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高齢者にこそ活用してほしい!ICT活用による認知症予防

「認知症予防のためのICT活用」と聞いて、みなさんは何を想像しますか。脳トレのような学習系プログラムをイメージする人や、ゲームのような反射を求めるプログラム、または大掛かりな機械を使ったレクリェーションタイプの身体リハビリテーションマシーンを思い浮かべる人も多いでしょう。

「実用的なICTの活用で認知症を予防したい」と、一般のパソコン教室の講師から、あることがきっかけで日本中を飛び回り、スマホなどのタブレットを利用した認知症予防を広めている青山司さんの取り組みを紹介します。

 

 

認知症予防に取り組む偶然の出来事

認知症予防活動支援士の肩書を持つ青山司さんは、「タブレットで暮らしを便利に!脳を元気に!」と、タブレットの活用による認知症防止の啓発に全国を飛び回り講演会を開催しています。もともとはNTTの関連会社がパソコン教室を全国でフランチャイズ展開するのに伴い、教育部長として講師の育成を行っていました。その後もマイクロソフトICTマスター制度の認定研修のカリキュラム開発や講師育成に関わるなど、高齢者とは無縁の仕事を続けてきました。

そんな青山氏に転機が訪れます。10年ほど前に地元である東京都日野市が「認知症予防ファシリテーター制度」を創設。社会福祉協議会を通じてファシリテーターを育成する活動が行われました。事業の内容は、市が集めた認知症を予防したい高齢者を集め、厚生労働省による「地域型認知症プログラム」にのっとり、6人のグループを形成。認知症予防ファシリテーターがまとめて週1回活動を行うと言うものでした。

有酸素運動を縦軸に、「料理」「旅行」「パソコン」の中から興味のあるものを選択する仕組みの中で、参加者の多くがパソコンを選んだと言います。グループごとにファシリテーターを設置したものの、講師の経験がなく適切に教えることが困難であったたことから、ファシリテーターの支援者として参加したことが、青山氏と高齢者を結び付けるきっかけだったと言います。

認知症予防ファシリテーター制度には、認知症研究を専門とする東京大学の矢富直美氏が携わっており、青山氏がその研究内容に共感したことや、パソコン教室を通して認知症予防に取り組む企業の姿勢に賛同したことにより、パソコンやタブレットを活用した認知症予防に力を入れるようになったと言います。

 

日常で活用できるICTで認知症を予防

ICTを活用した認知症予防と聞くと、ゲーム的要素の強いプログラムを想像される方が多いと思います。筆者が以前お会いしたことがあるシステム開発事業者は、「もぐら叩きのような感覚で、パソコン上にランダムに表示される絵柄をタッチし、結果をクラウドに蓄積することで、急激な老化や発病の前兆を発見できるシステムを開発した。実証実験を重ねて、いずれは施設等への導入を売り込みたい」と張り切っていましたが、「それは難しいだろう」と思いました。

青山氏が提案するのは、そうした専用機械によるICTではなく、ごく普通のタブレットの活用です。「高齢者は、新しいテクノロジーの操作を覚えるのが苦手ですが、その一方で新しいものを習得したいと言う興味もあります。高齢者向けのパソコン教室を開催した時に、開催期間が長かったことから、脱落する人が多いのではないかと危惧しましたが、終わってみると『もっと覚えたい』と言う声が多く、関心の高さに驚かされました」と言います。

パソコンには「キーボードを打つ」と言う作業が必要でしたが、タブレットではほとんどの機能が音声で入力できるため、利便性が飛躍的に向上しています。小さな画面を見ながら文字を打たなくても、話した言葉が文字となり、簡単にメールを送ることができます。

本で調べるよりも素早く料理のレシピが分かり、文字が小さくて読みにくい場合は音声で読み上げ、場合によってはわかりやすく動画で説明してくれる親切さ。外出の際にマップのアプリを起動すれば、目的地までの交通手段や料金も一目で分かり、道に迷っても自分の居場所を示してくれます。

家族に助けを呼びたい場合でもGPS機能で居場所を感知でき、あらかじめ電話番号を登録しておけば、「〇〇に電話」と呼びかければ通話が可能。これほど高齢者に適した機器はないと言います。

「ICTを使った脳トレや、レクリェーションは否定しませんが、それよりも日常的に使えるICTを利用して、認知症予防に繋げてほしい」と青山氏はいいます。どこに行こうか、どうすれば行けるか、そこで何をしようか考え行動することで外出につながります。体が不自由になった場合でも、AI技術を使って家電を動かすことにより、自立した生活を続けることが可能です。

「買ってみたけど使い方が分からない、便利そうだけど何ができるかわからないと言うことがないようICTの利用活用と認知症予防の普及を、ライフワークとして続けていきたい」と今後の抱負を述べてくれました。