2018年の介護業界のトレンドを予想する

新年、あけましておめでとうございます。
経営会議ドットコム編集部では、様々な取材を通じて今年の介護業界の動きを大予想してみました。

 

「緩やかなボランティア」がスマホアプリで繋がる

高齢者が可能な限り住み慣れた地域で生活を継続できる包括的な支援・サービス提供体制の構築を目指す「地域包括ケアシステム」。
支援の担い手は、食事サービスのような事業化しやすいものから、そうでないものまで様々です。そうでないものは、地域の互助組織(ボランティア)が担うべきというのが、地域包括ケア、厚生労働省の考え方です。

個人の善意に委ねるボランティアが支援の中心になる時、支援のボリューム、持続性、普遍性は問題になるでしょう。一部のボランティアに過度な負担がかかり、続けたいけど続けられないというような問題も発生しそうです。またボランティアと要支援者との間のトラブルも、どのように可視化するのか、どのように解決するのか、この辺りは気になる所です。

2018年は、このような問題を解決する新しい方法が出現しそうです。
ポイントは、従来のボランティアとは違う「緩やかなボランティア」の考え方と、ボランティアと要支援者をつなぐシステム、おそらくはスマホアプリになるでしょう。
事例でイメージしてみましょう。

会社員Aさんは、帰宅途中に独り暮らしの高齢者Bさん宅を通過、居間の電気を確認するとアプリに送信、ケアマネ・ヘルパーにその内容が共有。Aさんにポイントがつき、貯めたポイントは近所のレストランで割引サービスに使える

主婦Cさんは2人の子育ての真っ只中。パートに出るにはもう少し時間がかかりそう。Cさんのささやかな小遣い稼ぎは、同じ町内に住む高齢者Dさんの買物を手伝ってあげること。今日もヘルパー事業者からアプリを通じて、買物リストが送信されてきた。

緩やかなボランティアを大量に地域でプールするには、仕事(支援)の細分化、見える化、小さなインセンティブがキーとなるでしょう。これを実現するには、アプリが不可欠です。

 

従来の常識を超える業界イノベーターが出現する

現在、日本で最も店舗数の多い喫茶店はスターバックスコーヒーです。
今から約20年前、国内第1号店がオープンする際、店内を全面禁煙にする事に日本側が「日本人の事を分かっていない。そんな事をすればお客さんが入らない」と、大反対しました。
結局、アメリカ本社が禁煙を無理やり押し通し、その後のことは言わずもがなですが、業界人の感覚からすれば非常識なことも、顧客の心をつかんで、あっという間に常識に変わるという事です。

2018年は介護業界の常識を覆す全く新しい業態、喫茶業界にとってのスターバックスや、アパレル業界にとってのユニクロのような存在、イノベーターが出現するように思いますし、そう期待しています。
イノベーターは、ユニクロの粗利益率50%超が、一般の洋服小売店30%と比べてそうであるように、時間単価や労働生産性で従来の介護業界の平均値を凌駕するものとなるでしょう。

その芽は、幾つか出ております。
リハビリ型デイサービスの楓の風や、住宅型老人ホームゆいまーるが、そうです。
ただ、いずれもですが、誰でも真似ができる再現性の高いパッケージになっているかと言えばそうでなく、それぞれの経営者の言わば属人的要素が多分に残ります。

再現性のポイントは、チームマネジメント(採用から教育、賃金、メンタルマネージメントまで)、今どきの言葉に置き換えれば働き方改革と、AI・ICT等の導入による現場の生産性革命です。

 

エビデンスのしっかりした認知症予防サービスが生まれて来る

今や65歳以上の高齢者の約4人に1人が認知症、またはその予備群とされています。高齢化により今後も増加が見込まれる中、認知症の方が住み慣れた地域で安心して暮らせる社会の構築とあわせ、早期に対応し認知症を予防するサービス、導入効果が実証されているようなサービスが生まれて来そうです。

 

各地で寡占化が進む

2017年は介護事業所の倒産件数が過去最多を更新しそうです。また特別養護老人ホームの平均収支は何と1.6%と、ほぼ収支トントンの状態です。
現在、経営会議ドットコムにも、多くのM&A、再編のご相談が寄せられています。
今年は各地域でドミナント戦略が取れ、利用者や人材、本部機能が共有でき、いち早く経営の効率化が実現できる事業者が生き残り、小規模零細の事業所の存続が問われることとなりそうです。

業界全体で見れば、20年前の小売業界がそうであったよう、駅前の商店街より小売店が無くなったよう、介護業界で寡占化が進む方向性は避けられないでしょう。

いかがでしょうか?
経営会議ドットコムは、この2月1日より「介護経営」に名称を変更し、より有益な情報を介護事業の皆様へお届けできるよう、編集部一同頑張ってまいりたいと思います。
今年も、よろしくお願い申し上げます。

 

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