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高齢者の「隠れ結核」に注意を!

みなさん、結核という病気はご存知ですか?名前は聞いたことあるものの、現在ではあまり馴染みのない病気です。
結核は1950年代に、結核に効く抗生物質が使われる始める前は日本人の死因の第一位を独走しており、死の病として非常に恐れられてきました。しかし現在では、さらに薬の研究が行われ、多くの方は完治する病気となりました。そのため、患者数は急激に減少し、きちんと正しい治療をすれば、結核は怖い病気ではなくなりました。

しかし、近年、高齢者に結核が増えていることが問題となっています。結核は過去の病気と思われがちですが、今でも日本では年間2万人以上の方が新たに結核になっているのです。特に高齢者は結核を発症しやすく、施設に入所中の方やデイサービスを利用されている方が発症すると、多くの方に感染させてしまう危険があります。
ここでは、高齢者の結核の特徴と、注意点について解説します。

 

1. 結核はどんな病気でしょう

現在、結核はメジャーな病気ではありません。そのため、若い世代を中心に結核の正しい知識を持っている人は少ないでしょう。結核は、その感染様式や感染してから発病するまでのメカニズムが他の一般的な感染症とは大きく異なります。結核対策をするには、まず結核を正しく理解することから始めましょう。

① 結核はどうやって感染するの?

結核は空気感染という特殊な感染様式を持ちます。
通常の感染症の場合、患者から排出されたウイルスや細菌を他の人が触り、それが口から体内に入ることで感染します。しかし、結核の場合は、患者の唾のしぶきの中に含まれる結核菌が空気中を漂い、それを他の人が吸い込むことで感染します。つまり、直接的にその患者に触れなくても同じ空間にいるだけで感染してしまう可能性があるのです。

さらに、感染対策として一般的に用いられるマスクは結核対策には役に立ちません。結核菌は非常に細かいため、特殊なマスクでなければ通過してしまうのです。

② 結核に感染するとどうなるの?

結核は感染したらからといってすぐに症状は出ません。一般的な感染症は、感染すると数日の内に何かしらの症状が出るものです。その症状が出るまでの時間を潜伏期間と呼びますが、結核は潜伏期間が非常に長いのです。最低でも半年はかかります。中には数十年の潜伏期間がある方もいます。

また、結核に感染しても8割以上の人は発症することなく一生を終えるといわれています。結核菌を吸い込んで感染すると、菌はまず肺の中に入り込みます。人の体には免疫という作用があり、外から入ってきた異物を取り除こうとする働きをします。この免疫によって、入り込んできた結核菌は非常に硬い殻に閉じ込められます。そうして、結核菌は悪さをすることなく、その殻の中で眠り続けることになります。もちろん、症状が出ることもなく、他の人にうつしてしまう心配もありません。8割以上の方は、この状態のまま一生を終えるのです。

残り2割の方は、体調を崩したときなどに免疫力が低下すると、結核菌を閉じ込める力が弱まり、結核菌が殻を突き破って出てきてしまいます。力を持った結核菌は、肺の中で活発に活動を開始し、咳や発熱などの症状を引き起こします。この状態を発病といいます。発病してしまうと、症状が出るだけでなく、結核菌が肺の中から体の外てきてしまうために他の人に感染させる可能性があります。

 

2. なぜ高齢者に結核が増えているのでしょう

結核は感染しても、多くは肺の中に閉じ込められ眠った状態となります。しかし、何らかの原因で免疫力が低下したときに、眠っていた結核菌が起きだして悪さを開始します。

日本はかつて結核が蔓延し、多くの方が感染していました。その時代を生きている70代以上の方は、実に半数以上の人が結核に感染しているといわれています。結核にすでに感染している人がご高齢になり、免疫力が低下することで、結核を発症する可能性が出てきます。このため、高齢者の結核が増えているのです。

 

3. 高齢者結核に注意すること

高齢者は、咳や痰などの結核に特徴的な症状が出ないこともあります。結核と診断された方の中には、このような症状は全くなく、37度台の微熱が続いていた、数か月にわたって体重が落ちていた、何となく元気がなくなっていた、などということも珍しくありまえん。そのために、発見が遅れ、治療が遅れるばかりでなく多くの方に感染させる機会を増やしてしまうのです。

呼吸器症状がなくても、二週間以上続く微熱や、体重減少、活動性の低下、寝汗の増加などは結核を念頭に置き、病院を受診するようにしましょう。

 

4. 高齢者施設での結核対策とは

高齢者施設での結核対策で注意すべきことはどんなことでしょうか。

① 職員が結核の正しい知識を持つこと

職員が結核に対する正しい知識を持つことで、結核の早期発見につながります。「高齢者にはよくあること」と甘く考えずに、利用者の健康状態をよく観察し、疑うことから始めましょう。

② 年に一度は検査をしましょう

結核は胸のレントゲン写真で診断可能です。利用者には年に一度は胸のレントゲン写真を撮ってもらうようにお願いしましょう。そこで異常が見つかることも多いです。

③ 結核を広めないように対策しましょう

結核を発症した人は、感染拡大予防のために結核病床に隔離入院することになっています。ですが、結核と診断される前はもちろん施設で生活することになります。その間に多くの人が感染の危険に晒されます。特に職員は若い世代が多く、彼らは既に結核に感染している人はほとんどいないので感染しやすいのです。

体調に異常のある利用者は個室管理を行うなどの対策で、接触者を減らすこともできるでしょう。また、今では血液検査によって結核に感染しているかどうかを調べることもできます。入職時に職員に検査を行い、未感染者には結核が疑われる利用者への対応を控えることもお勧めです。

 

まとめ:正しい知識で正しい対策を!結核は怖くありません

結核は正しい知識を持って、正しい対策を行えば必要以上に怖がることはありません。高齢化社会の中で、結核の発症をゼロにするのはとても難しいでしょう。重要なのは、いかに早く発見し、治療につなげるか。そして、いかに接触者を減らすか、に尽きます。
今一度、施設内での結核対策を見直してみましょう。