賞与原資で社員の業績意識を高める方法

賞与はもらって当たり前ではない

皆さんの会社では賞与の金額、もしくは、賞与月数をどのように決めているでしょうか?
一部上場企業では、経営側と労働組合が協議を行ない、毎年3月か4月に決めているケースが多いと思います。

中堅・中小企業の一部では、その年度の業績を考慮しながら賞与の支給金額(支給月数)を決めているのではないでしょうか?
ただ、よほどの業績変化がない限りは、ある程度一定の賞与支給を行なっている会社も多くあります。例えば、うちの会社は毎年、夏のボーナスは2か月、冬のボーナスは2.2か月支給されている、といったような感じです。

このような会社では、従業員に賞与はもらって当たり前という意識が芽生えてきます。言い換えると、業績の良し悪しに関わらずもらえるものだという感覚になります。しかし、実際には賞与とは業績が良くて初めて支給されるものであって、必ず支給されるもの、もしくは、必ず支給しなければならないものではありません。

経営者としては、「できることなら賞与は世間並みに出したい、しかし業績を確保できなければ支給することは難しい、であれば、賞与支給を通じて従業員の業績意識を一層高めてほしい」という気持ちが働くのではないでしょうか。
ここでは、賞与支給を通じて業績意識を高めるためのポイントを説明します。

 

賞与で業績意識を高めるポイント

賞与支給を通じて業績意識を高めることはそんなに難しいことはありません。単純に業績と賞与を紐づければいいだけです。つまり業績が良ければ賞与は支給されるが、業績が悪ければ賞与は支給されない、ということを徹底するだけです。

だからと言って従業員に対して「業績が良ければ賞与は出るが、悪ければ出ませんよ」と伝えるだけでは、従業員の業績意識は高まりません。社員に意識してもらうには、より具体的な数字や事例を話さなければなりません。例えば、業績と賞与支給の関係を以下のような形で決めておくのです。

 

売上高対営業利益率(半期) 賞与支給月数(半期)
10.0%以上 2.8か月
8.0%以上10.0%未満 2.4か月
6.0%以上8.0%未満 2.0か月
4.0%以上6.0%未満 1.6か月
2.0%以上4.0%未満 1.2か月
0.0%以上2.0%未満 0.8か月
マイナス 0.0か月

 

このようにして業績と賞与とを関連付けておくと、多くの従業員は自社の業績を意識することになります。やはり人間は自分に直接影響のあることでないと自分ゴトと感じないのだと思われます。
上の表の左側の欄は売上高対営業利益率であっても、営業利益高であっても、どちらでも構いません。また当然ですが、賞与支給月数から賞与支給額を算出し、このような支払い方をしても業績がマイナスになることにならないか、業績に大きな影響が出ないかといったシミュレーションをしておく必要もあります。業績がいいので賞与を大幅にアップした結果、利益率が大きく下がってしまったということになれば目も当てられません。

 

業績をオープンにすることが前提

ここで重要なポイントが一つあります。
上記のように業績と賞与支給を関連付けて、従業員の業績意識を高めるためには、当たり前のことですが、業績をオープンにしなければなりません。業績をオープンにしないままで、従業員の業績意識を高めることは不可能です。
会社によっては、売上高はオープンにしているが利益までは明らかにしていない、というところもあります。売上高も業績の一指標と言えなくもないですが、売り上げが上がっている、もしくは増加しているからといって業績が良くなっている(利益が出ている)というわけではありません。そういう意味では本業でどれだけ収益を上げているのか、儲かっているのかということを示す営業利益までは少なくともオープンにする必要があります。

 

売上高営業利益率を賞与支給月数にダイレクトに反映させた事例

次に、わかりやすくインパクトのある賞与支給事例を一つご紹介いたします。
ある会社では前年度の売上高営業利益率をそのまま翌年度の賞与支給月数にしました。例えば売上高営業利益率が3.0%であれば賞与支給は年間5か月、7.5%であれば7.5か月といった感じです。この賞与支給をすることにより、この会社では従業員の業績意識がものすごく高まったそうです。
売上高対営業利益率の1%が賞与1か月分に相当します。つまり1%利益率が高くなれば、賞与が20~30万円高くなるといった感じでしょうか?
ただ一つ問題点があるとすれば、前年度の業績を今年度の賞与支給に反映させているので、年度がずれているということです。
できれば直近の業績を反映させるほうが望ましいと言えます。

賞与に関しては、①生活補助的な意味合い、②慣習的な意味合い、③業績配分的な意味合いなど、いくつかの観点があります。従業員のなかには、ローン支払いで賞与払いを組み込んでいる方もいますが、今後は業績配分的な意味が強くなってくると思われます。
そのため、できるだけわかりやすい方法で業績と賞与支給もしくは賃金支給を関連付けていくことが人件費管理において重要な要素との一つとなってくると思われます。

 

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