転倒事故は何故に起こる?どう防ぐ?

施設生活の中で最も多い介護事故は「転倒」です。転倒には『防ぐべき事故』と『防げない事故』があると思います。転倒事故を100%防ぐのは困難です。しかし、施設内で転倒の事故を当たり前のように感じることは大問題です。そのような施設には入所させたくありませんよね?

転倒事故を未然に防ぐため、努力をしている施設が増えてくれればと思います。

 

転倒の原因は場所と時間帯で分析をすると見えてくる

転倒事故は、いつ、どこで、どのように発生しているのでしょうか?私は過去、勤務していた施設で転倒事故が発生する場所、時間を集約し1年経過を追ってみたことがあります。

場所として多いのは「居室とリビングでの転倒が多い」「深夜や午前中の転倒が多い」ことがわかりました。

しかし、この結果はある程度予想できたものでした。

入所者さんは居室とリビングで過ごす時間が長く、深夜や早朝は夜勤帯で介護スタッフが手薄な時間帯です。そのため、この結果は当然でしょう。

どこの施設や病院もおそらく、同じような場所・時間帯での転倒が多いことが予想されます。

 

転倒事故の具体的な事例

ケース1

ベッドから車いすへの移乗介助時、介護職が手を滑らせて、入所者さんを転倒させてしまった。

このケースは『防ぐべき事故』です。すぐにでも再発防止策を立てなければなりません。また、家族への状況説明や今後の治療に関する対応も必要になってくるでしょう。転倒はとても危険なのです、転倒し、寝たきりになり、肺炎を起こして死亡してしまうことも十分ありえるのです。

すると死亡の直接的な原因は肺炎ですが、元をただせば転倒から始まっているのです。

ケース2

自力歩行が可能な入所者さんがついうっかり居室で転倒してしまった。

このケースでは再発防止策を考える必要はもちろんありますが、このようなケースの多くは『防げない事故』になると思われます。

 

防ぐべき事故と防げない事故とは

『防ぐべき事故』

介護のプロとして防止責任は重いです。新人もベテランも関係ありません。結果的に施設に過失があるとみなされる事故です。損害賠償の対象にもなりえます。きちんと防止策(安全配慮義務)を講じる必要があります。

 

防げない事故』

介護のプロとして防止責任がなく、施設側に過失がない事故です。入所者の責任で起きた事故、あるいは不可抗力によるもので、介護職が努力しても防げません。これらには、法的義務(安全配慮義務)はありません。とはいえ「施設側には責任はない」などと対応してしまえば家族の方が感情的になり、損害賠償が発生してしまう可能性がでてきます。

そのためにはご家族の方への「細かい配慮」が『防ぐべき事故』であっても『防げない事故』であっても必要ですし、信頼関係を壊しかねないことなので注意が必要です。

 

転倒リスクの分析は施設の至上命題

転倒はさまざまな原因が複合して起きているのが多く、それらを数値化し、対策が可能な原因に対しては防止対策を考えることが必要になります。

例えば、トイレ介助の際、ベッドからポータブルトイレに移乗介助をしようとしたところ、膝折れしてしまい、床に尻もちをついたなど、これは当然『防ぐべき事故』になります。

介護職がトイレ介助の時間帯を考えることにより、通常より介助に注意しなければならない場面です。

時間が深夜帯なら、誰もが寝ぼけていることが多く、足に通常の力が入りません。

高齢者は特にそうです。そのためにはもっと介助量を増やし、介助すれば防げた事故です。ひとつ間違えれば骨折のリスクも生じてしまします。

とても注意が必要なのです。そのためには、以下に説明する高齢者の転倒のリスクを理解する必要があります。

「そんなことは知っている」と言う介護職ほど「転倒させる」リスクが高くなる可能性があります。 そこで今回はもう一度転倒リスクについて考えられるものを列挙し、解説していきます。

 

身体的なリスク

・視覚機能の低下

高齢になると白内障などになるケースも多く、段差の高さの適切な判断ができないなど、直接的なリスクです。 このディスクについては施設側でスタッフが情報共有を綿密に行いそして対策をきちんとを策定しておかなければなりません簡単に言ってしまえばこの対策や情報共有がしっかりできていればいるほどリスクに関する管理がきちんとなされている状況であるということができます。

・身体機能の低下

転倒が生じる一番の原因は、身体機能の低下です。筋力・バランス歩行能力が低下している入所者さんはハイリスクです。特にバランス機能が重要でバランスを保つことができれば立位(立ったままの状態)保持も可能になり、転倒のリスクは軽減されます。

 

・認知機能の低下

注意を払ったり、物事を判断したり、記憶したりといったといった認知機能の低下も転倒につながります。

この場合は認知機能の低下ももちろんのこと 危険回避する判断力も低下しています。
その際はベッドではなく、布団で寝てもらうようにするなど環境の整備によってリスク回避が可能な場合があります。 この後についても施設側で情報共有を行うことで 十分な対策が可能な場合があります

 

・薬の副作用

高齢になると、高血圧や脂質異常症、糖尿病、不眠など慢性疾患を多く抱え、その疾患別に薬が処方されるとかなり多くの薬を飲むことになります。足の筋力が弱くなり、眠剤で朦朧としている状況では複合的に転倒に至ってしまします。

また複数の医療機関を受診している場合は、現在服用している内服薬などの飲み合わせにも注意を払う必要があります。

この飲み合わせなどの問題で薬があっていない場合には、さらに転倒のリスクやその他様々なリスクが発生することになります。

その際は主治医に相談し、処方の変更も検討する必要があります。

 

このような介護事故、防止するにはマニュアルの反復が一番

このように転倒事故などを含め、施設内で起こる様々な事故は総合して介護事故と呼ばれます。

この介護事故ですが、もちろんあってはならないことです。

しかし今回述べたように、どうしても発生することを防ぎきれないという場合があるのも現実を直視すれば見えてきます。

それでは、この介護事故を最大限に防止するにはどのようにすれば良いのか。

その答えは、マニュアルを策定・反復するということになります。

もちろん各施設においては介護事故防止のマニュアルや様々な手引きなどを用意し、さらに研修なども行っていることと思いますが、残念ながらその内容は100%、すべての職員が頭に常時入っているとは決して言い切れないのではないでしょうか。

まずは日常の業務中、様々な隙間時間などに確認することのできる簡易版のマニュアルを導入し、そこで反復的かつ日常的に介護事故の防止に関する情報を絶えず頭に入れ続けてもらうと言う活動が必要です。

 

今回、編集グループでは簡易的に使うことができる介護事故防止のためのエッセンスを凝縮した「介護事故防止マニュアル」を策定し、配布しています。ぜひご活用ください。

*介護事故防止マニュアル*

 

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