「羊蹄山ろくケアライセンス制度」まもなくスタート

北海道・羊蹄山ろくの高齢者福祉施設で構成する「羊蹄山ろくケア向上委員会」では、介護施設の職員が協働して独自のケアライセンス制度を創設。ケアの向上を目指しています。

TASUCAREでは、地域の介護施設が一致団結!独自制度でケア向上[羊蹄山ろくケア向上委員会]と題し、ケアライセンス制度の目的とシステムや、本格始動のための最終調整までを紹介しました。あれから半年が経過し、ケアライセンス制度はどこまで進んでいるのでしょうか。

まだ雪深いニセコ町を訪れ、ケア向上委員会委員長である福山典子氏(ニセコ町 ぐる~ぷほ~むきら里管理者)に話を伺いました。

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ケアライセンス制度創設までのプロセス

羊蹄山ろくには、倶知安町、ニセコ町、喜茂別町、京極町、蘭越町、真狩村、留寿都村の7つの町村があり、それぞれに高齢者福祉施設があります。
この地域に住む高齢者は、倶知安町のショートステイが満室の場合は、ニセコ町の施設を利用するなど、町村をまたいで利用することがあるものの、施設間でのケアの内容が異なることが課題とされていました。

そこで羊蹄山ろくケア向上委員会において、山ろく一体のケアを統一する案が浮上。約5年以上の歳月をかけて、統一した介護を学ぶための「ケアライセンス制度」が創設されました。

 

数々の障壁を越えて

2016年7月の取材では、「評価者のスキルを上げ、数ヶ月中にケアライセンス制度が開始できるように準備をしています」とのことでしたが、現状はスムーズに行かないことも多かったようです。それについて福山委員長は、このように話しています。

テキストなどを作る会議は、毎度同じメンバーが集まれるわけではないため、違うメンバーが参加すると、「こんな話になっていましたっけ?」など、都度の確認やすり合わせが必要でした。

施設によって介護方法や考え方も異なるため、論点がずれた意見が飛び交うこともありました。どんな方法で介護していても、どんな道具を使っても“目的”は同じ。方法論ではなく、介護の目的を重視してもらったといいます。

 

新入職員にもわかりやすいツール

ケアライセンス制度のテキストやDVDは、すでに新入職員の研修に利用されています。新入職員はシーツを敷く際に「しわがあると見栄えが悪い」ということはわかっていても、 「しわが褥瘡などの原因になる」という発想に結び付きません。ベテランであれば記載する必要がない内容も積極的に盛り込みました。これまで気づかなかった介護の意図が理解できたと好評だったそうです。

完成したテキストを拝見させていただくと、重要性によって文章が色分けされているだけでなく、状況に応じた声のかけ方も掲載されています。これについては、「いきなり介助をするのではなく、相手を尊重する言葉がけや、これから何をするのかを説明することが必要」といいます。この言葉の選び方に時間がかかりました。

 

評価基準及び評価方法

最終段階で最も頭を悩ませたのが評価方法です。技術や理解度をどう評価するのか。それが決まらず、ケアライセンス制度の実施は延期を余儀なくされました。何度か議論が繰り返され、ようやく下記のように決定しました。

1. 評価基準は場面を設定して実技試験をすることが難しいため、「立ち上がりの確認を行っているか」「利用者の機能を判断し、適正な介助を行っているか」など、個人の尊重と安全性を重視。〇△×方式で介護の意図の理解度を評価する。
2. 施設内で自己評価と内部評価を行い、最終的に他の施設の評価委員による外部評価に合格すれば、ケアライセンスが授与される。

外部評価については、「外部評価を行うことで、施設内のパワーバランスによる不平等感を払拭できるし、他の施設のケアについて適正かどうかを話し合うこともできる。こうして問題を提起することで、山ろく一帯のケアが統一されていく」といいます。

 

自分で考えられる職員を育てたい

福山委員長は新人の頃、物品の準備が不十分だったため、利用者を転倒させてしまい、それが今でも辛い記憶になっているといいます。「ケアライセンス制度は、ケアの方法ではなく、ケアの目的を理解するための制度です。自分で考えられる職員を育てたいですね」と、希望を聞かせてくれました。

羊蹄山ろくのケアライセンス制度は、ようやく準備が整いました。3月から評価者のケアライセンス取得を開始。順次、一般職員の評価を行っていく予定です。今後の羊蹄山ろく向上委員会の展開が期待されます。

 

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