高齢者施設での介護事故や虐待が、連日のように報道されています。原因は調査中なので虐待とは断定できませんが、今年8月に岐阜県の介護老人保健施設で連続して5人もの入居者が死傷した事故や、神奈川県川崎市で起きた職員が入居者をベランダから突き落とした事件も介護業界を震撼させました。なぜ不審な事故や虐待はなくならないのか。実体験をもとに検証しました。
密室性が温床となる
排泄介助、入浴介助など、介護の現場は入居者と介護者が2人きりになる機会が多くあります。信頼関係が築かれていれば安心して介護を任せることができますが、そうでない場合、入居者は恐怖以外の何物でもありません。
ある介護施設での話です。女性入居者が「今日の夜勤はどなた?」と聞いてきたので、夜勤者の名前を教えると震え出しました。「どうしました?」と尋ねたところ、その職員は失禁してもなかなかオムツを変えてくれないうえに、汚れたオムツを顔に差し出して「こんなに汚して」と悪態をつくそうです。そのため、その介護職員が夜勤の時は、失禁しないよう水分を控えていると教えてくれました。
その方は、すでに帰る家がなく、介護施設で生きていくしかないことを理解していました。介護職員に対し、「汚してすみませんって、謝ることしかできませんでした」と辛そうです。当時生活相談員だった筆者は、施設の問題として提起しましたが、ある事情によって「なかったこと」にされてしまったのです。
職員の質がモラルを低下させる
介護施設はどこも人手不足。せっかく採用しても次々と辞めてしまうため、常に募集をかけなくてはなりません。介護保険制度導入前は、措置制度により運営されていたため、給与水準は高く、ある程度志が高い人材が集まりましたが、現在では他に仕事がない人たちの受け皿になっているのが現状です。まともに履歴書が書けない、面接の受け答えができない人でも、採用しているところは少なくないでしょう。ここが問題なのです。
介護の仕事は安い給料で重労働です。これまでは「やりがい」や「まごころ」などの言葉に置き換えて、熱意のある人を引っ張ってくることができましたが、それも難しくなっています。もちろん仕事である以上、それにふさわしい報酬を得るべきですが、それもままならず。結果として「他に仕事がないから仕方なく介護をする」と言う人たちが増えています。そのため、仕事のスキルも「それなり」になることは否めません。中にはこんな職員もいました。
筆者が管理職として介護施設に勤務していた時の話です。ある介護職員が虐待を行っていると、内部告発がありました。入浴介助中に入居者の入れ歯を浴槽のお湯で洗って口にはめているというのです。本人に確認すると「確かにやりましたが、何が悪いんですか?」と不快感をあらわにしています。彼の言い分によると「自分がそうされるのは嫌だけれど、他人にするのは悪いこととは思わなかった」と言います。もう会話にもなりません。
彼らにとって尊厳などと言うものは一切なく、入居者は「家で面倒を見てもらえない哀れな人」「自分では何もできないくせに、偉そうに口を出す人」であり、少しぐらい痛めつけた方が従順に従うようになる存在と考えているようです。ショッキングな話ですが、介護を行う者の中には、少なからずそうした感情を持っている人がいて、それが数々の事件に発展していると考えられます。
虐待をなくすためには
これらは人手不足のために職員の質を大幅に落とした結果です。しかし問題を提起しても、介護職員は軽い注意だけで済まされました。理由は二つ。一つは人手不足により「辞めてほしくない」事業所側と「何をやっても許される」と高を括る介護職員の悪しき関係性のため、二つ目は「法人本部に監督責任を求められたくない」という管理者の保身のためです。このようなことを続けている以上、介護事故や虐待などなくなるわけがありません。
ある施設では介護職員にも名刺を作り、家族などに渡す、制服を廃止し私服で介護するなど個性的な対応を行っているところもあります。これにより集団の中の一人にすぎなかった介護職員にスポットがあたり個性が現れ、自分の仕事に対する責任感が生まれるそうです。人手不足であっても、危険要素を感じた人は採用しないという勇気も必要です。売り上げや回転率も大切ですが、施設の信用を失ってしまっては何にもなりません。「介護は人がすべて」という考えで、取り組んでみてください。
採ってはいけない人を見分ける
どこでも事故や虐待を引き起こす、先天的なトラブルメーカーも存在します。また過度なストレスにより心身に異常を来たす場合も、このような人材を採用すると企業は大きなリスクを抱えることになります。ところが面接では、そのような兆候を見極められなかったという事も。心理学をベースに採ってはいけない人材を見極める不適性検査、3000円(5名分)の試用クーポンはこちらから申し込めます。