電気代を大幅削減する21の方法(工場・店舗編)
工場やホテル・旅館・温浴施設は一般家庭とは比較にならないほどの電気を消費しており、電気料金のコントロール、光熱費の削減は経営上、とても重要なテーマです。
それぞれの業種・業界にあった光熱費の削減方法をまとめてみました。
まず大口需要家のトップバッターとして工場の削減から整理します。
工場は製造する商品によって規模はさまざまですが、工場の電気代の半分近くは、製品を生産設備によって発生しています。これは節電しようと思っても、どうしようもありません。製造に影響を与えない電気代コストとしてウエイトの大きい空調設備や冷蔵冷凍設備についてまずは電気代削減方法を挙げていきます。
ちなみに工場の電気代の内訳は空調設備が約10%~15%、冷蔵冷凍設備も加えると約20~30%を占めている事例が多いと考えられます。
まずは電気代削減のための設備投資や費用があまりかからないものから。
1.エアコンの設定温度を変更する
エアコンの設定温度は一度あげると約10%の電気使用量の削減ができます。ただ、食品工場などでは、設定温度を変えられない場合や異物混入リスクを高めるため、扇風機やサーキュレータも使えない工場もあります。
温浴施設やホテル・旅館などの宿泊施設でも手軽に取り組める方法ですが、客室などで取り組めませんので、効果は限定的です。
2.エアコンの室外機や室内機を洗浄する
これは意外と大きな節電効果があります。エアコンの汚れの度合いにもよりますが、15%程度の空調コストの削減が達成される事例もあり、実は有効な方法です。このあたりは、「企業がコスト0円で出来る電気料金削減術」にも詳しく書いていますので、併せてお読みいただきたいと思います。
ホテルや旅館などでは客室などでエアコンを掃除していないと異臭を放つ原因にもなりますので、定期的な洗浄が必要です。最近はエアコン洗浄を専門的に行う企業もあります。
3.コンプレッサーの金属表面を修復する
コンプレッサー(圧縮機)の性能がエアコンの省エネ性能の約8割を決めています。経年劣化によって生じた金属表面の傷や摩耗を修復することで、低下した冷・暖房能力を向上させることが可能です。
4.個別運転させ無駄な電気料金を削減する
大型の工場では何台ものエアコンを使用していますが、必要な場所だけ個別運転にすることで経費削減ができます。ビニールカーテンなどを設置することで、部分運転でも十分な空調効果が得られる場合もあります。温浴施設の場合などは脱衣所のエアコン稼働をやめ、扇風機に変更するなどの対応が可能なケースも多いです。
5.シーリングファンを設置する
天井高の高い建物では有効なコスト削減方法です。単純にシーリングファンを設置するだけでは、シーリングファンを動かすための電気代がかかってしまいますが、エアコンの設定温度や使用頻度を抑えることができるため、結果的に電気代のコストダウンにつながります。旅館やホテルなどでは意匠的にもおしゃれな感じがしますので、比較的安価に取り組めてイメージアップも図れる節電方法です。
6.照明を間引く
この方法はそれほど電気代削減効果がありませんが、従業員のコスト意識を高める上で効果があります。使用する照明の数が減りますので、照明の交換コストも削減することができます。
7.照明にLEDを導入する
最近はLEDも随分価格が下がってきました。補助金をもらいながら省エネを実施する企業の場合は必ずといっていいほどLED化が検討されています。個人的な経験則ですが、LEDについては海外製のものがインターネットでかなり安く売られていますので、それを大量に購入し、電気工事士に直接取り替え依頼をする方法が最も費用対効果が高くなります。店舗など点灯する時間が長い場合は、1年以内に投資回収できてしまうケースもあります。LEDは点灯時間も長いので、照明の取り換えコストの抑制も同時に達成できます。
旅館やホテル、食品SM、オフィスなどでも取り組める万能の節電方法の一つです。
LED照明には業務用無段階調光器を併せて導入すると、省エネ効果がさらに高くなります。
8.電力を自家発電・自家消費する
太陽光発電などで電力を自家消費することで日中の電気購入量を削減できます。設置のハードルが高そうな自家消費発電ですが、工場や倉庫だけでなく小型~中型の施設・店舗でも充分導入可能で、年間15%~20%超の電気代削減が見込めます。また、こういった“攻めの投資”に対しては国が支援する税制措置の活用によって即時償却も可能になる場合があり、初期投資の回収年数が大幅に短縮される可能性があります。
