利用者が働き報酬を得る!? やりがい生きがい地域密着型通所介護

サービスの差別化が難しいと言われるデイサービスにおいて、利用者の能力を尊重し、自立支援に力を入れている企業が、北海道・江別市で地域密着型通所介護事業を展開しています。キャッチコピーは「やりがい生きがいデイサービス」。一人一人に役割があり、高齢者が生き生きと通う「デイサービスセンター雪の華」を取材しました。

 

地域密着型通所介護の開設の経緯

江別市は、札幌市に隣接する人口約12万人の都市です。農業や工業を基幹産業としながら、札幌のベッドタウンとして発展してきました。2018年1月現在の高齢化率は27.6%で、北海道179市町村中161位と低いものの、少子高齢化による空き家が目立つようになっています。デイサービスセンター雪の華は、古くからの住宅街に位置し、一般住宅がそのまま利用されています。これまで介護サービスに従事してきた渡邊譲氏と、歯科衛生士でケアマネジャーの妻の紀子氏が代表を務める会社が経営しています。開業に至った経緯を紀子氏が話してくれました。

「近隣の町でケアマネジャーとして勤務していたのですが、利用者に子供っぽいゲームをさせたり、テレビの前に放置していることが多く、これまでデイサービスに良いイメージがありませんでした。地元の江別市に戻ったときに『何かを始めたい』と思い立ち、歯科衛生士の資格を生かして、口腔ケアと食べることをコンセプトにした域密着型通所介護を5年前から開設しました」と言います。時間の経過の中でコンセプトは少しずつ形を変え、現在は「やりがい生きがいデイサービス」をキャッチコピーに、利用者の能力を最大限に生かす取り組みに力を入れています。

 

人生の先輩として利用者に敬意を示す

デイサービスセンター雪の華は、住宅街の一軒家を利用しています。看板がさりげなく掲げられ、送迎車にデイサービスの名称が書かれていないことから、見つけ出すのが一苦労するほど周囲に溶け込んでいます。「利用者をお客様扱いしない」をポリシーとし、畑を耕して野菜を育て、収穫してみんなで食べるだけでなく、昼食の調理や配膳や下膳、食材の買い物さえも「生活リハビリ」として行われています。

「高齢者を何もできない人たちと決めつけて管理を強化し、それが支配に変わるような施設やデイサービスをたくさん見てきたので、雪の華は小規模で家庭的な雰囲気を大切にしました」と言います。「利用者の方々は、主婦が歴何十年もある人たちです。その実力を封印させる方が間違っています。実際に包丁を持ってもらうと、手際よく調理してくれますよ」と利用者の能力を認め、人生の先輩として敬意を示すことの大切さを強調しました。

 

デイサービスで働き、報酬を得る

雪の華は一日定員10名の施設ですが「それぞれの役割」があるため、欠席者や途中で帰りたがる人は皆無だと言います。2年前から着物のリフォームを行っている事業者から古い反物をほどき再利用する仕事の委託を受けており、デイサービスの利用者が「仕事」としてハサミやアイロンを使って作業しています。またからコメ農家から白米と黒米を選別する作業も受注されるなど、業務の幅が広がっていると言います。

それらは2018年4月より北海道振興局の認可を受けて、賃金が発生する有償ボランティアとして行われています。箸で豆を右から左に移すリハビリがありますが、どれだけ成功しても達成感がありません。しかし米の選別には対価が発生します。仕事として行うことで役割や責任が生じ、それがやりがいに繋がっているのです。

 

 

介護保険の基本は自立支援

近年、デイサービスを利用することによる「心身に与える効果測定」が求められています。それに対し譲氏は、「役割を持って生きることは、間違いなく自立支援です。精神的な役割や喜びが元気に生きる元だと思っていますが、老人福祉法の中では『お世話をする』というイメージでしたが、介護保険は『自立支援』が目的です。それをきちんと理解していないと、自分が楽しくなる仕事はできませんし、適切な運営はできないでしょう」と結びました。

 

そのサービスは本当に利用者に喜ばれているのか?

包丁やハサミ、アイロンなど、多くの事業所が「危険物」として利用者から取り上げる中、積極的に使用してもらうことが、やりがいや生きがいに繋がるという発想が素晴らしいと思いました。リスクについて尋ねると「調理や裁縫など、これまで何年もやってきた人たちに対し、危険と考える方がおかしい」と言い切ります。

事業所や法人により考え方は異なりますが、「同業者が多いから利用率が伸びない」「新設のため知名度が低いので利用に繋がらない」など経営不振を嘆くだけでなく、利用者増加につながらない理由として「サービスが高齢者に合っていない」と反省し、見直すことが必要なのではないでしょうか。

人手不足のために限られたスタッフでの運営が困難であれば、雪の華のように利用者に手伝ってもらうのも方法の一つです。紀子氏の「他のデイサービスは利用者が帰ってから掃除などを始めるので職員の帰りが遅くなります。雪の華では全員定時に帰っていますよ」という言葉が印象的でした。

 

 

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吉田匡和

介護ライター 福祉業界では20年のキャリアを誇り、福祉系専門学校教職員、老人保健施設相談支援員、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター生活相談員、特別養護老人ホーム事務長として勤務。退職後はフリーライターとなり、WEBを中心に活動している。社会福祉士、介護支援専門員、福祉住環境コーディネーターの資格を保有。 https://buleorca.webnode.jp/

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