ケアマネージャーとして勤務していると、やはり様々な事例に遭遇することがあります。
そしてそのたびに最適な、あるいはその時できる最高の選択肢があり、絶対的な正解などということはない、と実感するのが日常でした。
そんなケアマネ時代に経験した事例に、親子三人暮らしのご家族の旦那様が認知症を発症され、家庭崩壊の危機に瀕してしまったというケースがありました。
ケアマネージャーとして当時もっとできたことがあるのではないか、と感じる事例で、このようなことにならずとも、もっと早く適切なご案内ができたのではないかと今でも思います。
ケアマネージャーやメディカルソーシャルワーカーの方が他には、このような失敗を繰り返してほしくないという思いから、今回は事実を基にフィクションとしてご家族の手記のような形で再構成し、 この事例について共有して行きます。
デイサービスの名前が書かれたバスを見かけたことが利用のきっかけ
私は当時、夫と娘と3人で暮らしていました。夫も当初は少し呆けて物忘れが多くなったかな程度であり、特に介護に困ることもなく生活していました。近所にデイサービスの名前が書かれたバスをよく見かけるようになり、ご近所さんであったので話を聞き、内容を理解しました。
そのため診察時主治医にそのことを伝えたところ「それはいいですね、利用してみてください」と言われ利用してみようと思いました。
その病院には医療相談室があり、医療ソーシャルワーカーさんが対応してくれ介護保険の申請の流れをまず説明してもらいました。
この病院のソーシャルワーカーさんは1人1担当であるので同じ人に相談できることができ安心したのを覚えています。「結果がでたら再度来室してください。その時に細かいことを相談しましょう。」
1か月後、要介護1と認定されて書類を持って相談室に行きました。前回対応してくれたソーシャルワーカーさんに「まずはケアマネを決めること、その後具体的にサービス利用を決めていく」と流れを説明してくれました。
ソーシャルワーカーさんからはケアマネは自由に選ぶことになると言われましたが、どこの誰を希望していいのかわからないことを伝えました。そうしたところソーシャルワーカーさんはケアマネさんも兼任していると言われたので事情のわかるソーシャルワーカーさんにケアマネさんを依頼しました。
そして具体的にどのサービスを利用するかを決めるわけですが、主治医のいる病院でデイサービスを実施していることなので、そこを希望しまずは週1回で利用することにしました。利用当初は本人も非常に楽しいようでいつもニコニコして帰ってきてくれました。
何をしたか聞いてみるとその点は忘れているようでしたが、楽しんでくれているのは理解できたので安心しました。週1回からの利用で開始しましたが、サービス利用日以外何もすることなく寝ているのでサービスの利用日数を増やしたいとケアマネさんに相談し週3回利用できるよう調整してもらい、利用することになりました。そうすると更に本人は楽しそうに出かけ、帰ってくるのです。私としてもその時間は自由時間なので買い物や友人と昼食や美容室に行く時間を確保でき非常に助かっていました。
1年ほどで症状は悪化
このような生活を1年ほど過ごしていたのですが、夫の様子が少しずつ悪い意味で変化が見られるようになってきました。その様子とは尿・便とも失禁するようになってきたのです。
以前よりおむつはしていたのですが、間に合わないときに尿を失禁してしまう程度で自ら交換もしていました。それが尿だけではなく、便も失禁するようなったのです。
そして自分では交換もできなくなりました。失禁するだけならよかったのですが、その便を壁に塗りたくるようにもなり、目が離せなくなってしまいました。
夜間も寝なくなるようになり、長女と二人交代で起きていましたが、長女は仕事もありかなり疲弊させた、と今は申し訳ない気持ちでいっぱいです。
しかし、その時は私自身も余裕がなく、常に長女と喧嘩が絶え間なく続き険悪な家庭になってしまいました。
このことはソーシャルワーカーさんには相談していませんでした。何か家庭のことを晒すようで後ろめたさがあったのです。
しかし、このままいけば本当に家庭は崩壊してしまうと思い、ソーシャルワーカーさん(ケアマネさん)に相談しました。
ケアマネさんからは「どうしてもっと早く言ってくれなかったのですか?」と言われ、その後に
「自分自身が気づけなかったことによって辛い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」と謝ってこられたのです。
これには私も驚き、逆に恐縮してしまいましたが、もっと早く相談してよかったのだと思い少し後悔もしました。
常日頃ケアマネさんは「介護は手を抜け」とは言われていましたが、なかなか手を抜くことはできずこのような状況をつくってしまったのです。
ショートステイの利用で負担を軽減
そして家族の介護負担を軽くしてくれるようショートステイの利用を勧められました。
そのような制度があるのであればもっと早く相談すればよかった、とますます後悔しましたが、この点もケアマネさんは「もっと早く制度説明をしなかったのは非常にすみませんでした」と更に謝られ、この人は私たちの家族のことを真剣に一生懸命考えてくれているのだなと痛感しました。
そしてショートステイ利用のための流れを説明し、どのショートステイを利用していいのか分からないのでショートステイを実施している施設を何か所か紹介され、見学に行きました。
正直悠長に見学する余裕などはなかったのですが、雰囲気かそれぞれ違うことに気づき、見学に行くように言われたのはこのためなんだなと思い、1か所利用させたい事業所を決めました。
早速ショートステイ利用の説明を受け、手続きを行いまいた。しかし、先方からは対応が難しいようなニュアンスの反応でした。
そのことをケアマネさんに話したところ、私たちがいる前で先方に電話をしてくれ、「家族が今まで誰にも頼らず介護してこれているのにプロの施設が断るとは何事だ!」と私たちの気持ちを代弁してくれました。
このこともとても嬉しかったです。その結果、週2~3日程度であれば対応できるとの返答をいただき、デイサービスとショートステイを利用しながらの生活がはじまりました。ショートステイは本当に助かり、その夜はぐっすり眠ることができました。
そして、ケアマネさんよりこのままでは在宅生活も困難になってくるので施設の申し込みも考えた方がいいと言われたので、施設の申し込みをしました。
結果思ったより早く施設の順番がまわってきて、もうすでに在宅での介護が辛くなってきたので神の声だと思いました。
そして入所させることを決意しました。そして辛かった介護生活からも解放されたのでした。今まで頑張ってこれたのもケアマネさんの優しさがあったからです。本当に感謝しています。
家族との結びつきが強いケアマネへの営業は最重要課題のひとつ
このようにケアマネージャーと認知症の方を抱えるご家族の方は、しばしばとても強い信頼関係を構築することがあります。
この信頼関係を基に紹介をしてくれたのだからと、一発でその施設への入所が決まるケースもあり、この部分を考えると経営上の視点としてはやはりケアマネージャーさんへの営業は常日頃から怠ってはならず、最重要課題の一つであるということがわかります。
そこでまず今回は、経営者の方や施設の管理者の方に「ケアマネ営業がきちんとできていますか」ということを再度ご確認頂きたいのです。
介護経営編集部が作成した ケアマネ営業ハンドブックというものがあります。
こちらはデイサービスや通所介護の利用者増加という至上命題に立ち向かうため、是非実践したい、そんなテクニックがふんだんに盛り込まれているハンドブックとなっています。
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