新しい価値観を吹き込む「ニュージェネレーション高齢者」

近年、多様性に富んだ時代に青春を過ごした65歳の方々が、高齢者の仲間入りを果たしています。戦争などの貧しい日本ではなく、高度経済成長と共に育った彼らは、これまでと異なる価値観や好みを持つ「ニュージェネレーション高齢者」と呼べるでしょう。そうした方々に対し、どう接していくべきか。彼らの育った時代背景を振り返り、どういった対応が望まれるのか考えてみました。

 

1954年生まれの人たち

現在65歳の方々は1954(昭和29)年に生まれ、日本の発展と共に成長してきました。生まれる前年の2月にはNHKでテレビ放送が始まり、同年8月には日本テレビが開局。力道山などがプロレスブームを巻き起していました。

 

この年には、石田純一さん、ルー大柴さん、松任谷由美さん、高見沢俊彦さん、古舘伊知郎さん、片岡鶴太郎さん、そして安倍晋三内閣総理大臣が産声を上げています。エネルギッシュなイメージがある矢沢永吉さんは1949年生まれの69歳ですし、明石家さんまさん、所ジョージさん、桑田佳祐さんなど、日本をリードするエンターティナーも60代の「高齢者予備軍」なのです。

 

65歳が育った時代

日本は1954(昭和29)年からは高度経済成長期に入り、これまで経験したことがない豊かな時代が訪れます。「神武景気」や「岩戸景気」、「オリンピック景気」、「いざなぎ景気」、「列島改造ブーム」と、高度経済成長は1973(昭和48)年まで19年間も続きました。この間には、1964(昭和39)年に東海道新幹線が開通し、その直後に東京オリンピックが開催。1970(昭和45)年には、大阪万博を開催。経済大国日本を世界中にアピールしました。

65歳の方が青春時代を過ごした1960年代から70年代にかけて、さまざまなカルチャーが出現しています。アメリカ文化の憧れが強く、ジーンズが若者を中心とした定番ファッションとなり、ミニスカートも大流行。1966年にはビートルズが来日し、70年代に入るとマクドナルド1号店が銀座に開店したり、ファッション雑誌an anが創刊するなど、現在の礎が形成されていきます。もちろん地域によって差は生じますが、それまでの世代にはない時代の中で、たくさんの物や情報に囲まれて育った最初の世代であることは確かでしょう。

 

 

ニュージェネレーション高齢者の時代が到来する

現在、高齢者施設を利用している方は80代が中心ですが、今後はさまざまな文化を楽しんできた「ニュージェネレーション高齢者」が中心利用者となるのは確実です。しかし多くの事業所では認知症の症状などに応じてケア内容を変更しているところはあるものの、世代に応じた対応を行っているところは少なく、そうした準備も進んでいません。あらゆる世代が「高齢者」でくくられ、画一的な対応が行われていることが問題です。

 

年齢階級別在所者数の構成割合

(単位:%)

平成28年9月末現在

介護保険施 介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護療養型医療施設
総数 100.0 100.0 100.0 100.0
22.6 20.4 25.5 26.6
77.4 79.6 74.5 73.4
40~64歳 1.3 0.9 1.8 2.3
65~69 2.6 2.3 3.0 3.5
70~74 4.4 4.2 4.6 5.2
75~79 9.2 9.0 9.4 9.6
80~84 18.5 18.3 18.9 18.3
85~89 26.3 26.1 26.8 25.1
90歳以上 37.4 39.0 35.3 35.7

注:「総数」は、年齢不詳を含む

 

出典: 介護保険施設の利用者の状況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service16/dl/kekka-gaiyou_05.pdf

 

ニュージェネレーション高齢者に向けた斬新なアイデアを!

80代が施設のボリュームゾーンなため、行事や食事など、その年代を中心とした内容になりがちですが、世代を考慮した企画が必要です。これまで異質だったものと組み合わせることで、ニュージェネレーション高齢者向きの新しいが企画できるかも知れません。例えば次のような企画はいかがでしょうか。

 

■ニュージェネレーション高齢者×ミュージック

この世代は、民謡や演歌だけでなく、あらゆる音楽に触れる機会に恵まれています。現役で歌い続けている沢田研二さんは、タイガースというグループを結成して女性たちの注目を集めていましたし、ギター片手にフォークソングを奏でたり、バンドを結成することも流行りました。楽器の経験のある方には音楽療法として、ギターを弾いたりドラムを叩くのもいいと思います。

 

■ニュージェネレーション高齢者×モーターサイクル

ニュージェネレーション高齢者の青春時代は、国産バイクの発展とリンクしています。カワサキからZⅡ、ホンダからCBなど、数々の名車が発売されました。そうしたバイクは、現在も愛好家によって維持され、全国にオーナーズクラブが結成されています。愛好家団体に声をかけ、施設の駐車場などでモーターサイクルショーを開催することができれば、懐かしい思い出がこみ上げてくることでしょう。

 

■ニュージェネレーション高齢者×ボウリング

1960年後半から70年にかけて、ボウリングブームが巻き起こりました。その人気はすさまじく、テレビ中継されたり、ボウリング場に長蛇の列ができたと言われています。現在は穴が大きく持ちやすいシニア用の球を用意しているところもあります。あまり体力を必要としないため、高齢者でも楽しむことができますし、ピンを倒した時の高揚感がたまりません。普段のリハビリの成果を試す場所としても喜ばれると思います。

 

高齢者施設は保守的ではいけない

「ニュージェネレーション高齢者」は、高齢者施設に、これまでにない価値を求めることが想定されます。それに対応できなくては支持されにくいでしょう。今までの常識が、これからも常識であり続けるわけがありません。常識から外れるのではなく常識を破ぶり、新しい価値観に対応してください。

 

 

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