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介護職員の98%は入居者から暴言や暴力受けている

施設における「入居者虐待」のニュースが報道される裏側で、高齢者による職員への暴言や暴力はあまり取り上げられることがありません。いつも笑顔を絶やさず、優しく話しかけるその裏側で、高齢者からの暴言や暴力、そしてセクハラを受けているのです。今回は、介護施設の現状を緊急報告します。

 

■入居者からの暴言・暴力を受けた人は98%

介護職の人材紹介サービス「介護のお仕事」(運営・ウェルクス)は、2016年7月10日、「介護職が受ける暴言・暴力」に関する実態調査の結果を発表しました。その結果、98%の人が「介護サービスの利用者から、暴言・暴力を受けたことがある」と回答。介護職員が我慢を続けながら仕事をしていることが浮き彫りになりました。

 

■修羅場と化している介護現場

高齢者施設には様々な人が入居しています。年を取ると全員が穏やかになると言うことはなく、むしろ認知症によって性格が誇張される、アルツハイマーなどにより理性をつかさどる前頭葉が委縮し、暴力的になることも少なくありません。施設職員の方に話を聞いてみました。

 

介護職員K氏

介護を拒絶されて叩かれることは日常茶飯事です。時には噛まれたり、引っかかれることもあります。認知症だから仕方がないと思ってはいますが、痛いし、「なんでこんな目に遭ってまで、この方のお世話をしなければならないんだろう」と思うことはあります。

 

介護職員H氏

男性入居者のTさんは、80代だと言うのに性欲が強くて困っています。排泄の介助をしていたら、突然私の頭をつかんで、自分の陰部に近づけようとするんです。もう怖くて、気持ち悪くて。仕事として介護をやらないわけにいかないのですが、それがストレスで退職も考えています。

 

介護職員M氏

入居者のOさんには、全員が毎日のように罵声を浴びせられています。介護していると、「お前らなんて、税金(介護保険料)で食っているくせに」とか、「俺の介護をしてるから、お前らは食っていけるんだぞ」と、横柄な態度を取られます。私も人間なので、心の中で「あんただって生活保護で暮してるだろう」「オムツしてるくせに偉そうに」と思ってしまいますね。

 

生活相談員Y氏

施設では身寄りのない方の金銭をお預かりさせていただいているのですが、とてもお金に執着している方がいて、私の顔を見るたびに「俺の金を隠している」とか、「俺の金を獲った」と叫ばれるのは困ります。施設内なら我慢できますが、ボランティアさんの前や、施設外に連れて行った時も泥棒扱いを受けるので、心底参ります。

 

■暴言・暴力の理由と対策を考える

入居者の暴言・暴力などには、いくつか理由があります。「叩く」などの介護拒否の場合は、認知症などにより、誰に何をされるのかを理解できず、自己防衛から攻撃することが考えられます。また家族から離れて暮らすことへの寂しさ、脳の萎縮による人格の欠如などもあるでしょう。理由からケア方法を見つけ出し、改善できることもあります。

 

■介護側に問題はないのか? は愚問

必ずこの類の話になると「介護する側にも問題があるのでは」と言い出す人がいますが、数々の現場を見てきた限りでは、介護側に問題がなくても、入居者の暴言・暴力はあります。生活相談員や介護の現場を経験せずに、施設長や管理者になった方にはイメージが付きにくいでしょうが、これが現実です。

 

■職員の保護は、入居者の保護でもある

筆者が施設の管理職だった時に、職員保護のガイドラインを作り、女性職員へのセクハラが著しいショートステイの利用者を、一時利用制限させていただいたことがありました。再三の注意にも関わらずセクハラが続いたため、我慢しきれなくなった職員が反撃に出ることも考えられます。両者を守るためには、やむを得ない決断でした。

今回執筆するにあたり、この問題に対応している施設を探しましたが、明確な対策を打ち出している施設は、ほとんど見当たりませんでした。どの施設でも起こっている問題が、問題視されていません。「昭和大学北横浜病院」では、ホームページに、「患者さんから職員への暴力・暴言等に対する当院の対応について」が表記されていますので、参考にしてはいかがでしょうか。