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公益性をアピールしてガッチリ人材確保 静苑ホームの採用戦略

みずほ情報総研の調査により、全国の4分の1の特別養護老人ホームで空室が生じていることが分かりました。2015年4月の介護保険法の改正により、特養の入所対象者が介護度3に引き上げられたことや、同年8月に一定の所得がある場合、自己負担割合が2割となるなどの制限が設けられたこと、そして介護職員の不足によって全室オープンできない施設があることが要因ではないかといわれています。

北海道・江別市で40年もの歴史を持つ「社会福祉法人 北海道友愛福祉会」の中核施設「特別養護老人ホーム静苑ホーム」では独自の人材確保に取り組んでいます。詳細について生活相談副主任・川岸 正和氏にお伺いしました。

 

北海道友愛福祉会及び静苑ホームの概要

北海道友愛福祉会は昭和48年2月に江別市に設立され、特別養護老人ホーム静苑ホームほか老人保健施設、盲人養護老人ホーム、医療機関、ケアハウス、保育園など複数の施設を運営しています。江別市は札幌市に隣接し、人口は119,092人、高齢化率は27.6%と北海道179市町村中161位と低く、多くの人が札幌に通勤するベッドタウンとなっています。

静苑ホームは昭和48年12月に事業を開始。現在は長期入所150名、短期入所15名、デイサービスやホームヘルパーステーション、居宅介護支援事業所も併設する大型施設です。

静苑ホームの料金表を見ると、夜勤職員配置加算、日常生活支援継続加算、看護体制加算Ⅱなど、潤沢に職員を配置している加算や、サービス提供強化体制加算、認知症専門ケア加算など、有資格者を多く配置している加算が目立ちます。静苑ホームでは人材確保のために次のような取り組みを行っています。

 

ガチャガチャを楽しみに小学生がボランティア

静苑ホームには、午後や休日になると近くの小学生がボランティアにやってきます。5回ボランティアを行うとコインをひとつ貰うことができ、館内に設置された「ガチャガチャ」を回すことができるのです。

小学校で福祉教育のための出張授業を行うこともあり、「子供のころから高齢者福祉を身近に感じてもらい、いずれその中から興味を持って北海道友愛福祉会で働いてくれる人がいれば嬉しいです」と川岸氏はいいます。

兄貴・姉貴が高校生に介護を語る

汚いやカッコ悪いだけでなく、その先にある魅力も伝えたいという趣旨から、高校生に向けたオープンカフェを実施。高校生と年齢の近い職員が、自分たちの仕事について語っています。静苑ホームでは介護職員も名刺を持ち、対外的な対応もできる能力を育成しています。自分の業務を相手に伝えることで、介護士としての誇りと責任が生まれるようです。

 

実習生を就職に導く適切な指導

介護士不足が叫ばれる前から多くの実習生を受け入れ、適切に育成することで「就職したい」と思ってもらうような施設づくりを行っていたといいます。それを裏付けるように筆者が勤務していた専門学校でも静苑ホームは「親切に指導してくれる優良施設」と評判でした。すでに実習から就職に至って主任クラスになっている方もいますし、すでに働いている先輩が、母校の後輩をスカウトすることもあるようです。

返済無用・就職の強制なしの奨学金制度

市内在住の学生には、法人内の事業所で年に10日間程度のボランティアを行うと、返済義務のない奨学金を毎月15,000円支給するという独自の奨学金制度を開設しています。しかも地域の福祉人材を増やすことを目的としているため、同法人への就職義務はないというから驚きです。

 

まとめ

学校で教えている「介護福祉」が、就職したとたんに「介護ビジネス」になってしまうようでは、戸惑ってしまうことでしょう。静苑ホームは社会福祉法人はとしての公共性を維持しながら事業展開を行っています。結果として離職が少ないため潤沢な職員配置が可能になり、加算対象を増やすことで収入に繋げているといいます。他の事業所においても参考にしてはいかがでしょうか。