平成30年1月26日、社会保障審議会介護給付費分科会にて、2018年度介護報酬改定におけるサービス毎の改定事項が示されました。
今回は介護老人保健施設サービスの改定事項を紹介します。
1.【見直し】在宅復帰・在宅療養支援機能に対する評価
介護老人保健施設の役割が在宅復帰・在宅療養支援であることをより明確にするため、報酬体系の見直しを行います。
ア 従来型の基本報酬については、一定の在宅復帰・在宅療養支援機能を有するものを基本型として評価することとします。
イ 在宅復帰率、ベッド回転率、退所後の状況確認等に指標を用いて在宅復帰・在宅療養機能を評価しているが、これらに加え、入所後の取組やリハビリテーション専門職の配置等の指標も用いることでさらにきめ細かい評価を行います。
ウ 現行の在宅強化型よりも在宅復帰・在宅療養支援をより進めている施設については、更に評価することとします。
エ 退所前訪問指導加算、退所後訪問指導加算、退所時指導加算については、介護老人保健施設の退所時に必要な取組として基本報酬に包括化します。
オ ただし退所時指導加算のうち試行的な退所に係るものについては、利用者ごとのニーズによって対応が異なることから、試行的退所時指導加算として、評価を継続することとします。
単位数
基本報酬について(多床室の場合)
在宅復帰在宅療養支援機能加算について
在宅強化型
算定要件等
在宅復帰・在宅療養支援等指標
下記評価項目(①~⑩)について、項目に応じた値を足し合わせた値(最高値:90)
2.【見直し】介護療養型老人保健施設の基本報酬等
介護医療院と介護療養型老人保健施設について、「療養型」及び「療養強化型」の報酬を「療養型」に一元化し、報酬体系を簡素化します。
ただし「療養強化型」で評価されていた一定の医療処置及び重度者要件については、療養体制維持特別加算において別に評価するとともに、当該加算の期限をなくし、質の高いケアを評価します。
単位数
介護療養型老人保健施設の基本報酬について(多床室の場合)(単位/日)
療養体制維持特別加算について
算定要件等
●療養体制維持特別加算(Ⅱ)(新設)
入所者のうち、喀痰吸引若しくは経管栄養が実施されたものが20%以上及び著しい精神症状、周辺症状若しくは重篤な身体疾患又は日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、専門医療を必要とする認知症高齢者の割合が50%以上。
*療養体制維持特別加算(Ⅰ)との併算定可
3.【新設】かかりつけ医との連携
多剤投薬されている入所者に処方方針を介護老人保健施設の医師とかかりつけ医が事前に合意し、その処方方針に従って減薬する取組について、診療報酬改定における対応を鑑みながら、必要に応じて評価することとします。
単位数
[算定要件等]
●かかりつけ医連携薬剤調整加算 (新設)
次に掲げるいずれの基準にも適合する入所者に対し、当該入所者に処方する内服薬の減少について退所時又は退所後1月以内に当該入所者の主治医に報告し、その内容を診療録に記載した場合は、当該入所者1人につき1回を限度として、当該入所者の退所時に加算します。
イ 6種類以上の内服薬が処方されており、当該処方の内容を介護老人保健施設の医師と当該入所者の主治医が共同し、総合的に評価及び調整し、当該入所者に処方する内服薬を減少されることについて当該介護老人保健施設の医師と当該主治医が合意している者。
ロ 当該合意された内容に基づき、介護老人保健施設の医師が、当該入所者に処方する内服薬について、入所時に処方されていた内服薬の種類に比べ1種類以上減少させた者。
ハ 退所時において処方されている内服薬の種類が、入所時に比べ1種類以上減少している者。
4.【見直し】入所者への医療の提供
所定疾患施設療養費について、介護老人保健施設で行うことのできない専門的な検査が必要な場合には医療機関と連携する等、診断プロセスにかかる手間に応じた評価とします。
また、在宅復帰率等の算定に際し、配慮することとします。
[単位数]
[算定要件等]
<現行>
