介護業界は人材確保が急務と言われています。団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、これまでに類を見ない超高齢化社会へ突入するなど、多くの介護職が必要とされています。これまでは介護福祉士などの養成校が介護人材の輩出を担っていましたが、近年では入学者数が激減。そのため経験や資格のない人を採用し、事業所で育成することが求められています。
事業所単体で介護職員を育成するには、準備や講師の調整など大きな負担を伴います。株式会社ガネット(藤田達也代表取締役社長)は、こうしたニーズに着目し「日本総合福祉アカデミー」を創設。「介護業界全体の教育制度の底上げと、業界自体の地位向上の寄与」を目標に掲げ既存施設を活用した介護資格学校を運営しています。
日本総合福祉アカデミーとは
介護の仕事には「介護福祉士」をはじめ、さまざまな資格が存在しています。必ずしも資格を有していなければ介護業務を行えないわけではありませんが、資格を持っていることで就職や転職に有利であるほか、技術や知識が担保されることから、介護職員も自信を持って業務にあたることができます。
日本総合福祉アカデミーは、既存施設の会議室などを教室にした介護関連の講座を開講しています。初任者研修修了者や実務者研修修了者などの法定研修、国家資格などの受験対策、看取りやリスクマネジメントなどの介護技術研修、新人職員講座や介護保険講座などのスキルアップ研修など、さまざまな講座が用意されており全国で約100校を開講しています。
日本総合福祉アカデミーの活用方法
仕事をしながら資格取得ができるため、「介護の仕事に興味はあるが経験がない」と言う人にアピールできます。また勤務している施設内で同僚と一緒に講義を受けることからモチベーションが上がりやすく、離職率の低下に繋がっていると言います。
「地域の学校」としても機能し、主催事業所の職員のみならず、地域の方に開放することで介護の啓発活動になるとともに、資格を取得した地域住民が職員として働くことも期待できます。またさまざまな講座を利用することで、施設に義務付けられた研修を委託することも可能です。
日本総合福祉アカデミー学校機能導入法人の声
社会福祉法人 来光会(愛知県一宮市)は1997年に設立され、特別養護老人ホーム、ケアハウス、養護老人ホーム、グループホーム、デイサービスセンター、居宅介護支援センターなど数々の事業所を運営するほか、グループに医療法人を有し、医療機関や老人保健施設も運営しています。介護老人福祉施設えもりの内藤統括施設長に話を伺いました。
―日本総合福祉アカデミーの学校機能を導入するに至った経緯を教えてください
法人の方針により、4年ほど前から新卒者を中心に採用するようになりましたが、学部を問わず採用したため、法人で資格取得支援を行う必要がありました。時期を同じくして介護職員の喀痰吸引等制度や有資格者数に応じた加算が始まったことから、日本総合福祉アカデミーの講座を導入しました。
―どのような点が導入の決め手になりましたか
それまでの資格取得支援は、名古屋市などで行われる研修などに参加してもらい、法人が費用を補助することが一般的でしたが、同アカデミーの講座は、助成金を活用したうえで仕事の一環として職場で講座に参加できるため、職員の負担を軽減できることが決め手になりました。
―どのような講座を取り入れていますか
介護福祉士実務者研修と喀痰吸引等研修の2つを法人全体で年間1~3回実施しています。
―職員の意識に変化は見られましたか
資格取得に対する積極性が変わりました。特に学習の時間を捻出しにくい主婦を兼ねた女性職員や、介護系以外の新卒者も将来設計のために積極的に参加しています。
―どのように参加者のモチベーションを維持しているのでしょうか
当法人では介護福祉士の資格手当は初年度5,000円からスタートしますが、昇給と共に上がっていく仕組みなので、長く勤務するほど手当も多くなります。また愛知県の特例として、介護福祉士を取得することで相談援助業務を行うことができるため、どのようにステップアップするのかを具体的に示してあげることで、モチベーションが高まっていると思います。
―学校機能導入を考えている法人へのアドバイスをお願いします
まずは職員に対して意識調査を行い、どれほど資格が必要と考えているかを把握した方がいいと思います。「やらされている」と言う意識では結果が出ないので、取得した後のメリットや、ライフプランにどう資格がいかせるのかを、明確に説明して同意を得る必要があります。また、給与の制度の中に資格の取得が報酬にプラスする仕組みであるかどうかも確認してください。
学校機能導入は法人内の労働環境整備から
講座の導入にあたり、最初は「経費をかけて資格を取得させても、退職してしまったら意味がない」という声も聞かれたそうですが、内藤統括施設長は「退職の心配より、離職率を低く抑えるための工夫が必要」と強調します。「現場の声に真摯に耳を傾け、理事長や施設長がしっかりとコミュニケーションを取って改善できる体制が大切」と結びました。
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