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福祉医療貸付事業の上手な活用方法

さまざまな情報が混在する中から、社会福祉士である筆者がトピックスを紹介します。今回の話題は「福祉医療貸付事業の概要と予算」です。独立行政法人福祉医療機構では、経営を安定させることを目的に、特別養護老人ホーム、保育所、病院などの建物を整備する際に必要な建築資金などを融資しています。2018年度から新たに介護医療院と地域医療構想に基づく病院の建築・改築なども融資メニューに加わりました。その詳細を紹介します。

 

独立行政法人福祉医療機構とは

社会福祉事業振興会(1954年設立)と、医療金融公庫(1960年設立)が、1985年に合併して作られた社会福祉・医療事業団が、2003年に独立行政法人に移行して設立された団体です。WAMの愛称で呼ばれ、経営コンサルティングや退職手当共済事業、NPO法人などの民間福祉活動の助成事業など、福祉や医療を側面からサポートしています。

 

福祉医療貸付事業とは

独立行政法人福祉医療機構が行う福祉医療貸付事業です。特別養護老人ホーム、障害者福祉サービス、保育所や病院などの施設を整備する際に必要となる建設資金を長期的・固定・低利で融資しています。

 

福祉医療貸付制度の概要

社会福祉事業施設や、病院、診療所、介護老人保健施設などが貸付対象施設となります。医療貸付事業における対象は、病床数などにより条件付けされる場合があります。

 

福祉分野 医療分野 補足事項
対象施設 社会福祉事業に係る施設・事業等 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、医療従事者養成施設、助産所、指定訪問介護事業 病床数などにより条件が付くことがあります。また、貸付金の種類は、建築資金及び機械購入などの設備備品となります
貸付先 社会福祉法人、医療法人、一般社団(財団)法人、営利法人、NPO法人ほか 医療法人、社会福祉法人、一般社団(財団)法人、個人ほか
償還期間 最長で30年(うち措置期間3年以内)
※施設種類 貸付金額により異なる
措置期間とは、元金返済がないことで、利息のみの返済となります
利率 償還期間(1年ごと)に応じた貸付利率 貸付利率は、基準金利のほか、政策優先度、施設事業の経営環境及び償還期間に応じた貸付利息が設定されます。
災害復旧事業など、一定の条件を満たす場合は、無利子となることがあります
融資率 70~90% 60~95% 病床が不足している地域などは貸付利率が異なります。
融資率 融資対象建物、敷地
保証人 保証人不要制度(貸付利率に+0.05%上乗せ)または個人保証を選択 保証人不要制度(貸付利率に+0.15%上乗せ)または個人保証を選択

融資限度額の計算

福祉分野と医療分野で算定方法が異なります。融資を受けられない部分については、自己資金もしくは民間金融機関などからの借り入れとなります。
融資対象建物および敷地は原則として担保提供することになりますが、融資額については、福祉分野は担保の評価額の70%、医療分野は80%を超えることができないほか、償還財源(収支差額)の見込みによっては、融資限度いっぱいまでの融資が受けられない場合があります。

 

福祉分野 医療分野
資金使途 建築資金、設備備品整備資金、土地取得資金、経営資金 建築資金、機械購入資金、土地購入資金、長期運転資金
算定方式 <建築資金の場合>
(基準事業費-法的・制度的補助金)×融資率〈基準事業費の算出〉
建築工事費:1人当たりの基準単価×利用人数
大型設備など工事費、特殊工事費:機構が認めた額
設計監理費:(建築工事費+大型設備等工事費+仮設施設整備費)×5%
<建築資金の場合>
所要額(建築工事費+計画監理費)×融資率
融資率 保育所、幼保連携型こども園:80%
特別養護老人ホーム、認知症高齢者グループホーム:75%
障害者施設:80%
※政策優先度、緊急度により融資率が優遇される場合があります
病院、診療所、老人保健施設:70%
助産所:60%
指定訪問介護事業:80%
※政策優先度、緊急度により融資率が優遇される場合があります

