福祉施設は慈善事業ではありません。しっかりと利益を出して経営を安定させることが、利用者のサービスの維持並びに職員の生活の保障につながります。ここでは、集客のための営業方法と留意点を紹介します。
なぜ集客できないのか
厚生労働省の報告によると、2014年3月の段階で特別養護老人ホーム待機者は52万2000人、現在の利用者数52万人と同等と発表されています。堅調な入所系施設に対し、デイサービス、ショートステイ、サービス付き高齢者住宅、有料老人ホームなどは、集客に苦戦を強いられている事業所も多いでしょう。まずはその理由を分析してみました。
地域に需要があるのか
事業所を設置している地域の要介護状態の高齢者数が高くなくては、利用に繋がりません。
内閣府の発表によると、要介護状態の約3割は施設に入所しているとのことから、地域に1万人の要介護状態の高齢者がいたとすると、約7千人が在宅サービスの対象と考えます。さらにその地域の福祉サービス数に照らし合わせ、事業所の定員数が要介護状態にある在宅生活者数を上回っていれば、あきらかに供給過多です。少ないパイの奪い合いに挑むか、他のエリアの進出を検討しなくてはなりません。
居宅介護支援事業所や地域包括支援センターの知名度を上げる
特に新規にオープンした事業所は、知名度が低いため、集客に苦戦を強いられます。高齢者に関する情報は、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターなどに集約されますので、それらとのパイプをつなぐことが不可欠です。エリア内の居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに挨拶をするのはもちろん、事業所の内覧に招く、定期的な訪問を行って事業内容や空室状況を知らせるなどの、地道な活動を続けなくてはなりません。
居宅介護支援事業所や地域包括支援センターとの関係はWIN WINである。
ケアマネージャーは、優良な事業所を紹介して利用者や家族に喜ばれる、事業所は地域から選ばれる施設として評価される。居宅介護支援事業所や地域包括支援センターとの関係はWIN WINでなければなりません。
ケアマネージャーが事業所に求めているもの
居宅介護支援事業所や地域包括支援センターなどのケアマネージャーが求めているものは、以下の3つです。
①タイムリーな情報
ケアマネージャーへの相談は突発的な案件が少なくないため、すぐに利用できるサービスの情報が求められています。毎週定期的に空室状況をFAXする、またはWEB上で確認できるなど、定期的に利用状況を提供することで紹介してもらえる確率が高くなります。
②迅速な対応
緊急性がある場合は、即日の利用を希望されることもあります。日頃から介護スタッフと連携して、いつでも利用してもらえる体制を整えておかなくてはなりません。
③適切なサービス
クレームは、ケアマネージャーに寄せられることが多いため、一度悪い評価を与えられた事業所を再度紹介してもらえる確率は低くなります。職員の体制は整っているか、サービスの質は保たれているかが重要となるのです。
利用率を気にする前にチェックするべきこと
利用率が上がれば、事業所の評判もこれまで以上に広がっていきます。良い評判だけでなく、悪い評判も急速に広がります。特に居宅系サービスは、他の事業所と比較されやすいので、十分に注意しなくてはなりません。かつて筆者が所属していた特養併設のショートステイ事業所の利用率が急激に低下したとき、このような問題が発生していました。
・利用相談や部屋の調整などが生活相談員一人に業務が集中していたため、適切に業務がこなせていなかった。
・介護職員の不足により基本的介護が精一杯で、清掃が行き届いていなかった。また、職員の少なさに、事故などの不安を持たれた。
利用率増加は、現場の体制確保が両立していなくては歪が起こります。一度失った信用は、なかなか回復しません。先を見るためにはまず地固めから始めましょう。
営業をアウトソーシングする
事業所の多くは、生活相談員に営業を担わせていると思いますが、彼らは福祉のスペシャリストであって、必ずしも営業スキルがあるとは限りません。思い切って介護施設の営業代行を利用してみませんか。営業活動は業者が担当し、サービスの質の向上を生活相談員が担うことで、営業とサービスの強化が図ることができることでしょう。
いまや介護はサービス産業です。福祉業界のみならず、マーケティング、宣伝方法、人員配置、サービス内容、営業方法など、他のビジネスから学ぶことはたくさんあります。事業所だけで解決しようとせず、専門のコンサルタント会社のアドバイスも積極的に利用するべきではないでしょうか。