平成29年度福祉行政報告例の概況と関連トピックス
厚生労働省は、11月15日に「平成29年度福祉行政報告例の概況」を公表しました。本報告例は、社会福祉関係諸法規の施行に伴う各都道府県、指定都市及び中核市における行政の実態を数量的に把握して、国及び地方公共団体の社会福祉行政運営のための基礎資料を得ることを目的としています。高齢者関係を抜粋するとともに、関連トピックスを添えました。
老人ホームの施設関係
平成29年度末現在の老人ホーム(有料老人ホームは除く)の施設数は13,013施設で、 前年度に比べ425施設(3.4%)増加しました。定員は762,618人で前年度に比べ22,076人(3.0%) 増加しています。施設の種類別に定員の増減をみると、前年度に比べ「特別養護老人ホーム」が 22,246人(3.8%)、「軽費老人ホーム」が327人(0.4%)、「都市型軽費老人ホーム」が135人(12.2%) 増加しています。
老人ホームの施設数・定員の年次推移
<トピックス>
軽費老人ホームには、地方自治体や社会福祉法人などが国からの助成を受けて身体的な機能の低下により、一人での生活に不安、家族との同居が困難、身寄りがないなどの60歳以上で、月収が34万円以下の方が利用対象となる「軽費老人ホームA型・B型」と、所得制限を設けない「C型(ケアハウス)」があります。建て替えなどの際は、すべてケアハウスへ統一することになっています。都市型軽費老人ホームは、利用料が高くなる傾向が大きい都市部において、従来の軽費老人ホームよりも規制緩和をして費用を抑えたホームです。入所の定員は20人以下、月利用料は10~13万円程度であり、入居一時金は必要ありません。
老人クラブ関係
平成 29 年度末現在の老人クラブ数は 98,592 クラブで、前年度に比べ 2,518 クラブ(2.5%)減少し、会員数は 5,488,258 人で、前年度に比べ 197,964人(3.5%)減少しています。「老人クラブ」というネーミングや、集団活動が好まれない、趣味の多様化などの理由により、老人クラブ数、会員数とも年々減少 している状況が見られます。
老人クラブ数・会員数
民生委員関係
平成29年度末現在の民生委員(児童委員を兼ねる。 )の数は232,041人で、前年度に比べ1,302人(0.6%)増加しています。 男女別にみると、男は90,522人で、前年度に比べ249人(0.3%)増加し、女は141,519 人で、前年度に比べ1,053人(0.7%)増加しています。
民生委員の活動状況
平成 29 年度中に民生委員が処理した相談・支援件数は 5,770,653 件で、前年度に比べ 280,689件(4.6%)減少し、その他の活動件数は26,674,758件で、前年度に比べ275,610 件(1.0%)増加しています。また、訪問回数は 38,228,011 回で、前年度に比べ 1,108,806 回(3.0%)増加しています。
民生委員の活動状況の年次推移
<トピックス>
民生委員・児童委員について、国は通知で民生委員の年齢要件を「75歳未満の者を選任するよう努めること」と規定しているものの、都道府県と政令市67自治体のうち2割にあたる15自治体が2016年末の改選時に、国基準より引き上げて選任していたことが2017年の全国民生委員児童委員連合会の調査で判明しました。 各自治民生委員の平均年齢は2013年の民間調査で66歳であり、見守りが必要な高齢の単身世帯は年々増加しているものの、なり手が不足し、支える側も高齢者に頼らざるを得ない現状が浮き彫りになっています。自治体は弾力的運用を認め、神奈川県は年齢上限を撤廃。青森県は78歳未満、岡山市は77歳未満とし、栃木県や埼玉県は「事情がある場合」に限り、78歳未満まで認めています。また、奈良県など8自治体は75歳未満を原則としながらも、理由書を提出すれば75歳以上も可能としています。
社会福祉法人関係
平成29年度末現在の社会福祉法人数は20,798法人で、前年度に比べ173法人(0.8%)増加。 社会福祉法人の種類別にみると「施設経営法人」が18,186法人で、前年度に比べ85法人(0.5%)増加しています。
社会福祉法人数の年次推移
<トピックス>
2016年3月の社会福祉法改正により、16年度決算から全ての社会福祉法人の財務諸表のデータベースが作成されることになり、その集計結果は厚生労働省の独立行政法人福祉医療機構のサイトで公開されています。しかし財務データの集計対象となったのは社福全体2万645法人のうち1万1488法人にすぎず、社福全体の収入合計、経常増減差額(一般企業の経常利益に相当)合計も明らかにされていないなど、問題点も指摘されています。