① 診断、診断を行った日、実施した投薬、検査、注射、処置の内容等を診療録に記載していること。 ② 所定疾患施設療養費の算定開始年度の翌年度以降おいて、当該施設の前年度における当該入所者に対する投薬、検査、注射、処置等の状況を公表していること。
<改定後>
●所定疾患施設療養費(Ⅰ)
同上
●所定疾患施設療養費(Ⅱ)(新設)
① 診断、診断を行った日、実施した投薬、検査、注射、処置の内容等を診療録に記載していること(協力医療機関等と連携して行った検査等を含む)。
② 所定疾患施設療養費の算定開始年度の翌年度以降おいて、当該施設の前年度における当該入所者に対する投薬、検査、注射、処置等の状況を公表していること。
③ 医師が感染症対策に関する研修を受講していること。
5.【新設】排泄に介護を要する利用者への支援に対する評価の創設
排泄障害等のため、排泄に介護を要する特別養護老人ホーム等の入所者に対し、多職種が協働して支援計画を作成し、その計画に基づき支援した場合の新たな評価を設けます。
[単位数]
[算定要件等]
●排せつ支援加算 (新設)
・排泄に介護を要する利用者のうち、身体機能の向上や環境の調整等によって排せつにかかる要介護状態を軽減できると医師又は適宜医師と連携した看護師が判断し、利用者もそれを希望する場合、多職種が排泄にかかる各種ガイドライン等を参考として、
・排泄に介護を要する原因等についての分析
・分析結果を踏まえた支援計画の作成及びそれに基づく支援
を実施することについて、一定期間、高い評価を行う。
6.【新設】褥瘡の発生予防のための管理に対する評価
入所者の褥瘡発生を予防するため、褥瘡の発生と関連の強い項目について、定期的な評価を実施し、その結果に基づき計画的に管理することに対し新たな評価を設けます。
[単位数]
[算定要件等]
●褥瘡マネジメント加算 (新設)
①入所者全員に対する要件
モニタリング指標を用いて、施設入所時に評価するとともに、少なくとも3月に1回、評価を行い、その評価結果を提出すること。
②①の評価の結果、褥瘡の発生にかかるリスクがあるとされた入所者に対する要件
・関連職種の者が協働して、入所者ごとに褥瘡管理に関する褥瘡ケア計画を作成すること
・褥瘡ケア計画に基づき、入所者ごとに褥瘡管理を実施すること
・①の評価に基づき、少なくとも3月に1回、褥瘡化計画を見直すこと。
7.【新設】外泊時に在宅サービスを利用したときの費用の取扱い
入所者に対して居宅における外泊を認め、当該入所者が、介護老人福祉施設により提供される在宅サービスを利用した場合は、1月に6日を限度として所定単位数に代えて1日につき一定の単位数を算定する。
[単位数]
[算定要件等]
・外泊の初日及び最終日は算定できません。
・外泊時費用を算定している際には、併算定できません。
8.【見直し】口腔衛生管理の充実
口腔衛生管理加算について、対象者の拡大を図るため、以下の見直しを行います。
ⅰ 歯科衛生士が行う口腔ケアの実施回数は、現行の月4回以上を月2回以上に見直します。
ⅱ 歯科衛生士が、当該入所者に係る口腔ケアについて介護職員へ具体的な技術的助言及び指導を行い、当該入所者に関する相談等に応じ対応することを新たに要件に加えます。
[単位数]
9.【見直し】栄養マネジメント加算の要件緩和
栄養マネジメント加算の要件を緩和し、常勤の管理栄養士1名以上の配置に関する要件について、同一敷地内の他の介護保険施設との兼務の場合にも算定を認めることとします。
10.【新設】栄養改善の取組の推進
低栄養リスクの改善に関する新たな評価を創設します。
低栄養リスクの高い入所者に対し、多職種が協働して低栄養状態を改善するための計画を作成し、この計画に基づき、定期的に食事の観察を行い、当該入所者ごとの栄養状態、嗜好等を踏まえた栄養・食事調整等を行います。
[単位数]
[算定要件等]
●低栄養リスク改善加算(新設)
・栄養マネジメント加算を算定している施設であること
・経口移行加算・経口維持加算を算定していない入所者であること
・低栄養リスクが「高」であること
・新規入所時又は再入所時のみ算定可能とすること
