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定年後同じ仕事は同賃金 再雇用で引き下げ「違法」

ウチの会社は全部「違法」となりますが、どうしましょうか?

クライアント企業から問い合わせが殺到している以下の裁判例をご紹介します。

横浜市の運送会社を定年後、有期契約で再雇用された運転手3人が「仕事内容は全く変わらないのに、賃金が引き下げられたのは理不尽だ」として起こした訴訟の判決で、東京地裁は2016年5月13日、引き下げを違法と判断し、運送会社に定年前の同水準の賃金を払うように命令した。

労働契約法第20条は有期労働契約の労働者と正社員の待遇に不合理な格差を設けることを禁じている。原告代理人によると、この規定に基づいて定年後の再雇用者について違反を認めた判決は初めてで、再雇用者の待遇をめぐる議論に影響するといわれている。

判決理由で裁判長は、「コスト増大を避けつつ高齢者の雇用を確保するために、再雇用後の賃金を下げること自体は合理的だが、仕事内容が同じ場合は賃金格差があってはならない」と指摘した。その上で、原告3人のケースを検討し、「仕事は正社員と同じで、定年前と能力に差があるとも考えにくい。運送会社は再雇用制度をコスト削減の手段としていた側面があるが、人件費圧縮が必要な財務状況ではなかった」として、違法な賃金引下げと判断した。

原告3人は、判決によると、2014年3月~9月の定年退職と同時に会社は再雇用契約を結び、正社員と同様に大型タンク車を運転していたが、賃金は定年前の7~8割に減ったという。

 

労務管理は負け裁判に学ぶな

関連ページ

http://www.fukudasiki.com/weblog/2016/05/post-191.html

仕事が同じで、60歳定年後は、賃金は定年の7~8割に減額して再雇用契約が締結されている。これは日本の賃金システムの社会通念となっている。シャープを買収した、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は買収前から「40歳以下の若い社員の雇用は守る」と経営陣や銀行関係者に猛烈なアピールして案件を勝ち取った。日本の雇用システムをよく理解しているといえる。逆に言えば、「40歳を超えた社員の雇用に手をつける」といいうこと。これらの社員は決して能力が低いわけではなく、日本の定期昇給システムにより、仕事ぶりに比して賃金が割高になっているからだ。

日本の経営者は40代・50代の最もお金のかかるときには、たとえ賃金について「割高」に感じていても、賃金・賞与確保しよう、その変わり60歳を超えたら、その生活費に応じて、雇用は確保するが賃金を下げさせてもらい、生涯賃金でバランスをとっている。

特に中小企業においては、59歳時点と60歳定年後で仕事内容がガラッと変わることはレアケースだ。でも、なんとか苦しいながら雇用を維持しようと頑張っている。経営者は、もう社員には年金がなく、賃金で生活していく他ないのは知っているからだ。

そんな日本の労使慣行において、いきなり「60歳以降も同じ仕事なら、賃金を下げてはいけない」というルールをすべての企業の規範とするには無理があると考える。

 

Q1:再雇用時の賃金条件について、週2日勤務・月額5万円のような条件を提示しても問題ありませんか?

(回答)これを特に制限する法令はありません。しかし、高年法の趣旨と雇用継続の観点からは雇用保険加入要件(最低20時間以上、通常30時間以上)を満たしておくべきです。

 

Q2:あるインターネットサイトで、定年到達時と同様な職務内容の場合、年収ベースで「50%程度までの賃金低下は認められる可能性も高い」とありましたが、それ以上の低下は難しいですか?

(回答)これを最低賃金法以外で制限する法令はありません。

(参考)大阪高裁平成22.9.14判決

再雇用後の賃金は正社員当時の54.6%と両者の賃金の格差は軽視できないが、問題はこれが高年齢者雇用安定法の趣旨を無にするないし逸脱する程度に達しており、看過し難いものとして公序良俗違反と言えるかであるとし、他社の扱いをみても、再雇用制度を導入している企業の44.4%が定年到達時の年収の6~7割、また、20.4%の企業が半分程度を予定して制度設計していること、高年齢者雇用安定法9条1項の規定については私法的効力(強行法規性)は認められないが、その点はさておき、再雇用後の賃金額は確かに正社員より後退した内容ではあるが、同法の予定する制度枠組みの範囲内であり、その範囲内では、同法の趣旨として期待される定年後の雇用の一定の安定性が確保される道も開かれたと評価することも可能であって、公序良俗に違反していると認めることはできない。

 

Q3:再雇用の契約を更新する場合、賃金条件等は定年到達時と同様に全く新たな条件を提示できますか?

(回答)最低賃金以上であれば新たな条件を提示できます。

ただし、個別労使紛争は起こらないことに越したことはないので、以下の方針は検討しておく必要がある。

1.長期雇用義務を考慮し、今から65歳まで地均した賃金カーブに修正しておく。

2.評価とフィードバックのシステムを磨き、たとえば、55歳~59歳のパフォーマンスにより給与決定がなされる仕組みを整備・周知しておき、給与減額を予見させておく。

3.できるだけ給与減額に見合う職務内容の変更(軽減)を行う。

4.必ず定年3か月以上前に十分に話し合いを行い、雇用契約書を締結する。

5.将来的な同一労働同一賃金・65歳定年を見据えて、65歳まで賃金を下げない前提で、退職金制度を見直す。


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