管理は大変重要なテーマです。
商品ロスには、仕入から販売までの間にレジの打ち間違い、万引き、社内不正、商品破損など多種多様な原因があります。
中でも大きなウエイトを占めているものが、社内不正と万引きです。
最近はPOSレジに自動釣銭機が装備され、レジ回りのロスは改善されています。
商品破損については、商品の包装状態の改善や物流技術の改善で減少傾向にあると思います。
またスーパーマーケットでよく起こりがちな生鮮食品の鮮度不良などは返品が可能なケースも多いため、実際にはそれほどの大きなロスになっていないのが実情ではないでしょうか。
では社内不正と万引きロスの対策として、社内不正の例を改善した事例を紹介します。
あるスーパーマーケットD社では、以前からタバコのロス金額が常に2%程度発生していました。
結論から言えば、各店舗の主に店長が自動販売機の売上金額を盗むという事案が横行していたのが原因でしたが、当時はお客様の万引きによるロスではないかと考え、レジ横のタバコケースに鍵をつけたり、棚卸の頻度を上げるという対策を実施していました。
それでも、一向にロスが減らないため、他部門のバイヤーからの指摘で、店舗ごとに社内不正を調査することにしました。
その際、今まで目を向けていなかった自動販売機の売上金額をJT(日本たばこ産業株式会社)の協力を得て、自動販売機ごとにデータ収集し、実際に回収されている売上金額と比較することにしました。
そうした結果、2割ほどの店舗でJTから提供されたデータと回収額が乖離していることが判明しました。
これにより今までのロスが自動販売機の売上金における社内不正という点が明確となり、乖離が大きい店舗にセコムの協力を得て、録画カメラを設置して社内不正の証拠を押さえることにしました。
結果、調査対象となった店舗全てにおいて、金庫から現金を搾取している社内不正が判明し、関係者は懲戒解雇となりました。
驚いたことに、懲戒解雇となった社員8人中6人が店長であり、D社の経営陣はショックを隠し切れない状況でしたが、現在では管理体制や社内教育を徹底することで、社内不正の再発に尽力しています。
大きなロスが出た場合は、社内による不正の確率がかなり高くなります。特に現金商売である小売業では金銭管理に抜け目があると、不正を誘発することになります。
もちろん不正をする社員にも問題がありますが、そもそも“犯罪者を作らない”という考え方に立ち、不正が起こらない管理体制を構築することです。D社では金銭を管理する人と、金庫の鍵を管理する人を別にし、両者が揃って初めて業務が完結する仕組みとしました、犯罪者を作らない環境を作ることが重要であるということを教えられる事例ではないかと思います。