「地域共生社会推進検討会」中間とりまとめ(1)

厚生労働省は、2019年7月に「地域共生社会推進検討会中間とりまとめ」を発表しました。これまで福祉改革を貫く基本コンセプトとして掲げてきた「地域共生社会の実現」を推進していく上で必要な方策の中間経過が報告されています。その概要をまとめました。

 

これまでの福祉政策の枠組みの課題と今後の方向性

日本の福祉政策は、個々のリスクや課題の解決を目的とした現金給付や福祉サービスなどの現物給付及び公的な福祉サービスの量的な拡大と質的な発展を実現してきました。一方で、高齢、障害などの制度の適用要件に該当しない者は支援の対象にならないなど、人生を通じた一貫した支援が受けられないことが指摘されています。

今後の福祉政策を考えるにあたり、典型的なリスクを抽出し、対応する従来の枠組みの延長・拡充のみでは限界があります。今求められているのは、複雑・多様な問題を抱えながらも、社会との多様な関わりを基礎として自律的な生活を継続するための支援の機能強化です。

 

対人支援において今後求められるアプローチ

対人支援は、「具体的な課題解決を目的とするアプローチ」と、「つながり続けることを目的とするアプローチ」に大別できます。 個々が尊重され、自律的な生活を継続できるよう、本人の意向や本人を取り巻く状況に合わせて、2つのアプローチを組み合わせていくことが必要であり、今よりも本人を中心として寄り添い伴走する意識(伴走型支援)をもって支援に当たることが求められています。

 

包括的な支援体制の整備促進のための方策

本検討会では、社会福祉法第 106 条の3第1項に規定する市町村における包括的な支援体制の全国的整備を推進するための方策を、モデル事業の実施状況やモデル事業実施自治体のニーズ等を踏まえつつ検討してきました。福祉政策の新たなアプローチを実現するための包括的な支援体制として、次の3つの支援機能を一体的に具えることが必要であり、体制整備に積極的に取り組む市町村に対して、国としても政策的な支援を行うべきと考えられます。

  • 断らない相談支援
  • 参加支援(社会とのつながりや参加の支援)
  • 地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援

 

現在、相談機関等の支援体制に対して個別制度がそれぞれ補助する形をとっているため、市町村は断らない相談支援を中心とした包括的な支援体制を構築しづらくなっています。これらの課題を解消し、包括的な支援体制を各自治体の状況に合わせて整備することを後押しするために、既存の制度の縦割りを再整理する新たな制度枠組みの創設を検討する必要があります。その際、社会保険制度と社会福祉制度の性質の違いなど、既存の社会保障制度の機能の在り方についても留意しなくてはなりません。

 

断らない相談支援について

(1) 断らない相談支援の機能

モデル事業における包括的な支援体制の構築は、次の2つの体制づくりから構成されています。

  1. 住民に身近な圏域において、住民が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制づくり。
  2. 市町村圏域において、地域住民が把握した地域課題のうち複合化・複雑化した課題に対応できる多機関の協働による総合的な相談支援体制づくり。

 

モデル事業実施自治体との協議から、これらの体制づくりには、次の機能が必要なことが明らかになりました。

(ア)多機関協働の中核を担う機能

  • 制度の狭間・隙間や、課題が複合化・複雑化したケースの支援調整
  • 個別支援から派生する新たな社会資源・仕組みの創出の推進
  • 多機関のネットワークの構築
  • 相談支援に関するスーパーバイズ及び人材育成

 

(イ)属性にかかわらず地域の様々な相談を受け止め、自ら対応又はつなぐ機能

  • 分野横断的・複合的な相談であっても受け止める機能
  • 関係機関と連携しながら課題解決に向けた対応を行い、必要に応じて適切な機関につなぐ機能

 

本検討会における議論において、「断らず受け止めるという入口とともに、受け止めた後、継続的に関わる支援も併せて重要であり、継続的な支援を展開する際にいずれの者が中心として関わっていくか、支援体制の構築に当たって困難を感じることもある」との意見がありました。断らない相談支援の機能として、上記(ア) (イ)に加え、(ウ) 「継続的な関わりを可能とする機能」を確保することが必要と考えられます。

 

(2)断らない相談支援の具体化のための体制

上記(ア)から(ウ)までの機能を市町村が具体化することを念頭に、それを担う主体や圏域を想定すると、次のとおり整理できます。

A)属性にかかわらず、地域の様々な相談を受け止め、自ら対応し、又は他の支援関係者につなぐ機能

B)制度の狭間・隙間の事例、課題が複合化した事例や、生きづらさの背景が十分明らかでない事例にも、本人・世帯に寄り添い対応する機能

C)上記を円滑に機能させるために、福祉、医療、住宅、司法、教育など、本人・世帯を取り巻く支援関係者間の調整を行い、多機関のネットワークの構築や、個別支援から派生する新たな社会資源・仕組みの創出、相談支援に関 するスーパーバイズや人材育成などを行う機能

 

上記の機能を担う主体及び機能が確保される圏域

機能 主体 圏域
A)の機能

 

断らない相談支援に関わる全ての相談支援機関で行う 住民に身近な圏域を中心に確保

 

B)の機能

 

 

多機関協働の中核を担う主体による調整の下、全ての支援関係機関が協働して行う体制を作る 市町村圏域等において確保する方向性で検討を行う
C)の機能 多機関協働の中核の機能が行うとの整理の下で体制整備を行うべきである

 

本検討会では、体制整備の在り方について、各市町村の地理的条件や人口規模などの違いにより多様性があるのではないかという意見や、小規模自治体においては日常生活を考えるとA)及びB)の機能を担う関係者が、地域住民に身近な「かかりつけ」として存在していることが重要ではないかとの意見が挙がりました。

 

(3) 断らない相談支援の具体化に向けた検討事項

市町村の体制においてこれらが具えられるよう、体制の評価や人材育成の仕組みの具体化を検討する必要があります。

  • アウトリーチを含む早期的な支援
  • 本人・世帯を包括的に受け止め支える支援
  • 本人を中心とし、本人の力を引き出す観点からの支援
  • 信頼関係を基盤とした継続的な支援
  • 地域とのつながりや関係性づくりを行う支援

 

断らない相談支援に関わる支援者の専門性について

属性にかかわらず様々な相談を受け止めるためには、相当の専門性が必要という意見がある一方で、自治体の中の共通理念として「断らない」ことを掲げることで、受け止め対応するための工夫や努力、知恵を出すことにつながるとの意見も聞かれました。

 

断らない相談支援と地域との関係性について

本人や世帯を地域から切り離すことがないよう、相談支援を行う際は地域とのつながりや関係性を考えることが必要です。既存の地域におけるつながりや支え合う関係性を含むインフォーマルな地域の力が重要であり、地域の中に見守りから気付きにつながる支援を生むことが必要という意見が複数ありました。

  • 断らない相談支援の機能の具体化に向けて、専門性を明らかにするとともに、社会とのつながりも視野に入れた制度設計とすべきである。
  • 支援員個人の力量に過度に依存せず、チームとして機能できる仕組みとするとともに、長期的な視点に立って支援の効果を多元的にとらえる適切な評価の在り方を検討することが必要である。

 

◆続きはこちら

「地域共生社会推進検討会」中間とりまとめ(2)

 

 

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