北海道では高齢化が進み、夕張市の48.9%をトップに、179市町村すべてが超高齢社会に突入しています。厚生労働省は、北海道では2025年までに1万2千人以上の介護士が必要と試算していますが、募集をかけてもなかなか人が集まらず、どこの事業所でも慢性的な人材不足な状態が続いています。その対策として、現在、道内の3つの法人では4つの施設でEPAに基づく外国人介護福祉士候補者11人(いずれもフィリピン人)を受け入れています。果たして外国人介護士は人材不足の救世主となりえるのか。
EPA外国人介護福祉士候補者の受け入れ鈍化
道央にある社会福祉法人では7年ほど前から道内でいち早く、EPAの外国人候補者を受け入れています。現在研修を受けているのは、4年前にフィリピンから来た女性2名。彼女たちは日本で働くことを希望し、2017年1月に行われる介護福祉士国家試験合格を目指して勉強しています。しかし現状の制度では不合格の場合、フィリピンに帰らなくてはなりません。この法人では過去に4人のフィリピン人を受け入れてきましたが、1人は国家試験に合格したものの、最終的には全員が帰国してしまいました。
外国人介護福祉士候補者には、日本人職員と同等の賃金を支給、それとは別に往復の旅費や住まいの用意に年間1千万円もかかるといいます。しかし不合格となると、これまでかけた労力もお金も水の泡。例え合格したとしても、異国で暮らす寂しさからホームシックになったり、年老いていく両親が心配で帰国することも想定されます。そのような理由もあり、長らく外国人介護士候補者の受け入れは鈍化していました。
改正法成立で外国人介護福祉士増加の期待
近年、改正法成立によって外国人介護福祉士候補者の受け入れに動きがあります。日本介護福祉士養成施設協会(東京都千代田区)によると、例年20人ほどしか集まらなかった全国の専門学校など国指定の介護福祉士養成機関(約400校)の入学者数が、2016年には257人(全入学者の3.5%)に増加。
今後は国指定の養成機関で2年以上学んで卒業した外国人が介護福祉士として在留資格を得られるようになるため、札幌市内で医療福祉・ビジネス系など、多彩な専門学校を有する学校法人では、廃止していた日本語学科を「外国人留学生対象の新設学科」として復活させ、介護系専門学校において日本語教育を行うなど、スケールメリットを生かした展開が行われています。
前述の社会福祉法人では、受け入れを検討している他の法人に対し、「フィリピンの現状や介護人材」「フィリピンにおける日系人の状況と人材活用」、「受け入れ法人におけるEPA介護福祉士候補受入れの取り組み」など、現場での取り組みを通じて得たノウハウに基づいたセミナーを実施。また、各法人の支援担当者と全候補者・合格者が集う行政主催の意見交換会が開催されるなど、精力的な取り組みが行われています。
外国人介護士を定着させるには
永住を決意しても、日本人との労働条件に違いを感じたり、家庭の事情やホームシックなどで帰国する人が多いようです。日本人同様に責任のあるポジションを用意してキャリアパスを示したり、家族を呼び寄せて一緒に暮らせるようにするなど、平等な労働条件を与えるとともに、異国で働くためのケアを行う必要があります。
社会保障が充実しているヨーロッパ諸国においては、すでに外国人介護従事者の受け入れが行われていますので、今回の政策が失敗し、日本に来るメリットがないと判断された場合、各国の人たちは、ヨーロッパに流出するかも知れません。「外国人の撤退により、介護従事者が一気に減少」などということにならないよう、外国人介護士の育成と並行して、日本人の育成にも力を注いでいかなくてはならないでしょう。