・月1回以上、多職種が協働して入所者の栄養管理をするための会議を行い、栄養ケア計画を作成すること
・作成した栄養ケア計画に基づき、管理栄養士等は対象となる入所者に対し食事の観察を週5回以上行い、当該入所者ごとの栄養状態、嗜好を踏まえた食事・栄養調整等を行うこと。
・当該入所者又はその家族の求めに応じ、栄養管理の進捗の説明や栄養食事相談等を適宜行うこと。
・入所者又はその家族の同意を得られた日の属する月から起算して6ヵ月以内の期間に限るものとし、それを超えた場合においては、原則として算定しないこと。
11.【新設】入院先医療機関との間の栄養管理に関する連携
介護保険施設の入所者が医療機関に入院し、栄冠栄養又は嚥下調整食の新規導入など、施設入所時とは大きく異なる栄養管理が必要となった場合について、介護保険施設の管理栄養士が当該医療機関の管理栄養士と連携して、再入所後の栄養管理に関する調整を行った場合の評価を創設します。
[単位数]
[算定要件等]
●再入所時栄養連携加算(新設)
・介護保険施設の入所者が医療機関に入院し、施設入所時とは大きく異なる栄養管理が必要となった場合、介護保険施設の管理栄養士が当該医療機関での栄養食事指導に同席し、再入所後の栄養管理について当該医療機関の管理栄養士と相談の上、栄養ケアの原案を作成し、当該介護保険施設へ再入所した場合に、1回に限り算定できること
・栄養マネジメント加算を算定している施設であること
12.身体的拘束等の適正化
身体的拘束廃止未実施減算について、運営基準と減産幅を見直します。
[単位数]
[算定要件等]
●身体的拘束の適正化を図るため、以下の措置を講じなければならないこととする。
・身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに金融やむを得ない理由を記録すること
・身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他従業者に周知徹底を図ること
・身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
・介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
13.介護療養型老人保健施設から介護医療院への転換の取扱い
ア 基準の緩和等
介護療養型老人保健施設から介護医療院に転換する場合について、療養室の床面積や廊下幅等の基準緩和等、現行の介護療養型老人保健施設が転換するにあたり配慮が必要な事項については、基準の緩和等を行うこととします。
その際、転換前の介護療養型医療施設又は医療療養病床では有していたが、転換の際に一部撤去している可能性がある設備等については、サービスに支障のない範囲で配慮を行うこととします。
イ 転換後の加算
介護療養型老人保健施設から介護医療院への転換後、転換前後におけるサービスの変更内容を利用者及びその家族や地域住民等に丁寧に説明する等の取組について、最初に転換した時期を起算日として、1年間に限り算定可能な加算を創設します。ただし当該加算については介護医療院の認知度が高まると考えられる平成33年3月末までの期限を設ける。
[単位数]
[算定要件等]
・介護療養型医療施設、医療療養病床又は介護療養型老人保健施設から転換した介護医療院である場合
・転換を行って介護医療院を開設した等の旨を地域の住民に周知するとともに、当該介護医療院の入所者やその家族等への説明に取り組んでいること。
・入所者及びその家族等と地域住民等との交流が可能となるよう、地域の行事や活動に積極的に関与していること。
14.療養食加算の見直し
1日単位で評価を行っている現行の取扱いを改め、1日3食を限度と死、1食を1回として、1回単位の評価とする。
15.【見直し】介護職員処遇改善加算の見直し
・介護職員処遇改善加算(Ⅳ)(Ⅴ)は、厚生労働大臣が定める日以降に廃止されます。
[算定要件等]
16.居室とケア
・ユニット型準個室について、実態を踏まえ、その名称を「ユニット型個室的多床室」に変更します。