集客を介護施設のビジネス的な部分での結果、と表現するのであれば、「結果」を出す施設というのは、とにもかくにも利用者さんや、そのご家族様との意思の疎通が上手という特徴、もしくは共通項があります。
これらのテクニックについては、いわゆるビジネスセミナーや集客のセミナーなどでも取り扱われることがありますが、いわゆる「ガクモン的」な営業テクニックを知らず知らずに使っている、成績の高い介護事業者も存在します。
そして、彼らが実践しているであろうテクニックには、とある名前が付けられています。
それが「VAKテクニック」と言われるものです。
今回はそのVAKテクニックについて、どのようなテクニックなのか、そしてなぜこのテクニックが介護の現場で集客に役に立つのか、という所について解説をしていきます。
まず大前提として考えなければならないのは、介護施設というのはその性格上、ご高齢の方の応対をすることが多く、さらにそのご家族様も、あまり若いご家族様ではないという部分です。
まず、この部分については考えなければならない大前提となります。
つまり、他の一般的な営業活動とは、「顧客層」という部分でも少し毛色が異なるということになるわけです。
なぜ毛色が異なるのか、という部分ですが、そもそも扱っている商品や商材という部分で考えれば、こちらはご家族様の中で介護介助が必要な方をお預かりする、というようなサービスの提供であることと同時に、まず営業活動を行う相手の方がご高齢だというような部分に集約されます。
つまり、ご高齢の方ともなれば耳も遠くなれば、目も見えづらいことがあり、こちらからご説明申し上げている内容やご案内している内容について、100%正確に先方様に伝わりきっているとは決して言えないのです。
そこで出来るビジネスマンは、VAKシステムを効果的に活用しています。
そのVAKシステム、よく言われるのは以下のとおりです。
V・・・Visual(視覚情報)
A・・・Audio(言語聴覚情報)
K・・・Kinesis(身体感覚)
つまりこのVAKというのは目、耳、触覚、のことなのです。
このVAKはもともと神経言語プログラミングという一種の心理学的な分野から発達した考え方なのですが、人間にはそれぞれ情報を受け取るのに長けている感覚器官というものがあります。
例えばお耳が遠い人であれば、VAKの「A」、つまり聴覚情報についてはあまりインプットがお得意ではありません。耳から入ってきた情報をスムーズに理解するのにやや難があるということです。
この場合は、残された感覚であるV、つまり視覚あるいはK、すなわち触覚を利用して、よりご理解いただきやすく営業や重要なご説明を行っていくことになるわけです。
これがVAKテクニックの一つの考え方となります。
元々はコミュニケーション大国である欧米諸国で生まれた考え方ですが、この考え方はもちろん、言語によって制約を受けるわけではありません。
そのため、日本の方にも十分に活用することができます。
さらにこの方法だと圧倒的に聞き手の理解度が異なりますので、高齢者の方にとっては「この人の言っていることは私は理解できる」ということで、信頼の獲得にも繋がるようになるわけです。
昨今、若い介護職員による高齢者の利用者さんや利用検討中の方とのミスコミュニケーションが取りざたされる時代ですが、この方法さえ覚えておけば、こういったミスコミュニケーションから生まれる契約成立前の離脱などを、最大限に防止することができるのではないでしょうか。
それではもう少し、例を見ていきましょう。
まず利用者様、並びに高齢のご家族の入居をご検討のご家族様について、老眼などであまり細かい文字がお読みになれないということになると、Vの中の「文字認識」という部分については少し工夫が必要になるというわけです。
この文字情報を、できる限り口頭で何度もご説明申し上げたり、あるいはわかりやすいイラストなどでご理解をいただくといった、「代替的」な手段を使うと、より情報を効率的に伝達することができ、後から情報の行き違いや伝え間違いによる「ボタンの掛け違い」が発生しづらくなる、といった具合です。
とにかくできるビジネスマンはこの辺りのことをよく理解しており、例えば目も耳もあまり達者でないご入居希望者様については、絶えずご本人様の体を触ったりすることで安心感を与えながら、時間をかけて説明をするなどのテクニックを利用します。
これをテクニックと言うか、おもてなしというか、については考え方の分かれるところではありますが、結果として信頼関係の構築に繋がるのであれば、極めて有効な方法と言えるでしょう。
多くの成功している事業所や事業所の担当者を実際に目で見てみると、やはりこういったシステムや感覚の違いを理解している人間が多く、伝える側も、伝えられる側もストレスのない環境がそこにはあるわけです。
この考え方の応用ですが、耳の遠い方については、左右どちらの聴力が強くてどちらの聴力が弱い、というような一般的にいうところの「左右差」があるケースもあります。
左右差についても、事前の情報から判断するなり現場で判断するなりして、間違ってもお耳が遠い方の側に立ってご説明申し上げることがないようにしたいところです。
こういった細かな気配りというのも重要な要素をしめてきます。
もちろん、システム的な内容や契約に関する重要な説明事項というものはきちんと過不足なく説明をすることが求められるわけですが、その以外の部分については、このビジュアル・オーディオ・キネシスの三つの要素を使って、いかにわかりやすくご理解をいただくかというところに全ての要素が凝縮されていると思っても差し支えはないでしょう。
さらに、このテクニックには副産物があります。
実際にこれらのテクニックを利用すると、外から見ると大変、担当の介護事業者が本人のことをよく考えて、分かりやすく、そして親身になって説明をしてくれていると感じるものです。
実際にこういった説明を受けた家族の視点から考えても、こういった説明をしてくれる介護事業者さんだったら、総合的に全ての下駄を預けても良い、と思えるような事すらあります。