高年齢者雇用安定法などの改正案が閣議決定 高齢者雇用が介護事業所に広がる!?

 

介護事業所が介護職を採用する際に、民間職業紹介事業者に払った手数料が1件当たり全国平均50万1千円であることが、厚生労働省の委託調査であきらかになりました。半年以内の離職率は38.5%に上り、大金を支払ったものの人材が定着していない事実が浮き彫りになっています。一方で政府は企業に対し、従業員の70歳までの就業確保に努めるよう求める「高年齢者雇用安定法などの改正案」を閣議決定しました。今後の介護業界の働き方はどのように変動するのか。今後訪れるであろう「高齢者雇用」について考えてみました。

 

有効求人倍率は約5パーセント。超人材難が続く

日本は世界に類を見ない超高齢化社会に直面しています。要介護(要支援)認定者は年々増え続けており、2017年度に約633万人に到達。さらに予備軍といえる65歳以上の被保険者約3,575万人も控えています。ハイペースで増加する要介護者に対し、国は介護職員の待遇改善や外国人技能実習生の導入など、介護人材の確保に力を注いでいます。しかし介護職の有効求人倍率は全国平均で約5パーセントと高く、充足が進んでいないのが現状です。

 

介護の人材不足は現状では解決できない

少子高齢化により生産者人口が減少し、日本全体の労働力が低下する中で、若い世代は貴重な戦力になります。しかし介護福祉士養成校が軒並み閉鎖するなど、新卒者の介護人材の供給は絶たれていきます。頼みの綱の外国人技能実習生の受け入れも手続きに時間がかかり、思ったように受け入れられていないほか、「技術を学び祖国で活かす」が本分であることから定着する見込みが低いなど、八方ふさがりの状況が続いています。

AI(人工知能)や介護ロボットの活用も叫ばれていますが、業務内容が多岐に渡るため、すべてを機械化することは困難です。皮肉なことに介護は「コンピューターに代替されにくい仕事」の一つに数えられるなど、マンパワーなしでは成り立たないことが想定されています。

 

介護事業所が淘汰され人材の集中が始まる

2019年(1~12月)の「老人福祉・介護事業」倒産は集計を開始以来、過去最多だった2017年の111件に並んで、4年連続の100件台になりました。倒産増加の背景には人手不足と人件費の上昇があります。小・零細規模の倒産が8割を占めており、訪問介護事業者の倒産が全体数を押し上げています。加算を取得して報酬を上げるという介護保険制度の仕組みは、小規模の事業所にはハードルが高いため、今後、介護事業所は合理的な経営や大規模経営に絞られていくことでしょう。

大手企業と言え人材難は深刻です。前述した通り新卒者確保は確実に困難になりますし、中途採用も業界全体にブラック企業のイメージが定着しているため人が集まらず、好条件を提示すれば人件費に圧迫されるという「打つ手なし」の状況です。

 

高齢者大量雇用時代が訪れる

2020年2月4日、政府は企業に対し、従業員の70歳までの就業確保に努めるよう求める高年齢者雇用安定法などの改正案を閣議決定しました。働く意欲と能力がある人だけでなく、働きたくなくても経済的に働かなくては生活できない人も少なくなく、多くの高齢者が社会に放り出されることになりそうです。現時点では「努力義務」としていますが、社会保障費の抑制のため、いずれは義務に変ると囁かれています。

 

高齢者を雇用するメリット

■人材採用が容易になる

人気企業は高齢者を積極的に雇用しないため、多くの人が介護など人手不足の業界に流れることが考えられます。

■経験・スキル・ノウハウが活用できる

今まで働いて来た経験やスキルに基づくノウハウを活用することが期待できます。

■新しいビジネスやサービスが開発できる

高年齢者の知恵や価値観を取り入れることで、新しいビジネスやサービスが生まれたり、業務の効率化につながる可能性もあります。

 

高齢者を雇用するデメリット

■心身の衰えにより働き方が限定される

元気そうに見えても高齢による心身の衰えは顕著です。力が必要な介護が任せられない、機械などの操作ができない、運転業務を任せることができないなど、働き方が限定されます。

■突然体調を崩したり、ケガをする場合がある

高齢者は体調を崩したりケガをしやすいため、突発的に休んだり辞めなくてはならない状況が現れます。

■若い職員の負担になる

高齢者は柔軟性に乏しく、新しいことを覚えることが苦手なため、一つ一つ教えなくてはならないなど、若い職員の負担が生じることがあります。

■プライドや世代間のギャップによる衝突

自分よりも年下の上司に対して高圧的な態度を取る、過去の実績をもとに論破する、世代間ギャップが理解できないなどの理由により、他の職員と衝突することがあります。

 

それぞれが不満を抑え込まない環境が必要

高齢者雇用は近いうちに介護業界に迫られます。これまでの職員に加えて外国人や高齢者が一緒に働くなど、介護現場は混沌とした状況になるでしょう。そのため、それぞれに合った労働形態や指導方法が不可欠です。トラブルを回避する方法を検討したうえで、問題が発生した場合は、活発に意見交換をするなど、職場がギスギスしない環境に留意してください。

 

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吉田匡和

介護ライター 福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。 https://buleorca.webnode.jp/

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