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ヒヤリハット報告書を定着させるための3段活用

介護現場では、ヒヤリハット報告書が事故を未然に防ぐためのツールとして活用されています。しかし「適切にヒヤリハット報告書が提出され、改善策が練られていますか」と問われたときに、自信を持って「はい」と言える事業所が、どれだけあるでしょうか。今回は、ヒヤリハット報告書について、「必要性」「提出されない理由」「ヒヤリハット報告書を定着させる」の3点に絞って説明します。

 

ヒヤリハット報告書の必要性

「間違って他の人の薬を飲ませてしまうところだった」「転びそうなところを間一髪で抱き留めた」など、介護現場では高齢者の認知症状や、職員のミスによってヒヤリとする場面があります。日常的な光景なため、すぐに忘れてしまう出来事かもしれませんが、もしその場で気づかなければ、重大な事故になっていたかも知れません。事故を未然に防ぐためには、個々が経験したヒヤリハットの情報を共有し、傾向や原因を明らかにし、十分な対策を取る必要性があります。

 

慢性的な事故の多さ

筆者が以前に務めていた高齢者施設(特養)は、とても転倒事故の多い施設でした。骨折に至らなくても打撲は毎日のようにあり、協力医の整形外科からも「原因を追究しろ」と指導を受ける始末。記録を見ると、事故後ミーティングは行われているものの、「こまめに見守る」など、抽象的な対策しか記載されていず、ヒヤリハット報告書に至っては、ほとんど提出されていません。そこで提出されない理由を調べたところ、次のようなことが分かりました。

 

提出されない理由

高齢者がふらつくことは日常的であり、特別なことに感じなかった。

普通に歩いている人が歩けなくなれば「異常」ですが、普段からふらついていれば、それが普通と言う考えのようです。その先の「転倒」「打撲」「骨折」と言う先読みができていなかったようです。

 

ヒヤリハット報告書の事例だと気づいていたが、書くのが面倒だった。

介護の業務は多岐に渡り、記録物一つとっても、日常の様子や、排泄、排便、食事量、健康状態など膨大にあります。1枚のヒヤリハットを書くのに10分必要としても、3人分だと30分。業務外で行うと、30分帰りが遅れる上にタダ働き。これでは面倒と思うでしょう。

 

文章を書くのが苦手なのでスルーした。

気持ちはあっても文章は苦手。提出しても書き直しを求められるので、見なかったことにする。確かにせっかく書いたヒヤリハット報告書が、赤ペンを入れられて返却されれば、モチベーションも下がるでしょう。

 

事故に至っていないので、よいと思った。

ヒヤリハット報告書を退出したら、「その場にいたのに何をしていたの!」と叱責されることを恐れて書かなかった、事故に至らなかったので問題ないと思ったと言う声も聴かれました。また、事故を起こした当事者は犯罪者扱いされると思っているようで、ヒヤリハットか事故か微妙な出来事には、「ヒヤリハットは書くが、事故報告書は書かない」と強く拒否する人が見られました。

 

ヒヤリハットを定着させるためには

「転倒事故が増えると、家族の信用が低下して法人の評価も下がる」など、施設を擁護する発言をすれば、「面倒が起きれば辞めればいい」と思う人も少なくありません。「これからは、施設ではなく職員個人が訴えられることがある時代」と言うのも藪蛇で、「安月給なのに責任ばかり押し付けられてたまるか」と反発されることでしょう。そこで筆者は、次のような対応を取りました。

 

事故に繋がりそうだと思う出来事を必ずヒヤリハットで報告

何が危険なのかを意識づけるために「事例を作るために、些細なことでも危険と思ったことは必ず報告して」と言って、積極的に書いてもらうようにしました。

 

勤務時間内に報告書を作成する

勤務時間外、しかもサービス残業でヒヤリハットを書いたところで、やっつけ仕事にしかなりません。就業時間内に30分程度、ヒヤリハットを書く時間を確保しました。

 

文章の指導を行う

赤ペンを入れて返すのではなく、書き方の見本をつけて書き直しをお願いしました。また、筆者は教員経験があるので、ヒヤリハット報告書は、5W1H(いつ、だれが、どこで、なにを、なぜ、どのように)をひな型にすれば書きやすいと言うことを何回か講義しました。

 

事故に至った時のことを考えてもらう

「事故に至らなければ大丈夫」ではなく、「事故に至ったらどうなのか」を考えてもらいました。もし自分のミスで亡くなるようなことがあったら、その事実を一生受け止めて生きていかなければならない。たとえ介護を辞めたとしても、ずっと心に残ってしまう。そんな心のしこりを残してほしくないと伝えました。

 

ヒヤリハットは、ただの記録ではありません。危険回避のためのツールです。ハインリッヒの法則によると、「重大事故の陰に29倍の軽度事故と、300倍のニアミスが存在する」ということを示しています。事故を防ぐには、まずヒヤリハット報告書から。施設全体で認識を共有しましょう。

以下に、文章が苦手な人でも書きやすい、誰が読んでも読みやすいヒヤリハット報告書の書き方をまとめています。詳しくは資料をご覧ください。

 

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