介護職員等特定処遇改善加算の基本的な手順①

2019年4月12日、厚生労働省は「介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに 事務処理手順及び様式例の提示について」を、各自治体に向けて通知しました。介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士の処遇改善や、2019年度の介護職員等特定処遇改善加算の創設などが提示されています。主要な項目を分かりやすくまとめました。

 

1 基本的な考え方

行加算に加え、特定加算を創設。経験・技能のある介護職員に重点化し、職員の更なる処遇改善を行うとともに、一定程度他の職種の処遇改善も行うことができる柔軟な運用が認められている。

 

<算定対象外となる事業>

・訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・福祉用具貸与・特定福祉用具販売並びに介護予防訪問看護・介護予防訪問リハビリテーション・介護予防居宅療養管理指導・介護予防福祉用具貸与・特定介護予防福祉用具販売並びに居宅介護支援及び介護予防支援

 

2 特定加算の仕組みと賃金改善の実施等

(1) 特定加算の仕組み

a. サービス別の基本サービス費に現行加算を除く各種加算減算を加えた1ヵ月当たりの総単位数にサービス別加算率を乗じた単位数を算定される。

b. 当該加算は区分支給限度基準額の算定対象から除外される。

 

(2) 特定加算の算定額に相当する賃金改善の実施

①賃金改善の考え方

a. 介護サービス事業者等は、特定加算の算定額に相当する職員の賃金(基本給、手当、 賞与等。退職手当は除く)の改善を実施する。

b. 賃金改善は、基本給、手当、賞与等のうち対象とする賃金項目を特定した上で行う。

c. 特別事情届出を行う場合を除き、特定した賃金項目を含め、賃金水準を低下させない。

d.基本給による賃金改善が求められる。

 

 ②賃金改善に係る賃金水準の比較の考え方

a. 賃金改善は、現行加算による賃金改善と区別し判断する必要がある。

b. 特定加算を取得していない場合の賃金水準と、特定加算を取得し実施される賃金水準との差分を用いて算出する。

c. 比較時点において勤務実績のない職員については、当該職員と同職であって、勤続年数等が同等の職員の賃金水準と比較する。

 

 ③賃金改善に係る留意点

特定加算を取得した介護サービス事業者等は、特定加算の算定額に相当する賃金改善の実施と併せて、下記の要件を満たす必要がある。また、当該取組に要する費用については、算定要件における賃金改善の実施に要する費用に含まれないことに留意する。

  • 介護福祉士の配置等要件
  • 現行加算要件
  • 職場環境等要件
  • 見える化要件
  • 特定加算の算定要件

 

(3)介護職員等特定処遇改善計画書の作成

①配分対象と配分方法

Ⅰ.賃金改善の対象となるグループ

経験・技能のある介護職員 介護福祉士の資格を有するとともに、所属する法人等における勤続年数10年以上の介護職員を基本としつつ、他の法人における経験や、当該職 員の業務や技能等を踏まえ、各事業所の裁量で設定する。
他の介護職員 経験・技能のある介護職員を除く介護職員
その他の職種 介護職員以外の職員

 

Ⅱ.事業所における配分方法

実際に配分するに当たり、賃金改善の対象となるグループそれぞれにおける平均賃金改善額等について以下のとおりとする。この場合において、一人ひとりの賃金改善額は、柔軟な設定が可能である。

 

a. 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善に要する費用の見込額は、賃金改善実施期間における月額平均である8万円以上又 は賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上であること。現に賃金が年額440万円以上の者がいる場合にはこの限りでない。ただし、以下の場合など、例外的に当該賃金改善が困難な場合は合理的な説明が求められる。

  • 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
  • 職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合
  • 8万円等の賃金改善を行うに当たり、これまで以上に事業所内の階層・役職やそのための能力・処遇を明確化することが必要になるため、規程の整備や研修・実務経験の蓄積などに一定期間を要する場合

b. 当該事業所における経験・技能のある介護職員の賃金改善に要する費用の見込額の平均が、他の介護職員の賃金改善に要する費用の見込額の平均の2倍以上であること。

c. 他の介護職員の賃金改善に要する費用の見込額の平均が、その他の職種の賃金改善に要する費用の見込額の平均の2倍以上であること。ただし、その他の職種の平均賃金額が他の介護職員の平均賃金額を上回らない場合はこの限りでないこと。

d. その他の職種の賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円を上回らないこと。

e. 賃金改善前の賃金がすでに年額440万円を上回る場合には、当該職員は特定加算による賃金改善の対象とならない。

 

②賃金改善計画の記載

特定加算を取得しようとする介護サービス事業者等は、介護職員等特定処遇改善計画書を作成し、都道府県知事等(当該介護サービス事業 所等の指定等権者が都道府県知事である場合は都道府県知事とし、当該介護サー ビス事業所等の指定等権者が市町村長(特別区長を含む)である場合は市町村長とする)に届け出ること。

Ⅰ.特定加算の見込額

 