9.工場の稼働時間の見直し
工場の場合はスーパーマーケットやホテル・旅館などの宿泊施設と異なり、稼働時間を融通させることができる場合もあります。昼間の暑い時間帯はどうしても空調コストが高くなりますから、早朝または夕方など気温が低くなる時間帯に仕事をするように見直しをします。また夜間に稼働時間をシフトさせることができれば、夜間電力で大幅に電気代が下がる場合もあります。ただ、時間外手当や深夜手当が必要になる場合は人件費の方が高くついてしまうケースもありますので、念入りな検討が必要です。
10.地中熱を活用した空調コストの削減
まだまだ地中熱の高効率冷暖房システムは認知が進んでいません。導入コストが高く、普及が進まないのが原因のようです。ただ、いったん、導入するとランニングコストは大きく抑えられます。地表から10m以上深い地中は夏であろうと冬であろうと一定の温度であまり変化がありません。この特性を活かすことで、夏場は冷房、冬は暖房という空調コストを効率よく抑えてくれます。
11.遮熱塗料を屋根・ガラスに塗って空調コストを削減
工場や店舗などは建物が大きく、建設時のイニシャルコストは相当額が必要です。そのため、十分な断熱に強い屋根材や断熱材自体を省いて建築されているケースも多くあります。このような場合、夏場などは、天井付近はかなりの高温になっていることが多く、空調コストを上昇させる原因となっています。
最近では性能の高い遮熱塗料も開発されていますので、屋根に塗装するなどの方法で屋上の防水も兼ねた節電が可能となっています。
また店舗やオフィスなどはガラス面が多く、西日が入り込む場合などは空調コストがかさむ傾向があります。このような場合は透明タイプの遮熱塗料を塗装したり、フィルムを貼ることで節電が可能となります。
12.エアコン室外機に日よけをつける
エアコンに水を噴霧する原理と同じことですが、直射日光に当たれば室外機は熱を持ち、熱交換比率は悪化します。簡単な囲いで直射日光を遮ったり、先述の遮熱塗料を室外機に塗装することで空調コストの削減が可能です。
13.室外機に水を噴射する機械の設置
エコネットなど。エアコンの室外機の熱交換器に純粋を噴霧し、水の気化熱で熱交換比率を高め、節電を達成します。水をそのまま室外機にかけると故障の原因になりますので、専門業者に依頼するのが賢明です。
霧状に噴霧することで15%~20%程度の経費削減につながることもあるそうです。
錆の原因になるのではないかという不安もありますが、当社の関係会社では、故障や錆は今のところ発生していません。約5年が経過しています。
14.電子ブレーカーの設置
設備投資が必要ですが、瞬時に多くの電気を消費する設備には有効です。代表的なものはエレベーターなど。低圧電力の基本料金を大幅に安くする方法であり、小規模な工場や店舗、宿泊施設、コインランドリー、福祉施設、マンション共有部、食品SMの本社設備などで有効な節電方法です。残念なことに、一部では詐欺まがいの業者もあるようです。インターネットでは付不評な口コミも多数ありますので、業者選定には注意が必要です。当社の関係先企業ではマンションのエレベーターに設置して省エネが達成された事例があります。
15.デマンドコントロール
オムロン製、パナソニック製などのデマンドコントローラーが有名です。
受電電力を常時監視することで、設定された値を超えないよう警告や自動制御を行う装置です。デマンドコントローラーから警報が発せられた場合に、エアコンのスイッチを消すなどの対応をとり、最大値が上がらないように取り組みをします。商品保管管理やお客様に不便をかけない場所を優先してエアコンなどのON-OFFでコントロールする例が多いようです。うまく電力需要の最大値を引き下げることができると、翌年の電気基本料金の削減が可能となります。高圧受電をしている工場や大型店舗、宿泊施設、温泉施設で取り組まれる事例が多くあります。一方で病院や介護施設など人命にかかわる施設には不向きかもしれません。社員一丸となって取り組むデマコン運動が、省エネ、電気料金の削減に結び付きます。
16.使用電力の見える化