2018年度予算及び新設された融資メニュー

少子高齢化が進展する中、2018年度から福祉・医療ニーズに合わせて新たな融資メニュー創設や拡充が図られています。

 

福祉分野における融資制度の創設

◎企業主導型保育事業に対する融資制度の創設
対象 社会福祉法人、医療法人、NPO法人、一般社団(財団)法人など
融資率 80%
貸付利率 基準金利

 

◎自立生活援助事業所及び就労定着支援事業所に関する融資制度の創設
対象 法人
融資率 80%
貸付利率 基準金利

福祉分野における融資制度の拡充

◎保育所関連施設及び放課後児童クラブの整備に係る融資制度の拡充
対象 保育所、小規模保育事業、幼保連携型認定こども園、企業主導型保育事業、放課後児童クラブなど
融資率 90%
貸付利率 基準金利(据え置き期間中無利子)

 

◎一般財源化された老朽施設の改築整備に係る優遇融資の拡充
対象 養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、ケアハウス(いずれも定員30人以上のもの)、軽費老人ホーム(A・B)型
融資率 90%

 

◎地域共生社会の実現に向けた社会福祉法人などの整備に係る融資条件の統一
対象 福祉貸付事業対象施設のうち、地域共生社会の実現に向けた社会福祉施設などの整備として位置づけられたもの
融資率 一体的に整備する対象施設のうち高い方の融資率
貸付利率 一体的に整備する対象施設のうち低い方の利率

 

医療分野における融資制度の拡充

<病院>
区分 従来の融資条件 新たな融資条件
貸付利率 [病床不足地域]基準金利同率
[病床充足地域]基準金利+0.5%
地域医療構想に基づく建築、改築などの場合、基準金利同率

※地域医療構想に基づく建築・改築などに限ります

 

<診療所>
区分 従来の融資条件 新たな融資条件
対象施設など [新設の対象となるもの]
・診療所の不足地域
・地域の実情により、新設が特に必要と認められる診療所
左記に加え
・在宅療養支援(歯科)診療所
・かかりつけ医機能を有する診療所

 

<老人保健施設>
区分 従来の融資条件 新たな融資条件
加算区分 ・都市型 1億円
・認知症専門棟 8,000万円
・保育施設 1,500万円
左記に加え
・通所リハ、訪問リハ、訪問看護、短期入所療養介護の中から、複合的に在宅支援のためのサービスを提供する場合  1億円
・看取りを行う場合  1億円

※複合的(二項目以上)に在宅支援のためのサービスを提供する場合に限ります

 

◎地域における医療及び介護の総合的な確保の推進を支援するための優遇融資の拡充
区分 従来の融資条件 新たな融資条件
対象施設など 介護老人保健施設、養護老人ホーム、ケアハウス、小規模多機能型居宅事業所、認知症高齢者グループホーム、認知症対応型デイサービスセンター、複合型サービス福祉事業所など 左記に加え左記に加え介護医療院
融資率 90% 90%

 

◎特別養護老人ホーム等の老朽施設の改築整備に係る融資条件の優遇措置の拡充
区分 従来の融資条件 新たな融資条件
対象施設など 養護老人ホーム、広域型特別養護老人ホーム、広域型ケアハウス 軽費老人ホーム、(A・B)型、介護老人保健施設、介護医療院
融資率 90% 90%

出典:WAM-2018.5

融資相談について

東京本部(東日本地域対象)と大阪支店(西日本地域対象)で随時相談を受け付けているほか、上半期と下半期に全国数か所の会場で個別融資相談会を実施しています。該当する事業所は、相談してみてはいかがでしょうか。
なお、融資の借り入れ申し込み受理の手続きが完了する前に、今次計画にかかる工事請負計画及び土地建物の売買契約または工事着工を行った場合は、原則融資の対象外となるのでご注意ください。