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中小企業は「年収制」でいこう

給与形態には、時給制、日給制、月給制、年俸制などがあります。私が提案するのは「年収制」です。こんな制度は聞いたことがないはずです。私の造語だからです。

年俸制でないことに注意が必要です。年俸制とは、年1回、賞与も含めて年単位で決定する給与形態です。一方、年収制とは、社長が月給×12カ月分と、賞与は夏冬で1.5カ月分ずつ、合計で月給×15カ月分程度を払いたい、と決めます。これを決めるときには、会社に最適な労働分配率(人件費/付加価値)は意識して行います。賞与引当金もそれに基づき月次で引き当てます。しかし、予定通りの業績でない場合は、賞与が2.5カ月分になったり、2か月分になったりします。賞与引当金を戻し入れて利益調整を行うわけです。

ここで重要なのは、3か月分払うつもりでいて、2か月分になるのは良いとしても、賞与が1か月分や寸志程度になるのは、経営のかじ取りとして避けたいということです。もちろん、勤務成績により査定によって、結果として少額の賞与額となることはありえます。

賞与は社員にとっては生活給で、生活費にバッチリ当て込んでいます。つまり、賞与を年間平均1.5~2か月分以上出せない経営では人が定着しないのです。特に若い人は本当にサッサと辞めていきます。その場合、正社員が多い、又は正社員の人数の割に付加価値(1人当たり付加価値月間90万円以上)が稼げていないということですので、抜本的な経営革新や労務構成の見直しが必要です。

 

逆に言えば、年間平均3か月分以上出せる場合は、決算賞与として支給することとします。その決算賞与も必達営業利益目標の超過分の半額を支給する、営業利益ROA目標の●%を支給するなどが良いと思います。それはなぜかといいますと、夏冬の賞与で加算すると、優秀な会社ほど、それが「当たり前の生活給」となってしまい、少し下げるとたくさんの文句が出るからです。前年貰った額など忘れてしまい、総務に「住民税が高いではないか」と言ってくる始末です。だから、ルールに基づき、ゼロか100万円などの決算賞与で刺激をするのです。

ここで必ず議論になるのが、何の●か月分かということです。私の答えは、その社員に払われている「実力給見合いの給与部分」を基礎とすべきだということです。その多くは、基本給、能力給、役職手当などになろうかと思います。もし、年功要素が強く、基本給が割高になっており、基本給を基礎とすると、賞与が割高になる社員がいれば、賞与の算定にあたっては基本給の上限を設けるか、基本給の一部を「調整手当」や「基本給2」などに振り替えることです。

 

もう一つ重要な点があります。これからは残業代をキレイサッパリ払う時代です。また、多額の定額残業代を設定していたら、求人ができない時代になります。したがって、定額残業手当を設定する場合、多くても月間45時間分、理想は20時間分程度にしたいものです。そうすると、残業代が変動分としてたくさん支給される人も出ます。ココはコントロールできません。その残業代が稼ぎに結びついていれば良いのですが、そうでない場合は、賞与で調整したい、というのがオーナーのニーズです。非効率な残業をして残業代が多い社員がいれば、賞与をマイナス調整する、逆に残業をせずとも、効率よく成果を出している社員がいればプラス査定を行います。

 

まとめると、

① 労働分配率を意識し、月給(算定基礎給)×3か月分(平均)を払う経営計画を立てる

② 3か月分の範囲で査定を行い、下は1.5カ月から上は4.5カ月分程度とする

③ 賞与の算定基礎給を実力給見合い部分とする

④ 業績が振るわない場合でも、賞与は年間最低か1.5~2か月分以上払う経営を目指す

⑤ 業績好調で年間3か月分以上払える場合は、一定のルールに基づき決算賞与で払う

⑥ 残業代が成果と結びついているかを年収ベースで確認し、賞与で調整する

賞与は利益還元であるというのは本当でもあり、嘘でもある。賞与は生活給(ジェットコースター型賞与はいや)であり、経営にとっては収益ダウンの際のバッファーあり、貢献度に見合う年収調整弁であり、または、社員が業績意識をもってもらうためのメッセージでもあるのです。

年収制とは賞与の払い方の工夫です。賞与は社長の裁量が大きい。だから賞与の払い方は経営そのものです。十分に工夫してください。

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