電気削減コンサルタント(専門家) を使った削減方法。使用電力の見える化を行い、従業員の意識を高めて節電を達成することを目指します。最近はエレネポ、フレッツ・ミルエネお手軽パックなど家庭の消費電力を見える化するサービスも登場しています。
企業向けには大塚商会のBEMSなど。工場や病院、食品流通業などで導入実績があるようです。建物のフロア単位、建屋ごとに細分化して消費電力を見える化することも可能であり、節電のためのポイントが明確になる効果や社員の意識向上に有効な手法となります。電力削減を得意とするコンサルタント(専門家)との契約をセットで行うと大きな節電効果が期待できます。
17.自家発電設備のバイオマス発電化
あまり知名度はありませんが、ナノフュエル(株)という会社が液体バイオマス発電事業に取り組んでいます。さほど、純度の高くない安価なパーム油でも発電が可能な技術を確立しており、近年は自家発電設備を持つ企業の引き合いが増えています。
大型の工場や病院などを中心に国内には数百の自家発電設備が設置されていますが、半数程度は稼働していない現状があるそうです。ナノフュエル社の技術を使うと、約6000万円程度の投資額でかなり安く(kw16円~23円)電気が供給できるようです。さらに植物油によるバイオマス発電にはFIT交付金という助成制度があり、kw12.17円の交付金が受給できるため、他の方法では考えられないレベルのコストダウンが見込めます。
しかもナノフュエル社の液体バイオマス発電のための設備投資は一括償却できるという税制面での優遇措置も認定を受けています。
18.回転磁場を抑える新技術の導入
「回転磁場を抑えた電気代削減なんて聞いたことがない」という方が多いと思います。この省エネ技術も世界初の特許技術です。モーター動力の効率を悪化させる回転磁場は高調波と呼ばれる電流が流れることにより発生します。この省エネ技術はその高調波を消去させる逆位相の高調波を発生させ、電気代を削減することができます。
電気代のコストダウンは10%~15%となっています。
大手の先進企業の工場などで実験導入が進んでいる最先端の技術です。
19.電力会社の変更
電力販売の自由化で新電力を販売する事業者(PPS業者)は300社以上存在します。
中には戦略的に大口需要家を獲得するために自分たちのマージンを抑えて、電力を供給する業者もあるため、契約変更を行うだけで5%~6%の電気代のコストダウンができるケースがあります。低負荷率契約という非常に電気代単価の安い契約形態を結んでいるスーパーマーケットでも3%程度の電気代のコストダウンができた事例があります。
20.製造設備の更新
製造設備の更新は大きな投資が必要となりますので、簡単には取り組めないテーマですが、近年は省エネの助成金の設定が多くされています。経済産業省から助成を受けるもの以外にも総務省などの他の省庁でも省エネに活用できる補助金を設置しているケースが多くあります。
製造機器のメーカーに最新の機器に入れ替えた場合の電気代の削減額をヒアリングし、有効な投資になり得ないか情報収集することも一つの手ではないでしょうか。
21.空調設備・冷凍機の制御機器
空調設備の自動制御については、30分に一度程度の割合で空調器を自動で送風状態にします。室温の変化は1℃未満なので体感温度は通常は気が付かないレベルであり、結果的に電気代を削減することができます。
冷凍機の制御装置などはスーパーマーケットや食品工場での導入事例がありますが、空調設備と同様、数分に一度、冷凍機を停止させる信号を送り、霜取り状態にすることで、電気代を削減します。商品劣化など業務に支障が出ない範囲で制御を行うことができます。
また、制御機器メーカーの中には導入後にすぐデマンド協議を行い、基本料金を引き下げるサービスを展開する企業もあるようです。
電気代の削減幅は10%~20%程度が多いようです。
東日本大震災後の電気料金の値上げは電気を多く使用する企業にとっては死活問題になりつつあります。電力会社の国への値上げ申請のニュースを見るために、「いったい、電力会社はどこまで真剣にコストダウンに取り組んだのか!我々は値上げしたくても、そんなに簡単に価格をお客様に転嫁できないんだ!」という気持ちになります。
電気代の削減については、ここで紹介した手法以外にもたくさんの方法があると思います。電力会社の何倍もコスト削減に取り組んでいる企業の皆さん、めげずに電気代の削減に取り組んでまいりましょう。