介護ビジネスで開業をめざす方に
2025年、団塊の世代が後期高齢者(75歳)となり、本格的な高齢化社会を迎えます。介護事業には大きな関心が寄せられています。新しい介護ビジネスや介護サービスを開業してみたい!でも、介護業界のしくみは複雑で、起業や参入が難しそうだ。そう感じている方のために、これから介護ビジネスの基礎知識を、わかりやすく解説していきます。
介護事業が社会福祉からビジネスとなったのは、介護保険制度の導入が契機です。以前の介護サービスは、自治体や特定の社会福祉団体に限定された事業でした。事業者の枠が拡大されたことでサービスの量や種類が広がり、事業者間の競争でサービスの質の向上や効率化も進んでいます。
また、日本の長寿高齢化が進み、要介護となる人が急増したため、家族だけでは対応が難しくなりました。今後は高齢単身者の割合が高くなるとも予測されています。介護ニーズの変化に伴い、マーケットは巨大な規模に膨らみ、介護サービスの利用者数も増加し続けています。
介護ビジネスのサービス内容とは?
介護ビジネスのサービスは、大きく分けて2種類あります。介護保険が適用できるサービスと、適用外のサービスです。
介護保険適用サービスは、介護保険の利用者と事業者の間で契約を結び、必要なサービスを提供します。制度内で運営するため、介護報酬は公定価格となり、事業者が自由に設定できないのが特徴です。
介護保険内のサービスには、次の4種類があります。
(1)訪問系サービス
事業者が利用者の自宅を訪問し、各種サービスを提供します。定期巡回もあります。例として、ホームヘルパー、訪問看護・介護、理学療法士や作業療法士によるリハビリテーション、入浴サービスや福祉器具のレンタルサービスなどです。
(2)通所系サービス
昼間に送迎付きで利用者にサービスを提供します。デイサービス、デイケアがこれに当たります。
(3)入所系サービス
利用者が施設に入所できるサービスです。介護老人福祉施設(特養)や、介護老人保健施設(老健)など、在宅での生活が困難な利用者向けです。また、短期入所(ショートステイ)のサービスもあります。介護認定の枠内で、短期間に限り介護・医療・リハビリなどを受けられます。
(4)居住系サービス
有料老人ホームや、認知症向けのグループホームがあります。
介護保険適用サービスを開業するメリットは、介護保険制度に守られているため、安定した利益が見込めることです。ただし、介護保険法の改正や介護報酬の改訂には要注意です。保険制度には国の政策が反映されるため、今後も在宅介護へ移行が進むでしょう。利用者の長期の入院・入所は避ける方向性です。この流れは「在宅シフト」と呼ばれ、旧来のサービス分野の縮小や、事業所が閉鎖になるケースも出ています。
新たに広がる介護保険外のサービス
介護保険の適用外では、より自由なサービス業態が生まれてきています。介護保険外サービスは、大きく2種類に分かれます。
1つめは、各市町村などの自治体が福祉サービスとして提供するものです。費用は無料から一部負担まで、各市町村により異なります。介護予防サービス、在宅療養者向けオムツ代控除、認知症の見守りサービス、配食サービスなどがあります。
2つめは、利用者が自費で受けられる民間のサービスです。従来は、ホームヘルパーが、介護保険の枠外で有償で対応するサービス(家事援助、旅行付き添い、引っ越し援助など)が中心でした。現在は事業展開が進み、緊急通報や見守り・安否確認サービス、出張理美容、買い物代行サービスなど、さまざまな新しい業態が生まれ、介護予防の分野にもビジネスが拡大しています。
民間の事業者はどう参入しているか
介護ビジネスに民間の事業者が参入する場合、次の2タイプがあります。
(1) 大手企業による全国展開型の参入
各地に複数の拠点を作り、介護保険適用サービスに限らない複合的なサービス提供をしています。
(2) 地域密着型の参入
低コストで地域のニーズに合わせてサービスを提供します。フランチャイズ型のビジネス展開をする例もあります。
その他に、異業種から参入する動きも活発になっています。家電メーカー、商社、住宅メーカー、生命保険会社などが、介護ビジネスに参入しています。
例えば、全国のJAではホームヘルパーを養成し、地域ニーズに対応した介護サービスを提供しています。介護保険サービスだけでなく、高齢者への生活支援や、健康維持を目的とした介護予防の取り組みもあります。また、2017年には、日本郵便が「みまもりサービス」を開始し、大きくニュースになりました。