認知症高齢者の徘徊対策・離設防止策まとめ8選

認知症の徘徊から行方不明になる高齢者は年間10,000人超、徘徊は交通事故、ケガ、凍死、溺死など、様々な危険が想定され、施設で起きた死亡事故は施設側の過失割合が高くなる傾向にあります。一度起こってしまった事故は、施設と経営者、従業員に大きな苦難をもたらします。

厚生労働省によると、認知症患者は2025年に700万人を突破、実に65歳以上の5人に1人が認知症と予想されています。
介護施設の存続を左右するとも言ってよい認知症の徘徊対策について、まとめてみました。

 

離設防止のために

1)離床を素早く探知する

離設しないためには、まずベッドから離れたタイミングで探知すること。認知症高齢者の離床をセンサーで探知する方法として、大きく分ければ次の3つのタイプがあります。

 

①マットセンサータイプ

マットタイプの離床センサーとは、その名の通りベッド脇にセンサーマットを敷くタイプです。取り付けが簡単、手軽に導入できるのがメリットです。

高齢者の方がセンサーマットを踏んだり、ベッドからマットの上に落ちたりした際に反応してナースコールでお知らせします。
ベッドから離れると転倒リスクがある場合、センサーが感知してから駆けつけていては、既に転倒している恐れがあります。

 

②ベッドセンサータイプ

ベッドのマットレスの上、もしくは下にセンサーを敷く方法です。
体重がセンサーにかかっていると正常と判断し、センサーから離れると、ナースコールに連絡が入る仕組みです。

 

ベッドセンサーの場合、「(寝返り等で)誤報が多い」「こわれやすい」等の問題点を指摘されて来ましたが、最近は技術革新が進んでいます。

株式会社バイオシルバーのベッドセンサーは、その人の重さではなく、心拍や呼吸等の生体信号の有無で離床を感知、さらに赤外線センサーにてダブルで判定、寝返り等での誤報が少ないのが特徴です。

株式会社バイオシルバーのベッドセンサー

 

 

2)施設の外に出さない

次のタイミングは施設の外に出さないことです。

③徘徊防止カギ

通常、カギは外部からの侵入を防ぐものですが、徘徊防止カギは内側からかけるカギです。
簡単に取り付けられる補助鍵から、暗証番号を入力するものや電子鍵まで種類は豊富、本人の意思では外へ出られないようになっています。

しかし、入居者が自分の意志で開閉できない建物や部屋に隔離することは拘束にあたらないか、議論が分かれる所です。

 

④徘徊探知システム

徘徊探知システムとは、対象となる方にタグを持って頂き、タグから電波が発信されていて、出入口に設置してある受信機が電波を受信するとお知らせするものが一般的な仕組みです。

徘徊探知システムの問題は、入居者がタグを常時身につける必要があること。
当たり前ですが、タグが無ければ受信機は何の意味も持ちません。
逆に常に身につける必要があるため、タグを紛失することや壊してしまうリスクが高くなります。失くしたから簡単に買い替えるほどには、安価でないのが悩ましい所です。

 

見守りカメラ

施設の出口に見守りカメラを設置すれば、人の出入りをカメラが見守り、スマホを使ってリアルタイムで動画確認することができます。
しかしこれでは、全ての人にセンサーが反応することとなり、人の出入りが激しい施設には不向きです。

LYKAON株式会社の顔認証徘徊防止システムは、見守りカメラと顔認証システムをつなぎ、あらかじめ登録された徘徊症状のある入居者のみ顔認証で探知、施設からの外出を未然に防ぎます。最大の特徴は顔認証のため、タグを入居者が持つ必要のないことです。

 

徘徊後の早期発見のために

次は施設の外に出た高齢者を早期に発見するための方法です。

 

⑥携帯電話を使った居場所探知

GPS機能のついた携帯電話を利用すると、携帯電話会社から追跡サービスを受けることができます。登録した携帯端末の地図上にその居場所を知らせてくれます。

ただし徘徊者が携帯電話を持って出るとは限りませんし、途中で落としてしまう事も考えられます。むしろ認知症高齢者の場合、携帯電話はおろか、財布や何も持たずに出てしまう事が考えられるので、携帯電話で発見できる確率は高くありません。

 

⑦GPS装置を使った居場所探知

携帯電話の替わりに専用のGPS装置を持たせ、居場所を探知する仕組みです。
セコムはGPS装置を使った、認知症高齢者の見守りサービスを始めました。家族から要請があれば、セコム緊急対処員が全国2,800ヶ所の拠点から駆けつけるサービスです。

こちらも携帯電話同様、GPS装置を常に持たせることが重要ですが、株式会社ゆめゆめらいふは、GPS装置を靴の中に入れました。認知症の方であっても、靴を履くことは忘れないとのデータがあるからです。

 

⑧身元照会サービス

センサーや介護ロボットを導入しても、徘徊事故が起こった時に捜索するのは人間です。
早朝や夜間など勤務する職員が少ない時間帯でも対応できるよう、あらかじめ職員の緊急連絡網は必要です。
実際には、初動から30分経っても見つからない場合は、警察や消防、地域住民と連携を取りながら進めていくことになります。もし事故が起こった場合の連絡体制や捜索組織など、事前に準備すべき事は案外多いです。

株式会社コラントッテのCSS(コラントッテ・セーフティ・システム)は、あらかじめ登録した施設・管理者の自宅・高齢者の家族宅等へ、万が一の場合24時間365日知らせることができる身元照会サービスです。
認知症高齢者が身につける専用ネックレスのペンダントトップ部分に、登録ID番号と、CSS管理センターのフリーダイヤルが刻印、もしもの際の捜索体制をシステムを利用しながら構築しておきます。CSSには個人賠償保険が最大3億円付帯されているため万が一の場合も安心です。

CSS(コラントッテ・セーフティ・システム)

 

入居者が施設外に出て事故または死亡した場合、損害賠償責任を求められることがあります。

捜索事故があった場合、再発防止に、職員会議などで問題提起して全員に周知、原因の究明と対策を講じることが重要です。

また訓練を日頃から行い、マニュアルどおりに捜索できるのか確認しておくことも重要でしょう。

 

タスケア(旧:介護経営)「高齢者介護施設のための入居者捜索マニュアル」は、こちらからダウンロードできます。

 

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