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ケアプラン利用者負担の見送りについて考察【2021年度介護報酬改定】

ケアマネジメントは利用者負担にすべき!「有料化賛成」の視点からケアマネの課題を考察

2021年度の介護保険改正に盛り込まれると言われていた「ケアプランの利用者負担」が、さまざまな団体の反対等によって見送られることになりました。自己負担のデメリットばかりが強調されていますが、今後も介護保険を継続させていくためには利用者に負担を求めることもやむを得ません。「ケアマネジメント有料化賛成」の視点からケアマネジャーの現状と今後を考察しました。

 

なぜケアプランの作成は介護保険全額負担なのか

「介護サービスの利用は自己負担を伴うのに、ケアプランの作成はなぜ全額介護保険で負担されるのだろう」と疑問に思いませんか。これは「誰もが公平に介護保険サービスを受けられる」という、介護保険の概念が根底にあります。

介護保険制度を施行するためには、利用者の希望を聞きながらサービスを組み立てるケアマネジャーの存在が不可欠でした。また、介護保険制度が創設される前までは「福祉はタダ(実際には多くの公金が投入されている)」という認識が根強く、高齢者の中には介護サービスの利用料を負担することに難色を示す方もいました。ケアマネジメントの段階から自己負担が生じると介護保険の利用に繋がらなくなると懸念され、ケアプランの作成については介護保険の全額負担となったと言われています。

 

応益負担は介護保険の基本。ケアプラン作成の利用者負担を実施すべき

ケアプラン作成の利用者負担を提案したのは財務省です。居宅介護支援にかかる費用は1人当たり平均で月1万3,800円。1割の自己負担と仮定すると1,300円程度ですが、全要介護者が対象なので、かなりの削減が期待できます。財務省は「特養などの施設サービス計画の策定に係る費用は基本サービス費の一部として利用者負担が存在する」とも指摘。「既に一定の自己負担の下にサービスが利用されていることを踏まえれば、居宅介護支援の自己負担はサービス利用の大きな障害にはならない」と持論を展開しています。

これに対して認知症の人と家族の会は「ケアプランの有料化や原則2割負担など自己負担が増えることで生活が立ち行かなくなり、経済的な理由から必要な介護サービスを利用できないという状況は認められない」と反発していますが、介護保険の基本は応益負担であることを考えると説得力に乏しく、今まで自己負担でなくて幸運だったと考えていただくほかないでしょう。どうしても負担が難しい方には、介護サービス同様に応能負担の導入を検討すべきです。

 

「御用聞き」に「疑似家族」本来の業務を見失うケアマネジャー

さらに財務省はケアプランに自己負担を課すメリットについて、「利用者自身が料金を負担することで利用者側に自覚が生まれ、ケアプランの内容をチェックし要望を出すことができるようになり、納得のいく介護サービスが受けられるようになる」と説明しています。それに対して日本介護支援専門員協会は「利用者が利用料を払うようになっても、ケアマネジャーが行うサービスの質を適切に判断できるかどうかは疑問である」と真っ向から反対しています。

この財務省の主張はとてもナンセンスです。なぜなら利用者の家族が希望したサービスを言われるまま手配してしまう「御用聞き」と揶揄されるケアマネジャーがすでに存在し、それが業界で問題になっているからです。家庭で介護を行う家族の立場を理解することはケアマネジャーとして大切なことですが、中には「こんなに大変な私の気持ちをもっとわかってほしい」「こんなに大変なのだから手を貸してほしい」、「私を助けることがあなたの仕事」と要求がエスカレートし、本来の業務以上のことを求める家族もいます。私もこれまで家族に対する恐怖心から必要以上に尽くしているケアマネジャーに会ったことがありますし、利用者にシンパシーを感じて一人暮らしの高齢者のお世話を積極的に行っている「疑似家族」タイプのケアマネジャーもいました。どちらも本来のケアマネジャーの姿ではありません。

 

ケアマネジメントは、相手に対価を求めるべきプロの仕事

ケアマネジャーがケアプラン作成のために行っているのは、デスクワークだけではありません。利用者の要望を聞き取り、それに見合った自立支援のための介護サービスを紹介し、限度額の計算も行わなくてはなりません。サービスを開始した後もモニタリングを行うなど、いくつもの作業が必要です。介護度によって1ヵ月の訪問回数が決まっていますが、実際には家族の都合で呼び出されたり、移動の途中で利用者宅によるノーカウントの訪問も多いでしょう。

ケアマネジャーは「心優しき隣人」などではなく、「介護保険制度のプロ」です。プロは自分の仕事に誇りを持ち、感情に流されることなく利用者を第一に考えて行動します。またプロの仕事には些細なことであっても報酬が伴います。ケアマネジャーが行うサービスに対してお金を払ってもらうことで、これまで課題とされる家族の依存や意見ができないことによる「御用聞き」、公私混同による「疑似家族」などの問題が解消できるのではないでしょうか。次の介護保険制度改正でも有料化は議題に上ると思いますが、冷静かつ建設的な意見となることを希望します。

 

 

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ひとりケアマネ独立開業「居宅介護支援事業所 川のくまさん」

 


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