介護タクシー独立開業のススメ

金融庁が発表した「老後に2000千万円」の貯蓄が必要という試算が〝炎上〝しています。公的年金は、労働者である「現役世代」が、高齢者を支える仕組みであり、少子高齢化が加速する我が国では、すでに破綻状態。年金支給開始が引き上げられると危惧されています。介護職が退職後もキャリアを生かせる仕事として「介護タクシー」を紹介します。

 

介護タクシーの現状

道路運送法によると、介護タクシー(福祉タクシー)は「同法の第3条に掲げる一般乗用旅客自動車運送事業を営む者であって、一般タクシー事業者が福祉自動車を使用して行う運送や、障害者等の運送に業務の範囲を限定した許可を受けたタクシー事業者が行う運送のこと」とあります。高齢化社会の進展により年々増加していますが、国土交通省はまだまだ台数を増やしたい考えです。需要と共に知名度も上昇していますので、早めに開業することで優位性が得られるでしょう。

 

介護タクシーと介護保険タクシーの違い

「介護タクシー」「福祉タクシー」「介護保険タクシー」など、さまざまな呼び方がありますが、介護タクシーと福祉タクシーを同様のものと考えていただいたうえで、「介護タクシー」「と「介護保険タクシー」の違いについて説明します。

 

■介護保険タクシーとは

その名の通り、「介護保険の適応となるタクシー」です。法人である訪問介護事業者が、一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)、もしくは特定旅客自動車運送事業の許可を取得することで介護保険が適応され、病院などに移送する際や自宅で通院準備などに時間を要した場合、または車椅子をレンタルした場合などに加算請求できます。

料金は、距離制運賃体制をとっている事業所、時間制運賃体制をとっている事業所、併用の事業所などさまざまであり、全国的に統一されていません。また介護保険の適応は、通院・入退院など、介護に基づく内容に限られています。利用の際には、ケアマネジャーを通してケアプランに組み込んでもらう必要があります。

 

■介護タクシーとは

要介護者や要支援者、障害者などを移送するためのタクシーです。法人である必要はなく、個人で開業することができます。介護に由来する移送だけでなく、旅行やショッピングなどレジャーに利用できます。運賃やその他の料金は、自由に設定することができます。

介護保険タクシー・介護タクシーのいずれも「予約制」となり、一般のタクシーのように駅や路上などで客を乗車させることはできません。少ない資金で退職後の仕事として選ぶのであれば、個人営業の「介護タクシー」を検討してみてはいかがでしょうか。

 

介護タクシー業者インタビュー

新規事業として、または独立開業して、介護タクシーを始めようと考えている方は少なくないでしょう。自衛官を定年退職後、「札幌さくら介護タクシー」を設立した、岡地 洋代表に話を伺いました。

 

退職後に介護タクシーを開業

吉  田:介護タクシーを開業したいきさつを教えてください。

岡地代表:今から10年前に54歳で自衛官を定年退職し、60歳を過ぎても続けられる仕事として自営業を選びました。その職業選択の一つとして介護タクシーを始めました。

吉  田:どのように開業の準備をすすめたのですか。

岡地代表:開業の条件としてヘルパー(現・介護職員初任者研修)の資格が必要なため、講習中に4日間の施設実習を行いました。自衛隊で大型免許を取得していたので、開業を見越して2種免許も取得しました。

 

運転だけでなく介護も必要

吉  田:介護タクシーで、実際に介護する場面は多いのですか。

岡地代表:ご自宅に迎えに行ったときに、階段を降りられない、土間まで来ることができない方がいらっしゃいますし、当時流行った家屋の作りが高齢になることで障壁になっているお宅があります。また古い公団などでは高層でもエレベーターがないなど、介護が必要な場面は多いです。

吉  田:移送のみを行うのが一般的な介護タクシーのイメージですが、力を伴う介護も多いのですね。

岡地代表:経営的な話をすると、移送などの基本運賃だけではあまり収益になりません。介護料や機器使用料などのオプションを使っていただく事で、ある程度の収益が確保されます。

 

首都圏と地方で異なるニーズ

吉  田:どのような方からニーズがあるのですか。

岡地代表:高齢者の方が通院や入退院に利用されることが多いです。

吉  田:レジャー的なニーズはありますか。

岡地代表:介護タクシー開業当時、旅行ニーズを期待して大型車(10人乗り)を購入しました。しかし札幌でのニーズは近郊の移送がメインだったため、現在はワゴンタイプを使用しています。近年はレジャーニーズも見られますが、お客様は経済的に余裕のある本州の方がほんどですね。

 

やり方次第で大きな需要も

吉  田:介護タクシーの開業を考えている方にアドバイスをお願いします。

岡地代表:介護タクシーは、一般のタクシーのように人口における台数規制がないため、参入しやすいと思います。私が始めた時にはすでに開業していた先輩も多く草分けではありませんでしたが、まだ介護タクシーの存在が浸透していなかったため経営は苦労しました。今は知名度が上がりましたし、高齢化も進んでいくので、やり方次第では需要があると思います。

 

介護タクシーは、プロの技術が生かせる

介護タクシーには、さまざまな職歴の方が参入しているといいます。介護士は「介護のプロ」。これまでのノウハウを生かして、介護タクシー業界参入してみてはいかがですか。

 

取材協力:札幌さくら介護タクシー

 

■ダウンロードできます

 

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