日本の上場企業の中で、社員の給与が最も高いと言われる会社に、日本M&Aセンターがあります。高給取りということなので、その分、たくさんの仕事をしているのでしょうか?
いったい、年間でどれくらいの相談を受けて、どれくらいの確率でM&Aを成立させているのでしょう?
最初に売り手ありき
M&Aのニーズは買い手の側から積極的に出てきます。
売り手の情報と、買い手の情報では、圧倒的に買い手の情報が多いのが実情です。そして、多くの買い手企業はリピーターであり、ヘビーユーザーです。
しかし、買い手のニーズを先に拾って、それに合致した売り手企業を探していても、上場企業でもない限り、決まる確率は限りなくゼロに近いでしょう。
買い手のニーズは、非常に具体的、限定的であり、ピッタリと合った売り手企業を探すことなど至難の業です。
仮に条件に合致した企業をリストアップし、1件1件に電話をして「売却を検討しませんか?」と持ちかけても、怒りを買うか、笑われて終わりでしょう。
したがって、買い手を中心にM&Aを仲介している会社は、成約確率はグンと下がります。
現実的には、M&A仲介会社はあまり買い手のニーズを真剣に聞いてはいません。聞いたところで、決まらない事を知っているからです。
逆に、買い手のニーズを中心に動くのは、その買い手企業のコンサルタントや顧問税理士です。その企業の成功、成長のために動いている訳であるため、そのような動きとなるのでしょう。
時に我々も、そのようなコンサルタントの相談に乗ることもありますが、「子供の下宿先を探すような、そんな簡単な話でない」と思いつつ、話を聞いています。
したがってM&Aは、「最初に売り手ありき」がスタンダードです。
何でも案件化する会社か
大手の仲介会社の場合、持ち込まれた相談の2割程度しか案件にしないといいます。
相談後、仲介会社は企業評価を行います。財務状況やビジネスモデル、幹部や社員の資質、地域の競争環境など、定量的、定性的に分析し、売却可能な企業かどうか、売却するなら幾らなのか判断します。
仲介会社がこのような選り好みをする背景には、その料金体系にあります。
多くの仲介会社は完全成功報酬型、つまり成約して初めてフィーを手にする料金体系であるため、成約しない案件に幾ら力を注いでも旨味がありません。
常識的に考えれば、「売れる案件」に注力したいことでしょう。
また、成功報酬は売買金額に比例して決まるため、例え1億円の案件も、1000万円の案件も、かかる工数の部分では、大きな違いがないのなら、より高額な案件を扱いたがるのも理解できます。
このような状況ではありますが、最近は、案件化するハードルが低い仲介会社も出て参りました。
特にインターネットなどを通じて、マッチングの仕組みが作れている企業の場合なら、効率的にできるため、成約確率の低さも数で補えるとの考え方があるからです。
効率性を突き詰めた結果、仲介会社間に入ることをほとんどせず、インターネットを使って当事者間で話を進めてください、というような仕組みが出だしています。
仲介会社からすれば薄利多売の考え方であるため、売り手の企業にとってみれば、当然売れない確率も高いことを肝に銘じ、売りに出す必要があるでしょう。
実際の成約率は?
以上の通り、仲介会社の規模やスタンスにより、成約率はマチマチではありますが、低いところで10%、高いところで40%程度が実際の所でしょうか。
先に書いた通り、相談案件の2割程度が案件になるという事ですので、大手仲介会社の場合なら、2割と40%をかけて、相談ベースで10%程度が成約する、つまりニーズに対して10件に1件程度の割合でM&Aが成立するという事です。
これを高いとみるか、低いとみるか、個人の判断で分かれる所でしょうが、もし経営者の事業意欲の減退や、将来への不安があるのなら、早めにまず相談をして、現状を把握することが必要です。
中小零細企業のM&Aの具体的な進め方
中小零細企業がM&Aを進める最初の一歩は、とにもかくにも情報収集です。
記事中に書いているよう、中小零細企業のM&A成約率は約10%。
売却表明したからと言え、すぐ成立するものでありません。
また売却当初は仲介会社も一生懸命に営業活動しますが、買い手がつかなければ、段々と尻すぼみになります。
したがって、売却を検討する方も、複数の仲介会社と契約される事をおすすめします。
実は仲介会社は、これを嫌がります(本当は独占したい)。
しかし成約率10%では、こちらも安心できず、打てる手は打っておきたいものです。
おすすめは、複数サービスの使い分け
・専門コンサルタントによるM&A仲介
・インターネットマッチング型のM&A仲介
の併用。
基本は専門コンサルタントに相談しつつ、保険の意味も込めて、インターネット型にも登録。
インターネット型は掲載無料、おまけに売却成立しても売り手に手数料はかかりません。もちろん秘密は、きちんと保持されます。
しかも、話が進み、プロのサポートが欲しい場合は、途中からでも専門コンサルタントに依頼することもできます。
無料の仲介会社なら、登録してみてリスクはありません。
◆専門コンサルタントによるM&A仲介会社
こちらの2社は、総資産5億円以上の企業規模が目安です。零細規模になると、取扱NGの判断をされるかもしれません。
比較的、小規模でも対応してくれるのは、後発サービスや、会計士などが提供している地域密着型サービス、それと介護専門のM&Aサービスです。
◆インターネットのマッチングを主にしたM&A仲介会社
特に小規模事業所の場合、インターネットのマッチングサービスの利用は必須です。介護事業のM&Aは企業規模重視。年商1億円以下や赤字事業所などは、専門コンサルタントが仲介に熱心に動いてくれないことも有り得ます。
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インターネットですが、企業秘密はしっかり守られます。
また初期費用はおろか、M&Aが成立しても費用がかからないケースがほとんどです。