最近、同一労働同一賃金にかかわる政府主導の議論や労働裁判がさかんだ。
安倍総理は今年になって方針演説にて、『「ニッポン一億総活躍プラン」では、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えであります』と述べ、同一労働同一賃金の実現を政権の公約として掲げた。安倍政権は、7月の参院選に勝利し、8月3日の改造内閣発足の記者会見において、改めて「同一労働同一賃金」の実現に向けて年内に指針をつくり、関連法案を早急に国会の提出する方針を示した。早ければ来年の通常国会で同一労働同一賃金推進法案が可決成立する可能性がある。これは私たちが考えてもみなかったこと、そもそも非正規社員とは何か、ということを考えざるを得なくなる。
「同一労働同一賃金」については、多くの学者や経営団体、労働団体、弁護士等が意見をし、議論を重ねている。しかし、日本と土台が異なる海外の事例や理屈ばかりが先行して、日本企業の現場を理解しているのか、大いに疑問である。
同一労働同一賃金でよく出てくるのは欧州の事例だ。なぜ、社会システムが根本的に異なる欧州なのかも疑問である。欧州諸国の多くは年次有給休暇ほぼ100%消化、定時退社は超当たり前、週休3日の社員もたくさんいる。当然、夫婦共働きでワークライフバランスを実現できている。
日本ではキャリアに対する考え方は労働者も使用者も欧州とは異なる。日本ではたとえば、経理部門に配属されたら、その部署にいる限り、簡単な入力業務から、試算表作成、財務諸表の作成、経営分析、ファイナンスなどより難しい仕事をこなすことが求められる。
でも、欧州では一生同じような仕事を同じようにやり続ける。経理事務で入ったら一生、定型的な経理事務員で終わる。当然、習熟度合いは上がる。しかし、同じような仕事を同じようにやり続けるともう仕事に飽きてしまう。人生における仕事での成長は二の次となる。もちろん、年収も上がるが、日本のキャリアのように年功要素は加味される事はなく、ぜいぜい上がっても年収300万円(30歳)が、年収350万円(50歳)になるくらい。これが同一労働同一賃金である。
結局、大きく2つに分かれる。
(一般職的な仕事 ホドホド型)
昨日までの仕事を昨日までと同じようにやる。言われた事を言われたようにやる。短時間勤務や定時退社。もちろん年次有給休暇はバッチリ消化する。ワークライフバランス重視。私の50歳年収イメージはこんな感だ。月給25万円×12カ月分 賞与が2か月分 残業は原則無しで年収350万円。夫婦共働きが前提だから世帯年収は700万円になる。このようなキャリアを選ぶ人が今後増える。
(総合職的な仕事 バリバリ型)
職務拡大(仕事の幅を広げる)、職務充実(仕事を極める、深さを追求する)を行い、自分の技能を進歩発展させる。どうしても労働時間が長くなってしまう。
日本の問題点は、ホドホド型となれば、正社員と不合理な格差のある契約社員やパートタイマーしか選択肢がなかったこと。正規社員と非正規社員の格差がありすぎることもあげられる。また、中年の年齢に差し掛かっても、バリバリを求められて、ホドホドが許されにくい環境、給与制度があることだ(結果として、給与の高い中高年男性がリストラ対象となる)。また、妊活、出産育児、介護に伴い、バリバリとホドホドを柔軟にコースアウト、コースインできる制度設計、風土に乏しいことだ。
だた、一つ言えることは、同一労働同一賃金、ワークライフバランスと従来型の能力の上昇を加味した年功賃金は絶対に両立しないということである。欧州でも、米国でもエグゼンプトと呼ばれる労働時間規制の適用対象外となる人が法的に認められていて、日本の管理職と比べものにならないくらい質・量ともに働いている。
企業を成長させる方法は、自分で伸びたい人、成長したい人に特に頑張って伸びてもらう仕組みをつくることである。また、その企業らしさ、独自性を大切にすることだ。これは断トツに成長した企業において例外がなかった。働き方改革の議論がさかんだが、裁量労働、在宅勤務、脱時間給など、生産性向上に役立つ法改正を行うことこそ急務である。現行の労働法制では都銀の課長クラスでも残業代を請求すれば裁判では労働者側が勝訴する。生産性向上の施策を置き去りにして、同一労働同一賃金、ワークライフバランスだけ推進すれば、特に労働集約型、3K、多能工が売りものの中小企業においては単に年収低下を招くだけだ。
私は日々、どうやったら中小企業が儲かるか、給与・賞与を多く払える会社になるかを考えている。みんなバリバリを目指す必要はないが、欧州のモノマネをする必要もない。日本らしい、中小企業の強みを生かした働き方を目指したい。
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