ひとりケアマネとして独立開業 札幌市「居宅介護支援事業所 川のくまさん」

介護保険の要となるのが介護支援専門員(ケアマネジャー)です。居宅介護支援事業所や介護施設等に配属され、利用者や家族の希望を聞きながら尊厳のある生活が送れるよう支援しています。介護支援専門員は法人や企業等に勤務していることが多いですが、中には独立開業する人もいます。2017年に居宅介護支援事業所「川のくまさん」を開設した羽根川美幸さんに話を伺いました。

 

羽根川美幸さんのプロフィール

羽根川美幸さんは、旭川の看護学校を卒業後、札幌市内の医療機関に看護師として従事していました。これまでの勤務先を退職する際に、看護師以外のスキルも身に付けたいと介護支援専門員取得のための勉強を始めます。それがその後のターニングポイントになりました。「これまで病棟で末期がんの患者さんが院内で終末期を過ごす姿を見て、『本人が帰りたいという気持ちがあるのに、医療者がこの状態では無理だと決めてしまうことにやるせなさを感じていた』『自分に何かできないだろうか』と心を痛めていました。介護支援専門員の勉強を行う中で、自分の目指す方向性が明らかになった気がしました」と羽根川さんは言います。

 

独立型居宅介護支援事業所開業までのプロセス

介護支援専門員として働くべく、いくつかの医療機関等に転職したものの、看護師と介護支援専門員の兼務などが多く、思ったような活動ができません。次第に「介護支援専門員一本に絞って働きたい」との気持ちが強くなり独立することを決意。事業所となる物件を探し始めます。

居宅介護支援事業所を設立するためには、大家などの許可が必要なほか、1階またはエレベーターが設置されていることが義務づけられています。物件探しと並行して申請の用意も羽根川さん自身が行いました。引っ越し費用や備品の購入など準備資金は50万円以上。約3か月間かけて2017年4月に札幌市・豊平区のマンションの一室に、居宅介護支援事業所「川のくまさん」を開業しました。

 

ゼロからのスタートから利用者30人へ

通常、独立開業する場合は、馴染のお客さんを引き継ぐことが多いですが、羽根川さんは新天地での開業のためゼロからのスタートを切りました。準備期間に収入を得ることが難しく、貯金を切り崩して生活していたため、すでに余裕はありません。特に居宅介護支援事業所は法人内でも不採算部門であり、自社サービスに誘導するための「営業部門」としての後ろ盾を受けることも少なくありません。「三途の川を笑ってってほしい」と利用者が望む居宅介護を目標に掲げて開設したものの、実績に繋がらない相談が数件寄せられるだけという厳しい状況での船出となりました。

利用者を増やすために、羽根川さんは介護事業所や、医療機関の地域連携室などに出向き営業活動を行いました。次第に「事業所や家族の都合ではなく、本人の希望を重視している」、「在宅生活を継続するために必要なサービスのみケアプランに組み込んでいる」など、本来の介護保険に基づいた愚直な姿勢が評価され、地域包括支援センターや医療機関などからケアプラン作成の依頼を受けるようになり、現在は要介護・要支援合わせて30人前後を担当するようになりました。

 

介護保険制度により増収が見込めないシステム

居宅介護支援事業所の収入は、ケアプラン作成の報酬が大半を占めます。羽根川さんの事業所では、要介護1、2で1,057単位/月、要介護3、4、5で1,373単位/月、要支援は、地域包括支援センターとの委託契約により3000円~4000円/月。その他、加算を得ています。自営業の場合は健康保険が全額自己負担しなくてはならないなど出費が多いうえに、担当人数や報酬額が公定のため、飲食店や小売業などのような増益も見込めません。

介護報酬が入金されるのも2か月後と遅く、ケアプランを作成しても実際にサービスを利用してもらえなければ収入にならず、利用者が入院した場合などは減収を強いられます。羽根川さんは「独立は誰にでも勧められるものではない」といいながら、「組織が苦手なので、一人で楽しくやっています」と笑います。

 

居宅介護支援の基本報酬

要介護1,2 要介護3,4,5
居宅介護支援(Ⅰ)取扱件数40未満の部分 1,053単位/月 1,368単位/月
居宅介護支援(Ⅱ)取扱件数40以上60未満の部分 529単位/月 686単位/月
居宅介護支援(Ⅲ)取扱件数60以上の部分 317単位/月 411単位/月
介護予防支援費 431単位

2019年10月改定

 

一人ケアマネのが連携できる場を発足

独立型居宅介護支援事業所は、所属法人に忖度することなく利用者に寄り添った適切なサービスが提供できるものの、独立型居宅支援事業所間でのつながりが少なく、難しい事例やちょっとしたことの相談、収入面や病気になったときにどうすればよいか等を相談する機会がありませんでした。ひとりケアマネのオブザーバー的先輩のもとに、さまざまな相談が寄せられていたことから、羽根川さんが中心となり2019年に「つどい~ひとりだけど ひとりじゃない居宅の会~」を発足しました。困難があることは分かったうえで、利用者本位の支援をしたいと独立開業する人が多く、それぞれ得意な部分を生かしながら連携をすることで一人居宅を強みとしてもっとアピールできる場にもできるのではないかと、札幌市内を中心に会員が集まり、定例会が開かれています。

羽根川さんには、独立型居宅介護支援事業所の設立を検討している方のために、「居宅介護支援事業所設立マニュアル」の作成にもご協力いただきました。行政の指定手続手引書に合わせて申請のポイントが添えられていますので、開設をご検討の方はご参照ください。

 

つどい~ひとりだけど ひとりじゃない居宅の会~

https://sites.google.com/view/hitorikyotaku/

 

制作協力:居宅介護支援事業所「川のくまさん」

札幌市豊平区美園1条3丁目1-19 グレイシャス美園101号室

Facebook:https://ja-jp.facebook.com/kawanokumasan/

ブログ:https://ameblo.jp/kawano-kumasan/

 

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吉田匡和

介護ライター 福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。 https://buleorca.webnode.jp/

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