多職種連携-医療と介護の潤滑油として

初めまして。私は医療機関で17年医療ソーシャルワーカー(以下MSW)として勤務していました。途中から介護支援専門員(ケアマネージャー)を兼務しています。

最近は1人の患者さんに多用な職種が『連携』して関わるようになりました。 いわゆる多職種連携です。多職種連携の大切さを感じた一例を紹介したいと思います。

なお今回記事にすることを本人夫婦に説明し、了解をえていますが、個人が特定できないよう内容に一部フィクションを加えています。

 

60歳男性のケース

業務中にはしごから転落、脊椎損傷で全身麻痺。気管切開、人工呼吸器使用。 会話はうなずきや口パクで可能。労災認定。

主たる介護者:妻

この患者さんが当院に転院してきました。 転院目的は在宅で生活するための環境整理と介護の家族指導です。

まず、家族へのおむつ交換の指導を開始しました。 転院前の病院でも行っていたため、スムーズにできるようになりました。衣類着脱も問題なく行えました。

次に呼吸を装着したままの入浴介助です。呼吸器を濡らさないようビニールで覆い、特殊浴槽で入浴介助を行い、奥様にも見学してもらいました。 しかし、患者さんは体格が大きいので、奥様1人で入浴介助は危険とMSWと看護師が判断、退院後は訪問入浴を導入することしました。

脊椎損傷のため、全身を自分の意思で動かすことは全くできません。 しかし、動かせないからといって、放置すれば拘縮し、介助するのに支障をきたしてきます。 そのため、奥様でも出来るリハビリ方法の指導をしてもらいました。 週2回の訪問リハビリ等の調整も行いました。

これらの病棟内の支援を各部署が把握し、情報共有できたことができとてもスムーズに支援することができました。

 

多職種連携はどのようになったか

訪問診療は、病院に連れてくる負担が大きいため、直接主治医が訪問、診療することになりました。

訪問看護は、状態の把握、採血などを行うために週2回訪問するよう調整しました。(24時間体制)

訪問リハビリは、関節の拘縮予防のために週2回訪問してもらい、家族指導とともに行ってもうらえるようにしました。

訪問介護は、ADL介助は全て奥様が行えたので、サービス導入には至りませんでした。

臨床工学技士は、週1回人工呼吸器のチェックのため訪問してもらえるよう調整しました。

訪問入浴は当院に訪問入浴のサービスがなかったので他の事業所と連携を図りました。

MSWも訪問し、家族の近況や疲れ具合などを観察、疲れているようであれば当院にリフレッシュのため入院調整を主治医と相談するなど、総合的に調整する形にしました。

このような調整、連携の上、2週間後、自宅へ退院されました。

 

事業者間の温度差を調整する

多職種連携が上手く機能したため、入院中のトラブルもなく、スムーズに退院することができました。今回の症例は、うまく行き過ぎた形になってしまいましたが、しいて言うなら、この部署とこの部署がもう少し連携を取ってもらえればなと思うことはありました。今後の課題としたいと思いました。

この症例を経験して思ったことは、多職種連携においては、他の施設(介護サービスなど)との連携が今後の課題になってくるのではないでしょうか。

今回はひとつの医療機関で完結しました。 唯一別事業であった訪問入浴は、もともと知り合いであったため調整は大変ではなかったのですが、様々なサービス事業所との連携が今後は必要になってくると思います。

しかし、そこには温度差があったり、消極的であったり、必ずしもボジティブな方向にいくとは限りません。 その温度差をできるだけフラットにするのは、やはりMSWだと思います。

 

医師への敷居の高さを埋める

多職種連携が重要であるのはわかってはいるのですが、上手く運ばないのが実情です。 医療機関や介護との連携が必要不可欠になってくるのですが、介護側の方は医師に対して相談することが非常に「敷居が高い」のです。

医師は在宅の様子をすべて把握しているわけではありません。 一方介護はより本人や家族と接する機会が多く、色々なことを把握しています。 しかし、逆にいえば医療情報はわからないのです。その橋渡し役をMSWが担うことが重要ではないでしょうか。 日頃の情報がわかれば、医師の処方内容も変わるかもしれませんし、医師から介護に医学的な注意点を教えることもでき、情報が一元化できると思います。

 

MSWは自身の存在を広める

そのためにぜひともMSWを活用してもらいと思います。 それにはMSWの力量が問われてきますし、積極的に自身の存在をアピールする必要があります。 まだまだMSWの存在を知らない人が多いのが実情です。 MSWも医師会や看護協会のように、職能団体があります。 MSW協会や社会福祉士会などです。団体に加入し、啓発活動することが大切ではないでしょうか?

まだ温度差がありますが、いろいろな地域で多職種連携が当たり前のように機能してきました。 筆者の住む北海道帯広市でも多職種連携が叫ばれていますが、ごく一部しか参加していません。 認知度が低いこともありますが、「新しい血」がはいってこないため、いつも同じメンバーなのです。 多職種連携の潤滑油として、MSWにも変化が求められてくるでしょう。

 

 

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太田 文弘

医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、ひきこもり支援相談士。 北星大社会福祉学科を卒業後、医療機関でソーシャルワーカーとして、居宅介護支援事業所にてケアマネジャーとして勤務。 主な論文「開業医と介護支援専門員との連携の乖離による弊害 (勇美記念財団)」「24時間対応の在宅人工呼吸療法のすべて-在宅療養に向けてのチーム医療-(難病と在宅ケア11巻 3号  共著)」

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