太陽光発電関連事業者の倒産が急増する理由

太陽光発電は、再生可能エネルギー(再エネ)のエースとして、国も積極的に支援しています。それにもかかわらず、最近、太陽光発電関連事業者の倒産が急増しているのです。その理由は一体何?太陽光発電関連事業者の倒産動向と、その要因を探っていきます。

 

2016年の倒産件数は前年比86%増加

企業の信用調査会社である帝国データバンクが去る2月に、太陽光発電関連事業者の倒産動向調査の結果をまとめました。それによると、2016年の事業者の倒産件数は67件で、2015年の36件から86%も増えました。太陽光発電関連事業者の倒産件数は2014年以降、3年連続で増加傾向が続いています。前年比の増減率は2014年が21件で前年比23.5%増、2015は71.4%増と、年を追うごとに増加率が大きくなっています。また、負債総額も、2014年が44億8200万円、2015年が91億2700万円、2016年が333億2800万円となっています。

 

全体の89%は零細な小規模事業者

太陽光発電関連事業者の倒産動向調査は、2006年1月から2016年12月までの11年間に発生した事業者の倒産を対象としており、この間の倒産件数は合計201件。資本金別では、「100万円~1000万円未満」と「1000万円以上~5000万円未満」を合わせると、合計179件であり、全体の89.0%が資本金5000万円未満の零細な小規模企業です。負債額も5億円未満が全体の85.5%を占めています。地域別では、東京都が最も多く全体の13.4%、次いで神奈川県と大阪府が続いています。

 

乱立、過当競争で経営が悪化

こうした調査結果から、帝国データバンクでは、太陽光発電に参入する関連事業者は、多くが零細な小規模事業者であり、乱立、過当競争によって、市場からの撤退や倒産を余儀なくされたとみています。確かに、太陽光発電関連事業者の業態としては、太陽光発電システムの販売会社、設置工事業者、コンサルティング会社などが多く、いずれも資本金規模が小さく、経営力の弱い会社が目立ちます。倒産企業の負債額の小さいことにもそれが示されています。

 

見逃せぬFIT制度の見直し

確かに、太陽光発電関連事業者には零細企業が多く、太陽光発電ブームによって、参入事業者が急増したことは事実です。しかし、それ以上に見逃せないのは、国の支援制度の相次ぐ見直しです。国の支援制度というのは、太陽光発電だけでなく、風力発電やバイオマス発電など、いわゆる再エネ電力の導入を後押しする、FIT(固定価格買取)制度です。この制度は、ドイツの制度を手本に、2012年7月、鳴り物入りでスタートしました。再エネ導入拡大の切り札になるとも期待された制度です。

FIT制度の具体的な仕組みは、電力会社が、再エネ発電事業者から長期固定価格で発電電力を買い取ることを義務づけた制度です。発電した電気を、一定の価格で長期固定価格で電力会社が買い取るという内容です。制度スタート当初、太陽光発電の導入を大幅に増やすとの政策判断のもとに、太陽光発電については、電気料金に比べてかなり高い価格が設定されました。具体的には、2012年度で、10kW以上の事業用設備の場合、kWh単価が40円に設定されました。買取期間は20年の固定価格です。kWh単価は電気料金のほぼ2倍という水準です。すなわち、太陽光発電発電事業者は、通常の電気料金の2倍の価格で、しかも20年間同じ価格で電力会社に買い取ってもらえるという仕組みです。事業者にとっては、長期間にわたって安定した利益を得られる、“うまみのあるビジネス”だったのです。そのため、太陽光発電ビジネスに参入する関連企業が相次ぎ、いわゆるミニバブルの状況を呈しました。

 

再エネ買取拡大で国民負担増加の悪循環

太陽光発電電力を買い取る電力会社にとっては、電気料金の2倍近い価格で買い取らなければならないので、買えば買うほど赤字になることは必至です。そのため、FIT制度では、買取費用は、電気を利用する国民全体の負担で賄うという考えのもとに、再エネ賦課金の名で、電気料金に上乗せされているのです。そのため、太陽光発電の導入を拡大すればするほど、買取費用である賦課金が増加し、国民負担が重くなるという悪循環をもたらしたのです。

 

買取単価を毎年引き下げ

国すなわち経済産業省はこうした、賦課金の増大を抑えるため、太陽光発電の買取単価を毎年引き下げました。2013年度ではkWh36円、2014年度では32円といった具合に引き下げ、2016年度には24円にまで下がりました。電気料金とそれほど変わらない水準です。 これでは、太陽光発電事業者や関連事業者にとって、うま味が半減するどころか、事業継続を危ぶまれるところが出ても不思議ではありまん。

 

新認定制度導入で事業者コストが増加

賦課金負担の増大や、事業者の乱立などから、FIT制度に対する国民の批判が強まったことから、経済産業省は2016年6月にFIT 法(再エネ電気調達に関する特別措置法)を改正し、新たな認定制度導入などの制度の見直しを行ったのです。新たな認定制度の導入というのは、従来は、再エネ発電設備の認定だけで、買取価格の適用を受けられたのに対し、新認定制度は、事業そのものを認定対象にするという内容です。太陽光発電事業者の場合、発電設備だけでなく、事業そのものの実施可能性が確保されているかどうかを認定対象に加えるものです。設備の認定では、太陽光発電設備が適正な規格や基準に適合しているかどうかが問われたのに対し、新認定制度は、発電事業計画や事業実施中の点検・保守、さらには事業終了後の設備撤去計画などが、適正に整備されているかどうがが、認定の要件となります。

すなわち、太陽光発電について、事業そのものの実施が、従来よりも格段に厳しくなるのです。すでに、設備の認定を取得した発電事業者も、改めて新認定制度における認定を取得しなければなりません。事業実施中の点検・保守や事業終了後の設備撤去などの順守には、人件費を含めた大幅なコスト要因が加わります。具体的には、設備の保守・点検、維持管理を実施する場合には、電気事業法の規定に基づき、電気主任技術者を選任する必要があります。

 

電磁波や反射光抑制措置が必要に

新認定制度では、このほかにも、詳細な要件が定められていますが、事業者のコスト負担をもたらす要件としては、周辺環境への対策も見逃せません。風力発電では、風車の回る音が騒音公害として、周辺住民に悪影響を及ぼしており、その対策が求められています。太陽光発電でも、電磁波による影響及び、太陽電池モジュールからの反射光が周辺環境に影響を及ぼすとして、適切な措置を講ずることを求めています。

FIT法改正にともなう新認定制度のもとでは、太陽光発電事業者のコスト負担が、大きく加わるとみられています。FIT制度は、もともと再エネ電力の拡大強化を目指す制度だったはずですが、今や、逆に足かせとなっている状況といえます。

 

まとめ

FIT制度を運用する経済産業省は、制度の今後について「再エネ事業者を支援する制度ではあるが、いつまでも制度に頼ることは許されない。制度から卒業し、市場において、発電電力の取引を行うよう、環境整備を急ぎたい」と本音を語っています。市場とは、現在整備が急がれている電力の卸取引市場です。太陽光発電電力も、卸取引市場で形成される市場価格で、売買がなされることが最終目標というわけです。発電事業者や関連事業者にとっては、さらに厳しい環境が続きそうです。

 

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