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介護福祉の専門性と人の尊厳

介護福祉の専門性は、介護福祉が「生活」の支援であることから構成されます。

「生活」のもつ意味は多様でありますから、この意味をもった世界を生活世界といいます。

ここでは生活世界が持つ意味の範囲を、二つの視点から考えます。

 

一つ。

介護サービスは、老い、病、心身の障害に起因する生活支障の状況に対応します。このことは、人間生活の「現実」の課題です。

この現実の生活では、生活の営みの主役である利用者から、生活改善のための介護サービスの利用の意思が表明されます。

 

二つ。

この利用者の意思を一般化して考えますと、個人が現実の世界において、この状況にとどまっていないで更に新たな世界を思考しているのです。

 

これに関しては人それぞれですが、人は常によりよい生活を求めて努力しています。

個人の生活の現実から生じる将来への志向性は、「理念」といわれます。これは、個人が、自分らしく生きる基本的な姿なのです。

ここに述べた理念と現実の関係が、なぜ介護福祉の専門性のエビデンス(根拠)となるのでしょうか?

それは理念の、個人が主体を持っている生活の志向性が、社会の普遍の理念となり、いきつくところは国が理念として法律をつくる源泉となるからです。

現実の生活課題解決への意欲は、理念へ向かう姿です。そして理念は現実に生きる力になります。

 

では、この現実と理念の関係が、介護福祉の専門性にいかなるエビデンスを与えるのかを考察します。

介護福祉における生活の構造は、理念と現実からなりたっています。

 

例えば、人間の尊厳は自立、あるいは人間に値する生活といった理念です。

この理念をもつ意義は、介護サービスの基盤となる思想(生活・人間に関する考え方)です。

この理念に基づく介護サービスは、介護職員にとって現実の業務の誇りと責任を自覚させることになります。

一方利用者は、介護サービスを利用する際に、社会の意思と介護職員の思想・態度を認識することで、介護職員のへの信頼と自尊心を保持することができるのですが、言葉にすることは簡単ながら、現実問題それは難しいのが現状です。

なぜなら、利用者と介護職員は常にマンツーマンではないわけで、介護職員各々が思想・態度が違うわけですから、利用者に対しての統一した対応を介護福祉の職員は求められるのです。ここは重要なポイントです。

生活における現実と理念は、国の法制度により国民の普遍的な思想として、国民共同の意思によって実践されるのです。

すなわち介護福祉は法の理念によって、国民の承認のもとに行われているわけです。

それだけ介護福祉には、責任も生じてくるのです。特に介護福祉士になれば名称独占であすが、守るべき法律が根拠としてでてくるので非常に重要です。

人間は自然環境において存在しています。自然の恵みの中で生活を営んできました。

それは、人間が自然環境の影響を受けながらも自然環境を生活のために変革していく挑戦の歴史でもあるのです。

原始時代から産業革命など経て現在にいたるわけであり、まさしく歴史への挑戦であったのです。

この人間の、人間生活と自然環境に関わる事実の意味づけを「価値」というものがあります。意味づけにおける価値は人間が作りだしたものでありますから、そこに何らかの理由があります。

それは人間の「生活の質(QOL:クオリティオブライフ)」の向上に有益なものです。

それの例が「文化」です。アメリカにはアメリカの、日本には日本の文化があり、価値観が違うことは当然であります。

これは介護福祉が、生活文化を形成していることにあります。

具体的には介護サービスが社会構造の変化に対応して、人間関係、衣食住の様式、地域の人々の助け合いの意識などについて新たな価値観をもって生活の質の向上に先導的な役割を担うのです。

介護福祉には価値、技術、倫理を伴う仕事です。利用者の要望に応えられる技術が必要ですし、利用者それぞれの価値観にも共感しなければなりません。そのためには波長合わせも必要になってくるでしょう。

介護の技術だけ長けていてもだめなのです。それは確かにスペシャリストの領域ですが、介護福祉はジェネラリストを目指す必要があるのです。

 

要するにオールマイティーでなければならないのです。そのためには日々の仕事も疎かにしてはなりませんし、スキルを向上させる「義務」があると感じます。

このあたりの専門性について、介護職員の意識はとても低いことを憂いてしまいます。今後介護サービスのニーズは間違いなく増えてきます。

すると様々な利用者と接する機会も増えてきます。介護職員の価値観を押し付けがちになる傾向があるので、その点は改めるべきだと思います。価値は常に変化もするものです。

肯定的であった価値がある日突然否定的な価値観を持つこともあります。そのためには介護職員はコミュニケーションスキルも磨く必要があります。

介護職員も未来像はまだまだ山積している問題を超えていく必要があります。それを利用者に還元していくことができるようにする必要もあります。

介護職員は介護福祉士・ヘルパー・無資格の職員と所有する資格も共通基盤を構築するのは確かに難しい問題ではあります。

 

しかし、利用者に技術を還元するためには避けては通れない道でもあります。法整備も必要です。介護福祉士も名称独占のみです。

介護には業務独占にする価値は十分にあると思います。しかし、実際の介護職員のレベル層の差が歴然なのでなかなか難しいのかもしれませんが、1日でも早く、介護職員の底上げをして、堂々と「業務独占」を勝ち取ってもらいたいものです。

それは利用者のためであることも忘れてはいけません。得てして資格を取得して向上しないものは「ただの人」になってしまいます。

医師でも看護師でも資格を取得してからがスタートなわけであり、介護福祉士もスタートラインに立っただけで自己研鑽しないといつまでも看護師の下っ端扱いされてしまいます。その点を理解して業務に励んでもらいたいですね。