「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」中間取りまとめ

厚生労働省は2019年8月23日に、「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」中間取りまとめを発表しました。介護予防の更なる推進を議題として、今後求められる機能や専門職の関与の方策、PDCAサイクルに沿った更なる推進方策等の検討を集中的に実施。参考人からのヒアリングを含めて、これまで4回にわたり議論を行われています。主な論点をまとめました。

 

一般介護予防事業等に今後求められる機能

現状

2014年の介護保険法改正以降、住民主体の通いの場などの件数及び参加率はともに増加傾向にある一方で、市町村が把握している通いの場は、介護保険の担当部局が行取組に限られているのではないかと危惧されています。利用者としての参加だけではなく、「担い手としての参加も重要」と指摘を受けています。

介護予防普及啓発事業については、ほぼ全ての市町村で実施しており、パンフレット等の配布や男性のみを対象とする場の設置など、通いの場への参加促進のための様々な工夫がみられています。しかしながら介護予防に資する取組への参加やボランティア等への参加を促すためのポイント付与を実施している自治体は約 25%にとどまるなど、さらなる推進が必要です。

 

今後の方向性

効果的・効率的な介護予防を進める観点から、それぞれの年齢層や性別、関心、健康状態などに応じて参加できるよう、通いの場を類型化し示していくための検討が必要です。その際、行政が介護保険による財政的支援を行っているものに限らず、下記のような取組も通いの場として明確化を図ることが適当と思われます。

  • 自治体の介護保険の担当以外の部局が行う、スポーツや生涯学習に関する取組、公園や農園を活用した取組など介護予防につながる取組
  • 民間企業や社会福祉協議会など多様な主体と連携した取組
  • 医療機関や介護保険施設等が自主的に行う取組
  • 有償ボランティアなどいわゆる就労に類する取組

 

介護予防に参加していない高齢者の参加促進と支援

介護予防に参加していない高齢者のうち、支援が必要な者を把握し、通いの場への参加を含めた必要な支援につなげる方策についても引き続き検討することが必要です。取組を推進するためには、自治体は多様な主体と連携し、既存の取組も含め分野横断的に進めるための体制の構築を進めることが適当です。また、引き続き様々な事例収集を進め、自治体に周知を図 っていくことも重要です。

 

ポイント付与のメリット及び有償ボランティアの推進

通いの場を始めとする介護予防の取組への参加促進を図るためのポイント付与については、参加するインセンティブや参加者のデータ収集にもつながります。また、多様な主体との連携にもつながることから、通いの場に限らず、幅広い取組が対象となることを明確化するとともに、事例の紹介等を通じ推進していくことが適当と思われます。ただし、その際は対象の偏りや費用対効果などの点について、社会的に理解の得られる範囲を見極めながら進めなればなりません。 担い手としての参加など役割がある形での取組についても事例の紹介を通じた更なる推進を図るとともに、有償ボランティアの取組についても推進を図るべきでしょう。

今後、これらを促すため、制度的な対応を含めた更なる推進方策については、引き続き検討を進めるとともに、多くの高齢者が興味を持ち取り組めるよう、広報等を積極的に行っていくことが重要です。

 

専門職の関与の方策等

現状

要介護状態になった主な要因をみると、認知症、脳血管疾患(脳卒中)、 高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患の順に多く、80 歳代前半をピークに高齢者の医療機関の受診率が上昇しています。介護予防の取組を進めるに当たり、生活習慣病に関する疾病・重症化予防等を主な内容とする保健事業と連携していくことや、医療専門職の関与が重要視されます。

健康保険法等の一部改正法の成立により、後期高齢者広域連合は保健事業を市町村に委託できるようになったことから、今後は市町村によるフレイルや重症化予防等を目的とした高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施が見込まれます。また、総合事業への参加に当たってかかりつけ医との連携を進め、利用者支援の質の向上や利用対象者の紹介につなげている事例もあります。

地域における介護予防の取組の機能強化を図るため、一般介護予防事業において、通いの場等への定期的な医療専門職等の関与を促進する地域リハビリテーション活動支援事業があるものの、取組を進めている自治体は、約5割にとどまっています。

 

今後の方向性

通いの場における取組をより効果的・継続的に実施するために、幅広い医療専門職との連携や、医療分野以外の多様な専門職種や学生等の関与が期待されています。専門職の関わり方の一つとして、現場において連携した取組が更に推進されるよう検討を進めなければなりません。また、高齢者の多くは医療機関を受診しており、医師会等の医療関係体や医療機関等との連携も重要であることから、こうした事例の把握を進めるとともに、具体的な連携方策について、モデル事業等を行い、自治体へ実施方策を提示できるようにすることが適当と思われます。

通いの場への定期的な医療専門職等の関与を始め、医師会等の医療関係団体と連携しつつ、地域リハビリテーション活動支援事業の更なる活用促進を図ることが重要であり、取組事例の紹介などを通じて、地域リハビリテーション活動支援事業の更なる活用促進を図ることが適当です。こうした取組を進めるに当たっては、通いの場が住民主体で進めるものであることに留意しつつ行うことに留意する必要があります。

 

PDCA サイクルに沿った推進方策

現状

総合事業全体の評価・改善を目的とする一般介護予防事業評価事業において、実施体制等に関するストラクチャー指標、企画立案、実施過程等に関するプロセス指標、成果目標に関するアウトカム指標を示し、年度毎に評価することが望ましいとしていますが、総合事業実施の効果の点検・評価を行っている市町村は約3割にとどまっています。介護保険における自治体への財政的インセンティブである保険者機能強化推進交付金において、介護予防に関する指標が設けられており、今後は強化が図られる予定です。

 

用語説明

 

■ストラクチャー指標
医療サービスを提供する物質資源、人的資源及び組織体制を測る指標

■プロセス指標
実際にサービスを提供する主体の活動や、他機関との連携体制を測る指標

■アウトカム指標
医療サービスの結果としての住民の健康状態を測る指標

 

今後の方向性

これまでの事業の変遷の経緯や自治体の業務負担も考慮しつつ、プロセス指標やアウトカム指標を含む評価の在り方について検討すべきでしょう。 その際、市町村が行う評価に対する国や都道府県の支援の在り方についても検討する必要があります。また、評価指標を検証できるよう、地域包括ケア「見える化」システム等のデータ整備やシステムの活用方策についても検討を進めることが大切です。

一般介護予防事業を含む介護予防に関する事業全体の PDCA サイクルに沿った推進方策についても、制度的な対応を含め更に検討することが適当です。その際、介護保険における自治体への財政的インセンティブである保険者機能強化推進交付金については、介護予防に関し抜本的に強化を図ることとされていることが検討されていますが、その指標と上記のプロセス指標やアウトカム指標とが整合が取れたものとなるよう、更なる検討を進めることが適当と思われます。

 

今後の進め方

上記に加え、全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り高め合う地域共生社会の実現に向けた取組が進められている中で、「地域づくりの担い手として高齢者の役割」があるのではないかとの指摘があります。今後はこうした視点も勘案しつつ、地域支援事業の他の事業との連携方策や 効果的な実施方法、在り方等についても、引き続き検討することとし、秋以降に、関係団体や自治体のヒアリングや更なる議論を行い、本年末を目途に全体の議論を取りまとめることとしています。

 

出典:厚生労働省 一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会 中間取りまとめ
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000539466.pdf

 

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