当社は小売業を営んでいます。育児休業を取得した後に職場復帰してきたA子さんを役職降格としました。降格の理由はA子さんが子育て中のため「短時間勤務者」であること、また育児休業中に代替で役職者として頑張ってくれていたB子さんが予想以上の能力を発揮してくれたからです。同一部署に役職者が2名も要らないのですから仕方ないですよね?
というご相談がよくよせられます。
2014年9月までは「原則合法」だったのですが、2014年10月の最高裁判決により、上記は「原則違法」となってしまいました。法律が変わったわけではないのですが、時の裁判官の判断により解釈が変わってしまったのです。私のような専門家といわれる人達が今までのアドバイスを180度変えないといけなくなった瞬間です。
上記の事例では、妊娠を理由として(契機として)降格されたとみなされ、原則違法となります。「原則違法」なので、例外もあります。その例外の要件が厳しく、Aさんの能力が著しく低いとか、A子さんが何らかの事情で役職者としての職責を果たせないなどがあげられます。ひらたく言えば、会社によっぽどの理由(法律では「特段の事情」といいます)が要るということです。
そんな「特段の事情」など具体的に立証できないことが多いので、「マタハラだ!」と言われると、どうも会社に分が悪いことも起りえます。
多くの場合、会社は経済合理性の中で生きていますから、別に妊娠したから、降格するというわけではないのです。
時短勤務や残業が出来ない、よって管理監督に支障が出るというのが一般的な理由です。また、保育園の都合で、土日勤務できないなどで、最も稼ぎ時に「欠勤」となるのは困るという小売店特有の「嘆き節」も良く聞きます。
では、どうしたらいいのでしょうか?
会社の対策としては、「妊娠を理由として(契機として)」の部分で、その反論を崩しておく必要があります。つまり、当社は「時短勤務」又は「残業免除」の場合は、役職を解くのだというルールを事前に作っておくのです。このルールがあれば、育児休業明けで職場復帰した時短勤務者の役職が解かれたとしても、それは会社の時短勤務者に対する労務政策であって、殊更に妊娠を理由とはしていない(妊娠や育児短時間勤務を理由とした降格ではない)ということができます。言いかえれば育児時短勤務になる人もそうだし、休職明けで病気が再発しないように時短勤務をする人、家族の介護で時短勤務をする人も同様に役職は降格となるということです。
女性を活用していこうという企業様は、逆に上記のルールを作っておかないと、業績を達成しながら、みんなで支え合える、公平な職場をつくるということが難しくなるでしょう。もちろん、時短勤務でありながら、役職者としてやっていける能力のある女性がいれば、それを「会社の規定の例外」として取り扱っていけばいいのです。
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