Ⅱ.賃金改善の見込額の総額

a. 特定加算を取得し実施される賃金の改善見込額を加えた賃金の総額

b. 初めて特定加算を取得する月又は初めて特定加算を取得した月の属する年度の前年度の賃金の総額

Ⅲ.グループごとの平均賃金改善額及び対象人数

各介護サービス事業者等において賃金改善実施期間における賃金改善に要する見込額のグループごとの平均額(aの額からbの額を差し引いた額を c の人数で除したものをいう)をいう。

a. 特定加算を取得し実施される賃金の改善見込額を加えた賃金の当該グループにおける総額

b. 初めて特定加算を取得する月又は初めて特定加算を取得した月の属する 年度の前年度の賃金の総額

c. 当該グループの対象人数(原則として常勤換算方法による)

d. 「経験・技能のある介護職員」のうち、月額8万円の改善又は改善後の賃金が年額 440 万円以上となった者の見込数

e. 改善後の賃金が最も高額な者の賃金(見込額)

 

Ⅳ.賃金改善実施期間

原則4月(2019 年度にあっては 10 月。年度の途中で加算を取得する場合、当該加算を取得した月)から翌年の3月までの期間をいう。

Ⅴ.賃金改善を行う賃金項目及び方法

賃金改善を行う賃金項目(増額若しくは新設した又はする予定である給与の項目の種類(基本給、手当、賞与等)等)、賃金改善の実施時期や対象職員、一人当たりの平均賃金改善見込額をいい、当該事項について可能な限り具体的に記載する。なお、「経験・技能のある介護職員」の基準設定の考え方については、必ず記載すること。

③賃金改善以外の要件に係る記載

特定加算を取得しようとする介護サービス事業者等は、次に掲げる要件に基づく加算の算定要件に応じて、介護職員等特定処遇改善計画書に記載して届け出なければならない。

<介護福祉士の配置等要件>

サービス提供体制強化加算の最も上位の区分(訪問介護にあっては特定事業所加算 ((Ⅰ)又は(Ⅱ)、特定施設入居者生活介護等にあってはサービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ 又は入居継続支援加算、介護老人福祉施設等にあってはサービス提供体制強化加算 (Ⅰ)イ又は日常生活継続支援加算)を算定していること。

 

<現行加算要件>

a. 現行加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までのいずれかを算定していること。

b. 特定加算と同時に現行加算にかかる処遇改善計画書の届出を行い、算定される場合を含む。

<職場環境等要件>

a. 平成 20 年 10 月から届出を要する日の属する月の前月までに実施した処遇改善(賃金改善を除く)の内容を全ての職員に周知すること。

b. 処遇改善については、複数の取組を行っていることとし、「資質の向上」「労働環境・処遇の 改善」及び「その他」の区分ごとに1以上の取組を行う。

<見える化要件>

a. 特定加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等により公表すること。具体的には、介護サービスの情報公表制度を活用し、特定加算の取得状況を報告し、賃金以外の処遇改善に関する具体的な取組内容を記載する。

b. 当該制度における報告の対象となっていない場合等には、各事業者のホームページ を活用する等、外部から見える形で公表する。

c. 当該要件については 2020 年度より算定要件とする。

<特定加算の算定要件>

特定加算を取得するに当たっては、次に掲げる区分に応じて届け出る。

a. 特定加算(Ⅰ)については、介護福祉士の配置等要件、現行加算要件、職場環境等要件及び見える化要件の全てを満たす。

b. 特定加算(Ⅱ)については、現行加算要件、職場環境等要件及び見える化要件の全てを満たす。

 

(4)複数の介護サービス事業所等を有する介護サービス事業者等の特例介護職員等

a. 特定処遇改善計画書は、法人が複数の介護サービス事業所等を有する場合であって介護サービス事業所等ごとの届出が実態に鑑み適当でない場合は、当該介護サービス事業者等が一括して作成することができる。

b. また、同一の就業規則等により運営されている場合に、地域ごとや介護サービスごとに作成することができる。

c. 都道府県等の圏域を越えて所在する複数の介護サービス事業所等を有する介護サービス事業者等(法人である場合に限る)についても同様とする。この場合、介護職員等特定処遇改善計画書として都道府県知事等に届け出なければならない。

 

(5)その他

特定加算の目的や労働基準法等を遵守しなくてはならない。

 

3 特定加算の見込額の計算

介護職員等特定処遇改善計画書における特定加算の算定額の見込額は、次の計算により算出する。

介護報酬総単位数(見込数)×サービス別加算率(1単位未満の端数四 捨五入)×1単位の単価(算定結果については1円未満の端数切り捨て)

 

  1. 介護報酬総単位数は、サービス別の基本サービス費に各種加算減算(現行加算を除く)を加えた1月当たりの総単位数とし、算定を受ける年度における介護サービスの提供の見込数により算出する。この場合、過去の実績や事業計画等を勘案し、事業の実態に沿った見込数を用いる。
  2. 特定加算の見込額は、各サービス別に都道府県等ごとに作成するものとし、複数の介護サービスを提供する介護サービス事業所等(法人である場合に限る)において、介護職員処遇改善計画書を一括して作成する場合の特定加算の見込額の計算については、サービス区分及び加算区分ごとに行い、算出された単位(1単位未満の端数切り捨て)を合算する。

 

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介護職員等特定処遇改善加算の基本的な手順②

 

 

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