北海道介護支援専門員協会「ケアマネジャーの現状と課題」

介護保険制度の要と言えるのが、介護支援専門員です。要介護者のニーズに基づいてケアプランを作成したり、利用できる限度額を計算しながら介護サービスの利用調整を行うなど、その業務は多岐に渡っています。その一方で、多忙な業務や待遇の低さ、受験者数の低下や資格を取得しても実務に就く人が少ないなど、さまざまな問題が見参されます。介護支援専門員の職能団体のひとつである「北海道介護支援専門員協会」の東葉子専務理事に話を伺いました。

 

北海道介護支援専門員協会とは

北海道介護支援専門員協会は、一般社団法人日本介護支援専門員協会の北海道ブロック支部です。会員数は523人で「研修」「OJT事業」「ケアプラン点検」「ケアマネ試験」「実務者研修」「更新・再研修」などを行っています。

昨年は入所施設などに勤務している介護支援専門員を対象に、日本介護支援専門員協会が作成した「施設ケアマネマニュアル」について講演会を開催しました。定員140人を大きく上回る応募があったといいます。東専務理事は「施設の介護支援専門員に向けた研修や講演会が少ないことや、施設に従事している介護支援専門員の数が少ないため、横のつながりを求めて参加した人が多いようだ」と分析しています。

 

介護支援専門員の現状

介護支援専門員は、2000(平成9)年に介護保険制度施行にあたり創設された新しい資格です。創設当時は介護支援専門員を確保する狙いから、合格率は約50%でしたが、近年では15%前後と難関になっています。また以前は看護師の受験が多くみられたものの、現在は介護福祉士の受験が8割に達しています。試験に合格した後に行われる介護支援専門員実務研修のほかに、更新研修や再研修を受けることが義務付けられています。

 

介護支援専門員の課題

東専務理事は、介護支援専門員の課題を次のように指摘しています。

  • 求められる姿と現実のギャップ
  • 基礎職の多様性による質の均一化の困難性
  • 知事試験なのに実施方法がまるで国家試験なみ
  • 詳細が都道府県に任せられている教育内容
  • 基礎職より給料が低い現実
  • 受験生の減少
  • 研修費が高い、研修が多い
  • 研修の成果が分かりにくい

 

介護支援専門員は、要介護者と家族をサポートするのが仕事です。しかし中には依存的や高圧的な家族もおり、「御用聞き」のようになるなど大きなジレンマを抱えています。また、受験資格が栄養士、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師など多岐に渡っており、ソーシャルワークやケアワークとかかわりのないバックボーンが多いことから、相談援助の資質が担保されていないと指摘を受けることが少なくありません。

医師、歯科医師などが資格を取得しても介護支援専門員に就くことは考えにくく、合格者数が実務者の数に結び付かないことや、夜勤などがなく収入が減少することから、資格を取得しても介護職に留まったり戻ったりする人が少なくないことも問題視されています。

 

受験者数及び高確率の減少

昨年10月に実施された「第21回介護支援専門員実務研修試験」の合格者が過去最低になりました。国や自治体では、これまで対象だった介護等の実務経験者やケースワーカーが対象外になり、介護職員初任者研修、ホームヘルパー2級、実務者研修などの資格要件が廃止になったことが影響したと考えているようですが、それには大きな矛盾が生じます。

第20回の全国の受験者数は131,560人、合格者数は28,233人(合格率21.50%)でしたが、第21回の試験では、受験者数4,9237人、合格者数は4,990人(合格率10.1%)でした。資格要件が変わっただけで82,323人も減少するとは考えられません。試験問題が著しく難しくなったわけでもなく、合格者数の抑制も行われていないことから、合格率が低い理由が判明できません。

 

介護支援専門員

介護支援専門員が置かれている現状は厳しいものですが、災害時に高齢者の確認ができたり、介護サービスに対する垣根が低くなり、施設入所や在宅サービスが利用しやすくなったことは確かです。「介護支援専門員は、人生の最終章を左右する人材であり重要なキーマン」と東専務理事は自分の体験を重ねます。「在宅介護を行っていると、家族は施設やサービスを探す時間はありませんし、日ごろの苦労を聞いてくれる人もいません。介護支援専門員がいてくれたことで精神的にも肉体的にも助けられ、とても感謝している」と言います。「感謝の念を持っている家族は少なくありません。苦情を伝える窓口だけでなく、感謝の気持ちを寄せる窓口があれば介護支援専門員のモチベーションも上がるのではないか」と語ってくれました。

 

介護支援専門員協会に求められるもの

北海道介護支援専門員協会の会員数は523人と少なく、知名度の向上や内容の情実が今後の課題だそうです。東常務理事から出た「感謝の気持ちを寄せる窓口があれば介護支援専門員のモチベーションも上がる」と言う言葉をヒントに、北海道介護支援専門員協会自体が、そのような機能を果たすことを提案させていただきました。

虐待や家族からのパワハラなど、介護業界を取り巻く暗い話題が多いですが、それは介護現場や家族の心がすり減り、殺伐としていることの表れだと思います。介護の仕事は人との交流です。「仕事だからやって当然」と言えば、それまでですが、人は頑張りが認められることで前向きになれるものです。「スキルアップ」や「資質の向上」など、自分を高める研修も必要ですが、感謝された事例を発表し合うなど、頑張っている自分たちを認め合い、癒される研修があってもいいと思います。北海道介護支援専門員協会が、介護支援専門員の拠り所となれば、会員数が増えていくと思います。

 

ここに注意したい! 介護支援専門員採用の留意点

介護支援専門員の資質についても、さまざまな課題が挙げられています。介護支援専門員を採用する際の留意点は、「ここに注意したい! 介護支援専門員採用の留意点」で紹介しています。

 

 

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